トルコ円見通し ドル円とともに反騰一服、中銀利上げ後もドル高リラ安継続で上値重い(23/11/27)

トルコリラ円の11月24日は概ね5.19円から5.16円の取引レンジ、25日早朝の終値は5.18円で前日終値と変わらなかった。

トルコ円見通し ドル円とともに反騰一服、中銀利上げ後もドル高リラ安継続で上値重い(23/11/27)

ドル円とともに反騰一服、中銀利上げ後もドル高リラ安継続で上値重い

〇トルコリラ円、ドル高リラ安の進行に圧迫されつつ、短期的にはドル円の騰落を追いかける
〇トルコ中銀の市場予想上回る5%追加利上げにも反応鈍く上値は重い、5.18近辺での小動き
〇対ドル、8月最終週から13週連続のドル高リラ安、9月第4週から10週連続で史上最安値更新
〇製造業信頼感指数、6か月連続で低下。備稼働率は改善傾向が続く
〇JPモルガン、2024年新興国市場でトルコを買い推奨、トルコリラは対ドルで上昇に転じるとの見通し
〇5.20超えからは5.22への上昇を想定するが、5.22前後は反落警戒
〇5.15割れからは5.13前後への下落を想定、5.13以下は反騰注意

【概況】

トルコリラ円の11月24日は概ね5.19円から5.16円の取引レンジ、25日早朝の終値は5.18円で前日終値と変わらなかった。週間では11月17日終値5.21円から0.03円の円高リラ安だった。
トルコリラ円はドル高リラ安の進行に圧迫されつつ、短期的にはドル円の騰落を追いかけているが、ドル円が11月13日夜からの大幅下落一巡で11月21日から反騰したため、トルコリラ円も11月21日安値5.11円(ベンダーによっては5.09円)から持ち直し、11月23日夜にはトルコ中銀が市場予想を上回る5%の追加利上げを決定したことで5.20円まで戻した。しかし、中銀利上げによるリラ買い反応は鈍く、24日はドル円が反騰一服で横ばい推移となる中で対ドルでトルコリラが史上最安値を更新したために上値の重い展開となり、夜からは5.18円近辺での小動きとなった。

【対ドルでは13週連続のリラ安、10週連続の史上最安値更新】

ドル/トルコリラの11月24日は概ね28.92リラから28.64リラの取引レンジ、25日早朝の終値は28.86リラで前日終値の28.78リラから0.08リラのドル高リラ安だった。週間では11月17日終値28.65リラから0.21リラのドル高リラ安となり、週間足は8月最終週から13週連続でドル高リラ安、9月第4週から10週連続で史上最安値を更新した。
トルコ中銀は11月23日に5%の追加利上げを決定、利上げはエルカン総裁就任後の6月から11月まで6会合連続となり、就任前の8.5%から40.0%まで切り上がった。
今回は市場の事前予想が2.5%利上げにとどまり利上げペースが減速するのではないかとみられていたところで予想を上回る利上げを決定したのだが、同じく2.5%の利上げ予想に反して7.5%の超大幅利上げを決定した8月24日のようなサプライズ型のリラ買い反応は見られなかった。

【製造業信頼感は停滞、観光客数の伸びも鈍化】

11月24日に発表された11月の製造業信頼感指数は100.2となり10月の103.3を下回った。5月の108.3をピークとして6か月連続で低下した。リラ安と高インフレの継続に加えて付加価値税等の増税により企業の生産コストは上昇しており、世界的な金融引き締めによる景気減速感やパレスチナ・イスラエル戦争による地政学的なリスク感が生産部門のセンチメントを低下させている印象だ。ただ、同時に発表された11月の設備稼働率は78.0%となり8月の76.1%から3か月連続で上昇しており、今年3月の73.5%を底として改善傾向が続いている。
10月の海外観光客数は前年同月比3.8%増となった。コロナ渦による激減から2022年に急回復したことによるベース効果で増加率が鈍っているものの前年比プラス圏は維持している。地政学的なリスクと観光客来訪のシーズンピークを通過して今後は停滞期に入りやすいと思われる。観光収入が経常収支改善に寄与していたが、中東情勢の緊迫感もあるため今後はその効果も鈍ると思われる。

【今週はトルコGDPの発表あり】

今週は11月29日に10月の貿易収支確報、11月30日に7-9月期のトルコGDP、12月1日にイスタンブール11月製造業PMIの発表がある。高インフレとリラ安が続く中、トルコ景気拡大への期待感をもたらすことができるのか注目されるが、GDPは前期比及び前年同期比で落ち込むとの見方が優勢で、貿易赤字は9月から拡大して製造業PMIは5か月連続で50を下回ると予想されている。
エルドアン大統領は11月22日に「トルコリラ安は終焉を迎え、通貨価値は実質ベースで上昇する可能性が高い」、「リラの実質上昇と海外資金の流入によりインフレが低下して経済成長の下振れリスクは限定される」と述べたが、大統領発言と11月23日の利上げによっても市場でのリラ買い反応は限られた。

11月21日に金融大手のJPモルガンは2024年のエマージングマーケットにおいてトルコをポーランド、南ア、イスラエルとともに買い推奨とした。ここ半年でトルコの金融政策姿勢は180度変わり正常化して金利も上昇しているため、2024年のトルコリラは対ドルで上昇に転じるとの見通しを示した。同社は今年4月にエルドアン大統領が再選された場合の予想として1ドル24−25リラへ下落して年末には26リラまで下げるとし、最悪のシナリオでは30リラに達するとしていた。現状は28リラ台後半に来ているためすでに同社の最悪シナリオに近い展開だが、この流れも年明けからは変わるとみているということなのだろう。しかしそのためにはインフレの鎮静化と十分な利上げによるリラの安定を土台としたトルコ経済成長への期待感が強まることが必要だ。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月21日夕刻へ一段安してからドル円の反騰に合わせて5.17円まで戻したため、22日午前時点では21日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、サイクルトップ形成期を21日未明から23日未明にかけての間と想定した。
11月23日夜へ高値を切り上げてから反落したが、前回サイクルトップから5日以上を経過したため、23日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして27日の日中から28日夕にかけての間への下落を想定する。ただし、11月23日夜高値5.20円超えからは新たな強気サイクル入りとして28日夜から30日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では11月23日夜高値からの下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンに潜り込み始めている。11月23日夜高値を超えないうちは一段安余地ありとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。ただし、11月23日夜高値超えからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月22日夕刻から23日夜への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行気配がみられて50ポイントを割り込んでいるため、55ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、40ポイント割れからは30ポイント以下への低下を想定する。ただし、55ポイント超えからは反騰継続とみて60ポイント台中盤への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.15円を下値支持線、5.20円を上値抵抗線とする。
(2)5.20円超えからは5.22円への上昇を想定するが、5.22円前後は反落警戒とし、その後に5.18円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)5.15円割れからは5.13円前後への下落を想定する。5.13円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は5.11円試しへ下値目途を引き下げ、5.15円を割り込んでの推移なら28日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11月29日
 16:00 10月 貿易収支確報 (9月 -50.1億ドル)
 16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 96.5)
11月30日
 16:00 7-9月 GDP 前期比 (4-6月 3.5%)
 16:00 7-9月 GDP 前年同期比 (4-6月 3.8%)
 20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 グロス (11月17日時点 892.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 ネット (11月17日時点 289.9億ドル)
12月1日
 16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 48.4)
12月4日
 16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 3.43%)
 16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 61.36%)
 16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 1.94%)
 16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 39.39%)



注:ポイント要約は編集部

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