トルコリラ円見通し 円安による支えとリラ安による圧迫感が交錯して上値重い
〇トルコ円、11/13午前の上昇では11/10早朝高値5.32にはわずかに届かず、11/14午前は5.28まで失速
〇対ドル、11/13は概ね28.62から28.37の取引レンジ、終値ベースでは2日連続で最安値更新
〇昨日発表のトルコの経常収支、市場予想を上回り3か月振りの黒字となるもリラ買い材料には至らず
〇5.32超えからは、5.34から5.35にかけての水準を試す上昇を想定する
〇5.27割れからは下落期入りとして、5.25、5.23を順次試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の11月13日は概ね5.32円から5.28円の取引レンジ、14日早朝の終値は5.30円で先週末と変わらずだった。
11月8日以降の終値は小数点下三桁でみれば5.2960円から5.299円までのレンジでほぼ横ばいとなっている。ドル円が11月3日夜安値を起点とした上昇を継続して11月13日も年初来高値を更新して6連騰とする一方、ドル/トルコリラにおいては11月10日に取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでは11月10日と13日に2営業日連続で史上最安値を更新しており、円安とリラ安が交錯していることで一時的な騰落を除いて11月6日午前からの上昇にブレーキがかかってきている印象だ。
ドル円は11月13日夜に151.90円を付けて11月1日未明高値151.71円を超えて年初来最高値とし、昨年10月21日天井の151.94円に迫っている。市場介入への警戒感も大きく、13日深夜には一時151.20円まで急落する場面も見られたが早々に買い戻されており、政府・日銀による市場介入への決意を試しつつ円安基調の継続感を維持している印象だ。
トルコリラ円は短期的にはドル円の騰落を追いかけており、11月1日未明高値5.36円へ急伸してから11月6日朝安値5.21円へ下落した後はドル円の反騰を見ながら持ち直してきたが、10日早朝に5.32円へ高値を伸ばした後は高値更新へ進めずにいる。11月10日午後に5.25円まで反落したところは買い戻されたが、11月13日午前の上昇では10日早朝高値にはわずかに届かず、11月14日午前は5.28円まで失速している。
ドル円が152円を超えて勢い付けばトルコリラ円には大きな押し上げ要因となるが、逆に下落に転じる場合はリラ安と円高の両面から圧されることになりかねない。今夜は米10月CPIの発表があり、ドル円が152円突破へ進めるのかいったん仕切り直しの下落へ進むのか試されるところであり、トルコリラ円も波乱に注意したい。
【対ドルでは終値ベースで2営業日連続の史上最安値更新】
ドル/トルコリラの11月13日は概ね28.62リラから28.37リラの取引レンジ、14日早朝の終値は28.56リラで先週末終値の28.53リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
8月最終週から先週まで11週連続のドル高リラ安となり、11月10日午前に28.73リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでは10月23日から11月3日まで10営業日連続で史上最安値を更新してから下げ渋ったものの、11月10日は11月7日終値28.45リラを超えて最安値を更新した。11月13日は取引時間中の最安値更新には至らなかったものの終値ベースでは2日連続で最安値を更新した。
11月13日はトルコ9月経常収支の発表があり市場予想を上回る経常黒字となったもののリラ買い材料には至らず、リラ安基調から脱却へ進めずにいる。
高インフレが続く中でトルコ中銀はエルカン総裁就任後から5会合連続で利上げを行い、政策金利は就任前の8.5%から35%へ引き上げられてきたが、10月のトルコCPIは全体の前年比が61.36%、コアCPIは69.8%と高水準であり、実質マイナス金利状態の解消には程遠いとして大幅な追加利上げ催促でのリラ安が続いている。
11月14日午前は28.70リラから28.52リラのレンジで推移している。
【トルコの経常収支、3か月振りプラス】
11月13日に発表されたトルコの9月経常収支は18.76億ドルの黒字となり8月の3.57億ドルの赤字から改善した。黒字は3か月振り。
リラの暴落的な下落と低成長、貿易収支の悪化により2023年1月には104.94億ドルの赤字となり過去最悪を記録したが、貿易収支がやや改善して観光収入による補填が効いたこともあり今年6月には7.16億ドルの黒字を計上して2021年12月から続いた赤字からいったん抜け出したものの7月、8月と再び赤字に陥っていた。
世界レベルのインフレ高止まり状況の中でリラ安が進行していることによりトルコの購買力低下が貿易収支における輸入超を縮小させていることが貿易収支の改善となり、夏秋の海外観光収入増加期を反映したことで経常黒字化したと思われるが、構造的な赤字体質は変わらないと思われる。高度成長を実現して輸出を拡大することで貿易収支が構造的に黒字転換ないし輸入と拮抗する状況にならないことには経常赤字と財政赤字、対外債務の拡大、国内インフレの高止まりによるリラ安基調は続きやすい。
11月15日には10月財政収支、17日には中銀による月次のビジネスサーベイによる年末インフレ率やドル/トルコリラ水準及び政策金利予想が発表される予定だ。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円は11月10日午後の反落から切り返したものの11月10日早朝高値にはわずかに届かずに14日午前へ失速気味の展開となっている。
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月10日午後安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われるが、11月10日早朝と13日午後の両高値をダブルトップとして下落期に入る可能性もあると注意したい。11月10日午後安値割れを回避するうちは上昇余地ありとし、11月10日早朝高値超えからは15日早朝から17日早朝にかけての間への上昇を想定するが、5.27円割れからはダブルトップ形成による弱気サイクル入りの可能性を優先して15日午後から17日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月14日午前への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。ただし、5.32円超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月14日午前への下落で40ポイント近辺へ低下しているため、50ポイント以下での推移中は20ポイント台への低下余地ありとみる。50ポイント超えから続伸の場合は上昇再開の可能性ありとみるが60ポイント台前半では戻り売りも出やすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.27円を下値支持線、5.32円を上値抵抗線とする。
(2)5.32円超えからは5.34円から5.35円にかけての水準を試す上昇を想定する。5.35円以上は反落警戒とするが、5.30円を上回っての推移なら15日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)5.27円割れからは下落期入りとして5.25円、5.23円を順次試す下落を想定する。5.24円以下は反騰注意とするが、5.27円を割り込んだ後も5.28円以下での推移なら15日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月15日
17:00 10月 財政収支 (9月 -1292億リラ)
11月16日
20:30 週次 外貨準備高 11月10日時点 グロス (11月3日時点 839.4億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11月10日時点 ネット (11月3日時点 247.4億ドル)
11月17日
16:00 11月 トルコ中銀ビジネスサーベイ(年末CPI等の予想)
11月20日
23:30 10月 中央政府債務 (9月 6兆700億リラ)
11月22日
16:00 11月 消費者信頼感指数 (10月 74.6)
11月23日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 35.0%)
注:ポイント要約は編集部
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