トルコリラ円見通し 目先はドル円の下げ渋りに合わせて戻りを試すが5.10円以上に抵抗感(23/12/6)

トルコリラ円の12月5日は概ね5.10円から5.07円の取引レンジ、6日早朝の終値は5.08円で前日終値の5.09円からは0.01円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 目先はドル円の下げ渋りに合わせて戻りを試すが5.10円以上に抵抗感(23/12/6)

目先はドル円の下げ渋りに合わせて戻りを試すが5.10円以上に抵抗感

〇トルコ円、12/6午前序盤に一時的な高値5.11を付けるも、早々に5.10を割り込む
〇短期的にはドル円の反発時に戻しても、その後のドル円一段安で史上最安値更新へ進みかねない状況
〇対ドル、12/5は概ね28.95から28.68の取引レンジ、再び1ドル29リラ台を伺う動き
〇リラ売りとリラ買いのバランスはリラ売り優勢のまま、年末に1ドル30リラ到達がコンセンサス
〇5.07を上回るうちは上昇余地ありとし、5.11超えからは5.13前後への上昇を想定
〇5.07割れからは5.05、5.03を順次試して行く下落を想定

【概況】

トルコリラ円の12月5日は概ね5.10円から5.07円の取引レンジ、6日早朝の終値は5.08円で前日終値の5.09円からは0.01円の円高リラ安だった。
ドル/トルコリラが8月24日の一時的急伸後の下落基調を続けているため、トルコリラ円はドル円の反発時に戻りを繰り返し試しているが右肩下がりの展開を続けている。11月13日以降はドル円が下落に転じたことでドル高リラ安による圧迫感とともに円高局面では下げ足が速まり、12月4日にはドル高リラ安とドル円の一段安が交互にトルコリラ円を押し下げて一時5.03円を付けて史上最安値を更新した。
ドル円は12月4日午前安値から下げ渋り、5日未明に147.44円へ戻し、6日未明に146.56円まで下げてから6日未明に147.38円まで戻すなど147円を挟んだ揉み合いとなる中、トルコリラ円は12月5日のドル/トルコリラでややリラ高だったこともあり、5日夕刻に5.07円まで下げてから6日未明には5日未明と同値となる5.10円まで戻した。

12月6日午前序盤には一時的な高値で5.11円を付ける場面も見られたが早々に5.10円を割り込んでおり、5.10円以上に対しては上値抵抗感がみられる。
引き続き8月末からのドル高リラ安基調と11月13日以降のドル円の下落基調が継続しているとみて、トルコリラ円は短期的にはドル円の反発時時に戻してもその後にドル円が一段安するところで史上最安値更新へ進みかねない状況と考える。

【対ドルでは最安値近辺での推移】

ドル/トルコリラの12月5日は概ね28.95リラから28.68リラの取引レンジ、6日早朝の終値は28.87リラで前日終値の28.93リラからは0.06リラのドル安リラ高だった。
8月24日にトルコ中銀が7.5%の超大幅追加利上げを決定した当日に27.27リラから25.02リラへ急伸したもののリラ買いは続かず、8月25日からドル高リラ安が再開して先週までは14週連続のドル高リラ安となり、9月第4週からは11週連続で史上最安値更新を続け、今週も12月4日に29.05リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでも28.93リラへ最安値を更新した。
リラ安基調は継続的と思われるが、1ドル29リラ台にいったん到達したことによる値頃感もあり、12月5日は史上最安値更新へは進まずにややリラ高での推移となった。しかし12月6日午前序盤は28.76リラから28.95リラのレンジで推移しており再び1ドル29リラ台を伺う動きを見せている。

【リラ売りとリラ買いのバランスはリラ売り優勢のまま】

8月24日高値5.77円以降のトルコリラ円は右肩下がりの展開を続けて史上最安値を更新している。
リラ売り要因としては、(1)高インフレに利上げが追い付かずに実質大幅マイナス金利状態の解消目途立たないこと、(2)2021年末に導入されたリラ建て預金の為替差損補填口座の縮小誘導で外貨預金への流出がみられること、(3)トルコ中銀はリラの水準は市場原理に基づくとして市場介入を止めて事実上放置していることでリラ安のストッパー役が欠如していること、(4)高金利と増税による景気への悪影響が解消されていないこと、(5)直近の貿易収支や経常収支に改善がみられるものの構造的な貿易赤字と経常赤字体質の転換には遠く、政府債務残高が鰻登りであること等が挙げられるが、近隣のパレスチナ・イスラエル戦争による地政学的リスク、イスラム国家であるトルコと米国およびイスラエルとの関係悪化への懸念も重石となっている。

リラ買い要因としては、(1)トルコ長期債利回りが高水準にあるために利回り確保のためのリラ買いがそそられること、(2)観光収入増による経常収支改善の兆しがみられること、(3)エルドアン大統領による中銀と財務省への政策思想の押し付けが収まっていることで金融政策正常化が続いており、大手格付け会社の評価もネガティブから安定的へと変わりつつあり、外資による来年のトルコリラ買い姿勢が散見されること、(4)外貨準備高増加による通貨信頼性の向上等が挙げられる。
外貨準備高については12月5日に総額で1400憶ドルを超えたとの銀行家の予想が報じられており、UAEによる大型融資が年内にまとまるとの見込みもあり、トルコ経済への信頼感を徐々に強めている。
しかし、現時点ではリラ買い意欲よりもリラ売り意欲が勝っており、ほぼ一本調子でのドル高リラ安トレンドが維持されており、年末に1ドル30リラへ到達するのではないかとの見方で衆目が一致しているようだ。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、12月2日未明に弱気転換目安とした5.10円を割り込み4日午前には一時5.03円まで下げたため、12月4日午前時点では11月30日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5日午前から7日午前にかけての間への下落を想定した。
12月4日午前安値から持ち直して5.10円まで戻したが、6日午前序盤に一時5.11円まで戻したため、4日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて4日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。サイクルトップ形成期は6日午前から7日深夜にかけての間とし、すでに反落注意期にあるため5.07円割れからは弱気サイクル入りとして7日午前から11日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月4日午前からの戻りを継続して先行スパンを上抜いたが勢いに欠けており遅行スパンは実線と交錯している。5日夕安値5.07円割れを回避するうちは上昇余地ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、5.07円割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12月5日未明と6日未明の両高値時に指数のピークもほぼフラットとなる弱気逆行の気配がみられるので、40ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとし、60ポイント超えからは70ポイントに迫る上昇を想定するが、40ポイント割れからは下落再開とみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.07円を下値支持線、5.11円を上値抵抗線とする。
(2)5.07円を上回るうちは上昇余地ありとし、5.11円超えからは5.13円前後への上昇を想定するが、その後の反落警戒とし、5.07円割れからは下げ再開と考える。
(3)5.07円割れからは5.05円、5.03円を順次試して行く下落を想定する。5.03円以下は反発注意とするが、5.07円以下での推移なら7日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

12月7日
 20:30 週次 外貨準備高 12月1日時点 グロス (11月25日時点 910億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 12月1日時点 ネット (11月25日時点 358.1億ドル)
 23:30 11月 財務省現金残 (-822.47億リラ)
12月11日
 16:00 10月 鉱工業生産 前年比 (9月 -0.1%)
 16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 4.0%)
 16:00 10月 失業率 (9月 9.1%)
 16:00 10月 経常収支 (9月 18.76億ドル)

12月21日
 20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 政策金利 (現行 40.0%)

注:ポイント要約は編集部

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