ECB理事会結果のポイント:想定外のタカ派発言でユーロ買われるも、短期的な上昇に留まるか(23/12/18)

2023年最後の欧州中央銀行(ECB)理事会(12/14開催)は、主要政策金利の据え置き(4.50%)を発表した。

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ECB理事会結果のポイント:想定外のタカ派発言でユーロ買われるも、短期的な上昇に留まるか(23/12/18)

想定外のタカ派発言でユーロ買われるも、短期的な上昇に留まるか

【今回のポイント】

〇 政策金利は過去最高の4.5%を据え置き
〇 ラガルドECB総裁は「利下げに関する議論および検討はなかった」
〇「タカ派」発言を受けて、発表直後のユーロは主要通貨に対して買われる地合いに

【ECB理事会の結果】

2023年最後の欧州中央銀行(ECB)理事会は、主要政策金利の据え置き(4.50%)を発表した。注目された利下げの可能性は示唆せず、逆に物価上昇圧力はなお強いと強調するなど「タカ派」な内容となった。

ECB声明で「基調インフレは一段と緩和した」としながらも「主に単位労働コストの大幅な伸びによって、域内物価圧力は依然として高い」とし「政策金利は必要な限り、十分に制約的な水準に設定される」と改めて明確にした。

ECB声明後に行われた記者会見において、ラガルドECB総裁は「インフレは近く回復するとし、物価圧力は依然として強い」ことを強調。「警戒を緩めるべきかと自問したが、答えはノーだ。決して警戒を緩めるべきではない」と指摘し、「利下げについては今回の会合では全く議論しなかったし、議論も討論もなかった」と述べた。

また、基調的な物価圧力が緩和していることは認めつつも、域内インフレは主にユーロ圏20カ国の賃金コストによって引き起こされており「微動だにしない」と言及。こうした賃金動向と、さらなる賃金上昇が企業によってどの程度吸収されるかについて「何が起こっているのかをよりよく理解する必要がある」とした。さらに「来年上期に豊富なデータが出そろう」とし、6月もしくは7月前の利下げの公算が小さいことを示唆した。

【市場の反応】

為替市場では、ECB声明およびラガルドECB総裁の発言が、13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明およびパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言と比べると、「タカ派」だったことから、ユーロは主要通貨に対して買われた。ユーロ・ドルは、1.08ドル台から上昇し、11月8日以来となる1.10ドル台を回復。ユーロ・円は、154円台から156円台まで買われた。

【今後、ユーロはどう動く?】

今回の会合は、「利下げへの言及」がまるでなかったことから、短期的にはユーロは買い戻される地合いとなった。ただ、翌15日には、ユーロ・ドルは1.08ドル台、ユーロ・円は154円台まで値を戻しており「往って来い」の状態となった。

ユーロ買いが続かなかった背景として、18−19日に控えている日銀金融政策決定会合前のため、ポジション調整のユーロ買戻しに留まったことがあげられよう。また、ECBのタカ派姿勢を市場が懐疑的に見ている点もある。LSEG(ロンドン証券取引所)の金利先物市場のデータでは、市場が織り込んでいる利下げ開始のタイミングは4月頃で、2024年に5回程度の利下げが見込まれており、ECBの見解とは大きく乖離している。この現象は、FRBの見解とFed Watchとの乖離と同じだ。

ECBの見解よりも、市場が利下げ開始および利下げ幅のバッファを大きく見ている限り、ユーロは積極的に買えないだろう。揺り戻し的な買いでユーロ・円が150円台後半に動く場面は見られても、2020年5月を起点とした「ユーロ高・円安」のトレンドは転換を迎えたと考える。

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
9月21日 (木)−22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持したことで、市場はやや円安
10月30日(月)−31日(火)・・・想定通りのYCC再修正に留まったことで、市場は円安の反応
12月18日(月)−19日(火)・・・現状の金融緩和方針の維持を予想するが、記者会見での植田日銀総裁の発言に注目

米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月19日(火)−20日(水)・・・利上げ見送り、ややタカ派な姿勢が確認できたことで、市場はドル買いで反応
10月31日(火)−11月1日(水)・・・利上げ見送り、パウエル発言をややネガティブ視しドルはやや軟調
12月12日(火)−13日(水)・・・金利据え置き、2024年末にかけて3回の利下げを織り込むとハト派な内容となったことでドル急落(一時140円97銭)

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・想定通りの現状維持でユーロは凪相場
12月14日(木)・・・金利は据え置き、引き下げを示唆しなかったことで、ユーロは主要通貨に対してやや買われた

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