トルコリラ円見通し ドル円の反騰に合わせて2連騰だがドル高リラ安基調は続く(23/12/12)

トルコリラ円の12月11日は概ね5.06円から5.00円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.03円で先週末終値の5.00円から0.03円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円の反騰に合わせて2連騰だがドル高リラ安基調は続く(23/12/12)

トルコリラ円見通し ドル円の反騰に合わせて2連騰だがドル高リラ安基調は続く

〇トルコリラ円、12/11もドル円の続伸を見て12/8から2連騰、12/12未明には5.06まで高値を切り上げる
〇対ドル、12/11は概ね29.10から28.77の取引レンジ、12/12早朝29.10を付け取引時間中の最安値更新
〇終値ベースでも28.94をつけ、12/4終値28.93を超えて史上最安値を更新
〇昨日発表のトルコ経常収支と失業率は改善、鉱工業生産は原則
〇5.00を上回るうちは上昇余地ありとし、5.06超えからは5.08、5.10を順次試す上昇を想定する
〇5.00割れからは下げ再開とみて、4.95前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の12月11日は概ね5.06円から5.00円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.03円で先週末終値の5.00円から0.03円の円安リラ高だった。
ドル・トルコリラにおけるドル高リラ安基調は続いているが、短期的にはドル円の騰落をおいかけており、ドル円が12月7日午前から8日未明にかけて大幅下落した後のリバウンドを継続していることでトルコリラ円も史上最安値更新後は戻しており、12月8日から2連騰となった。

ドル円は12月7日の日銀植田総裁による国会答弁で金融緩和政策の出口戦略について「年末から来年にかけてチャレンジングになる」と述べ、その後に岸田首相との会談で出口戦略の考え方を説明したと報じられたことで7日午前の147円台序盤から12月8日安値141.67円まで大幅下落となり、12月6日夜高値147.49円からは5.82円の下げ幅となったが、急落し過ぎの反動で買い戻され、12月8日夜の米雇用統計が強かったことで145円台へ上昇、週明けの11日は一部メディアが今月の日銀金融政策決定会合では現状維持で出口へ急がないとの日銀関係者の認識を報じたことで146円台へ続伸した。

トルコリラ円はドル円の急落局面で12月7日午前序盤の5.09円前後だったところから8日未明安値4.90円まで大幅下落して史上最安値を更新したが、ドル円の反騰を見て8日夜には5.01円を付けるところまで戻し、週明けの11日もドル円の続伸を見て12日未明には5.06円まで高値を切り上げた。
対ドルでトルコリラは12月11日も史上最安値を更新しているが、ドル円の騰落率が勝っているため、トルコリラ円はドル円を追いかける展開を続けている。12月12日夜の米11月CPI、13日朝の日銀短観、13日夜の米PPI、14日早朝の米FOMC声明文発表、14日夜の英中銀金融政策委員会とECB(欧州中銀)理事会と重要イベントが続くためドル円も上下へ大きく振れやすく、トルコリラ円もドル円に合わせて波乱しやすいところと注意したい。

【対ドルでは13週連続で取引時間中の最安値更新】

ドル/トルコリラの12月11日は概ね29.10リラから28.77リラの取引レンジ、12日早朝の終値は28.94リラで先週末終値の28.86リラからは0.08リラのドル高リラ安だった。
週末値ベースでは8月最終週から先々週までの14週連続でのドル高リラ安が途切れたが、12月4日に29.05リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新したことで9月後半から12週連続で最安値更新となった。
週明けの12月11日は12日早朝に29.10リラを付けて取引時間中の最安値を更新、終値ベースでも12月4日終値28.93リラを超えて史上最安値を更新した。
トルコの経済指標改善傾向や外貨準備高の増加、高インフレが続くものの大幅な連続利上げを続けてきたこと、エルドアン大統領再選後の金融・経済政策の正常化が続いていることでトルコへの投資意欲も改善しつつあるところだが、インフレ鎮静化への目途がまだ立たずに市場は追加の大幅利上げ催促でリラ売りを継続している印象だ。

トルコ中銀が2021年末に導入されたトルコリラ建て預金の為替差損補填を行う保護預金口座=KKMの縮小を誘導していることで保護預金から外貨預金への流出も見られること、年末の予想水準として1ドル30リラというコンセンサスに変化がみられないことで12月4日からの下げ渋りが途切れて再び最安値更新モードへ入っている印象だ。

【トルコ経常収支と失業率が改善、鉱工業生産は低調】

12月11日に発表された10月のトルコ経常収支は1億8600万ドルの黒字となり、市場予想の7億5000万ドルの黒字には届かなかったものの9月の18億7600万ドルに続いて2か月連続の黒字となった。今年1月には98.49億ドルの赤字となり過去最低となったが、その後は上下にブレながらも改善傾向を示しており、今年は6月に6.74億ドルの黒字を計上しているので10か月中の3か月が黒字となっている。観光収入の増加、貿易赤字の縮小傾向が経常収支の改善傾向を支えている。
発表後にシムシェキ財務相は「我々は投資、雇用、生産、輸出を重点にした持続可能な成長を確立すると同時に、実施する政策によって経済の脆弱性を是正している」と投稿して経済政策の改善が軌道に乗っていることを強調した。

ただし、10月のトルコ鉱工業生産は前月比0.4%減となり9月の0.1%減から連続でマイナスとなり、前年同月比は9月の4.1%増から10月は1.1%増に減速した。貿易収支は改善傾向にあるが輸出先の欧州、中国の景気減速により今後の鈍化が懸念されており、根本的な貿易赤字構造からの脱却は難しく、増税高インフレ高金利状態の中でトルコの鉱工業生産が著しく堅調となるには環境が悪い印象だ。
10月のトルコ失業率は8.5%となり9月の9.0%から改善した。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、12月8日未明への大幅下落で4日午前安値を割り込み4.90円まで下げたが、その後の反騰で4.99円まで戻したため、8日午前時点では8日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして11日午前から13日午前にかけての間への上昇を想定した。
12月12日未明へ高値を切り上げたが、13日午前序盤は失速気味のためすでにサイクルトップを付けた可能性があると注意し、5.00円割れからは弱気サイクル入りとして13日未明から15日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8日未明からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、13日午前序盤の失速で遅行スパンは悪化しやすい位置に来ている。遅行スパン悪化からは下落期入りとして安値試し優先とし、先行スパンの下限を試す下落を想定する。ただし、遅行スパンがいったん悪化した後に好転して相場が8日未明以降の高値を更新するところからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11日夕刻に70ポイントへ到達したが12日未明へ一段高した際には指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるので60ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとするが、50ポイント以下での推移に入る場合は30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.00円を下値支持線、5.06円を上値抵抗線とする。
(2)5.00円を上回るうちは上昇余地ありとし、5.06円超えからは5.08円、5.10円を順次試す上昇を想定する。5.08円以上は反落注意とするが、5.02円を上回っての推移なら13日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.00円割れからは下げ再開とみて4.95円前後への下落を想定する。4.95円以下は反騰注意とするが、5.00円を下回っての推移なら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

12月13日
 16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.7%)
 16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 13.8%)
12月14日
 20:30 週次 外貨準備高 12月8日時点 グロス (12月1日時点 932.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 12月8日時点 ネット (12月1日時点 347.8億ドル)
12月15日
 17:00 11月 財政収支 (10月 -954.6億リラ)
12月20日
 16:00 12月 消費者信頼感指数 (11月 75.5)
 13:30 11月 中央政府債務残 (10月 6兆2770億リラ)
12月21日
 20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 政策金利 (現行 40.0%)


注:ポイント要約は編集部

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