トルコリラ円見通し トルコ中銀が予想以上に利上げしたがリラ買い反応は限定的
〇トルコリラ円、11/23夕刻安値5.15から戻し、22時台に高値5.20を付け、11/21夕安値以降の高値更新
〇対ドルでのリラ高が勢い付かなかったことで、11/24早朝にかけては上げ渋り
〇対ドル、11/22は安値28.86を付けて最安値更新、11/23は28.87へと連日の最安値更新
〇その後トルコ中銀利上げを受けて一旦28.34まで上昇したが、勢い続かず深夜には28.87まで戻す
〇トルコ中銀、予想を上回る5%追加利上げを決定し政策金利を40.0%に
〇5.20超えからは、5.22への上昇を想定する
〇5.15割れからは、5.13前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の11月22日は概ね5.19円から5.13円の取引レンジ、23日早朝の終値は5.18円で前日終値の5.15円から0.03円の円安リラ高だった。23日は概ね5.20円から5.15円の取引レンジ、24日早朝の終値は5.18円で前日と変わらなかった。
ドル/トルコリラでリラ安が続く中で11月13日夜からドル円が急落したためにトルコリラ円は11月16日から20日にかけて3営業日続落となり、11月21日夕刻には5.11円(ベンダーによっては5.09円)へ下落して7月18日に付けた史上最安値5.08円に迫った。ドル円が147.15円まで下げたところから反騰入りしたことで最安値更新を回避し、22日もドル円の続騰を見て戻り高値を切り上げた。しかし11月22日に対ドルでトルコリラが取引時間中及び終値ベースでの史上最安値を更新したためにドル円の反騰程には勢い付かなかった。
11月23日は20時にトルコ中銀が市場予想の2.5%利上げではなく5.0%の利上げを決定したことと、ドル円が午後の149円割れから反騰したため、トルコリラ円は夕刻安値5.15円から戻していた流れを継続して22時台高値で5.20円を付けて11月21日夕安値以降の高値を更新したが、対ドルでのリラ高が勢い付かなかったことで24日早朝にかけては上げ渋りとなった。
【対ドルでは取引時間中及び終値で史上最安値更新】
ドル/トルコリラの11月22日は概ね28.86リラから28.60リラの取引レンジ、23日早朝の終値は28.83リラで前日終値の28.77リラからは0.06リラのドル高リラ安だった。11月23日は概ね28.87リラから28.34リラの取引レンジ、24日早朝の終値は28.78リラで前日終値から0.05リラのドル安リラ高だった。
週間ベースでは先週まで12週連続のドル高リラ安、9週連続で取引時間中及び週末値ベースの史上最安値更新を続けてきたが、今週もドル高リラ安基調は変わらないペースで進んでいる。
22日は安値で28.86リラを付けて11月17日に付けたこれまでの取引時間中最安値28.80リラを超え、23日は28.87リラへ最安値を更新し、トルコ中銀の利上げ幅が予想を上回ったことでいったん28.34リラまで上昇したが、勢いは続かずに早々にリラ売りへと風向きを変えて深夜には28.87リラまで戻した。
11月24日午前序盤は28.87リラから28.74リラのレンジで推移し、史上最安値近辺を維持しており、8月24日高値を起点としたドル高リラ安基調は続いている。
【トルコ中銀、予想を上回る5%追加利上げを決定】
トルコ中銀は11月23日のMPC(金融政策委員会)で政策金利の週間レポレートを5.0%引き上げて40.0%とした。エルドアン大統領再選後に就任したエルカン総裁体制となってから6会合連続の利上げとなり、利上げ幅は市場予想の2.5%を上回った
トルコ中銀は現行の金利水準はインフレ抑制に必要なレベルに近づいており、金融引き締めサイクルは近いうちに終了するとした。必要に応じて引き締めを続けるとしたが、政策金利が40%に到達したことにより利上げもピークに差し掛かった印象を与えた。金融大手ゴールドマンサックスは利上げピーク水準を42.5%へ引き上げたが、2.5%の追加利上げあと1回で利上げ打ち止めとなる見方のようだ。
しかし、トルコのインフレ率はCPI前年比で60%を超えており、10月CPIでは全体の前年比は61.36%(9月は61.53%)、コア指数では69.8%(9月は68.9%)であり、40%の政策金利でもなお実質大幅マイナス金利状態にある。インフレ率が劇的に低下し始めれば高金利通貨のトルコリラへの投資意欲が勢い付くこともあり得るが、インフレが高止まりするか、通貨インフレ型で高進する場合はリラ安も収まらないのではないかと思われる。
トルコ中銀調査におけるエコノミストや企業トップによる3か月後の政策金利予想は40%であり、40%を超えてさらに利上げが続いてゆくことがエルドアン大統領に容認されるのか疑問符も残るところだ。
トルコ中銀は8月24日会合で市場予想の2.5%利上げに対して予想の3倍となる7.5%利上げを決定したために当日に限ってリラが急伸したが、それでもリラ安の流れは変わらなかった。今回も2.5%利上げ予想を超えて5.0%利上げに踏み込んだものの、リラ買い反応は限定的なものにとどまっており、市場は追加利上げ催促としてのリラ売りを続けるのではないかと懸念される。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月16日未明高値をサイクルトップとして20日夜から22日夜にかけての間への下落を想定していたが、21日夕刻へ一段安してからドル円の反騰に合わせて5.17円まで戻したため、22日午前時点では21日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、サイクルトップ形成期を21日未明から23日未明にかけての間と想定した。23日午後へ反落してから深夜に一段高しているのでまだ上昇余地ありとするが、23日午後安値5.15円割れからは弱気サイクル入りとして24日夕から28日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月23日午後安値から一段高して先行スパンからの転落を回避しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込むところからは弱気転換注意とし、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月22日から23日夜への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行気配がみられるので、50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.15円を下値支持線、5.20円を上値抵抗線とする。
(2)5.20円超えからは5.22円への上昇を想定するが、5.22円以上は反落警戒とし、その後に5.18円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)5.15円割れからは5.13円前後への下落を想定する。5.13円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は5.10円試しへ下値目途を引き下げ、5.15円を割り込んでの推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月24日
16:00 11月 製造業景況観 (10月 103.3)
16:00 11月 設備稼働率 (10月 77.4%)
17:00 10月 海外観光客数 前年同月比 (9月 5.67%)
11月29日
16:00 10月 貿易収支確報 (9月 -50.1億ドル)
16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 96.5)
11月30日
16:00 7-9月 GDP 前期比 (4-6月 3.5%)
16:00 7-9月 GDP 前年同期比 (4-6月 3.8%)
20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 グロス (11月17日時点 892.3億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 ネット (11月17日時点 289.9億ドル)
12月1日
16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 48.4)
注:ポイント要約は編集部
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