トルコリラ円見通し 対ドルでは最安値更新だが、ドル円の急騰で5.35円超えへ戻す(23/11/1)

トルコリラ円の10月31日は概ね5.36円から5.23円の取引レンジ、11月1日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.27円からは0.08円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 対ドルでは最安値更新だが、ドル円の急騰で5.35円超えへ戻す(23/11/1)

対ドルでは最安値更新だが、ドル円の急騰で5.35円超えへ戻す

〇トルコリラ円、日銀会合通過後のドル円急伸により11/1早朝には5.36まで大幅上昇
〇10/31夜にはユーロやポンドが下落しドル高優勢、トルコリラ円も圧迫される
〇対ドル、10/31は28.47リラをつけ2日ぶりに取引時間中の最安値を更新
〇実質マイナス金利状態に市場の大幅利上げ催促のリラ売り攻勢継続、リラの先安感ぬぐえず
〇5.31を上回るうちは一段高余地ありとし、5.37超えからは5.38、5.39を順次試す上昇を想定
〇5.31割れからは下落期入りとみて5.28、5.25を順次試す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の10月31日は概ね5.36円から5.23円の取引レンジ、11月1日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.27円からは0.08円の円安リラ高だった。

日銀は31日、YCC政策を修正し、長期金利変動許容基準を1%とし、1%を超えることも容認し、利回り1%で無制限に国債を買い入れる指値オペを止めるとしたが、長期金利の0%誘導そのものは継続し、マイナス金利も維持し、必要に応じて追加金融緩和を行うとした。市場はYCC修正については織り込み済とし、予想よりも金融緩和政策継続姿勢が強めだったとして円安反応に走った。19時発表の外為平衡操作実施状況報告では10月の介入実績はなく10月3日夜の急落も覆面介入ではなかったと確認されたことと米長期債利回りの上昇により11月1日早朝には151.71円を付けて昨年10月21日高値151.94円に迫った。
11月1日朝に、神田財務官が介入のスタンバイ状態と発言したことで1日午前は急騰後の修正安に入って151円台序盤へ下げているものの、市場介入を警戒しつつもドル円の先高感は強まっている印象だ。

トルコリラ円は10月31日午前に一時的な安値で5.23円を付けたが、それを除けば31日深夜の5.26円からジリ高で戻し、日銀会合通過後のドル円の急伸により1日早朝には5.36円まで大幅上昇した。10月26日午後高値を若干超えたことで8月24日高値以降の右肩下がりの展開から抜け出しつつあるが、上昇継続のためにはドル円がさらに一段高へ進む必要があり、ドル/トルコリラにおける史上最安値更新が続く中では過度な円安による上昇期待よりも、ドル円が市場介入等で急落して円安基調が頭打ちとなる際にドル高リラ安が進行して下落感が強まる可能性に注意したい。

【対ドルでは取引時間中の史上最安値更新】

ドル/トルコリラの10月31日は概ね28.47リラから28.06リラの取引レンジ、11月1日早朝の終値は28.28リラで前日終値の28.23リラからは0.05リラのドル高リラ安だった。
10月31日はドル円が日銀会合を通過しての円安で急伸し、夜に入るとユーロやポンドが下落してドル高優勢となったことにトルコリラ円も圧迫される環境だった。
8月24日にトルコ中銀が7.5%利上げを決定したことによるリラ買いで25.02リラへ急伸したもののリラ買い一巡でドル高リラ安が再開し、9月22日に史上最安値を更新してからも連日のように最安値更新を続けてきた。
10月31日は28.47リラを付けて2日ぶりに取引時間中の最安値を更新した。日足の終値ベースでは10月23日から30日まで6営業日連続で最安値を更新してきたが、31日も7営業日連続での最安値更新とした。

【大幅な実質マイナス金利状態と中東情勢からの地政学的リスクによるリラ売り】

10月26日にトルコ中銀は5.0%の追加利上げを決定して政策金利の週間レポレートを35.0%まで引き上げたが、9月のCPIが前年比61.53%、コア指数では68.9%と高水準のため、さらに大幅利上げを継続してゆかないことには実質マイナス金利状態から抜け出せないため、市場はより大胆な利上げ継続催促でリラ売り攻勢を継続している。
トルコ中銀はエルカン新総裁体制に入ってから外貨準備高を取り崩して市場介入を繰り返してきた姿勢を止め、為替水準は市場原理に基づくとして外貨準備高の増加を目指してきた。また2021年のリラ暴落に際して導入されたリラ建て預金の為替差損を補填する保護預金制度の適用縮小に取り組んでいる。財務省もエルドアン大統領再選前までの非伝統的政策姿勢を改めて財政健全化を目指して7月に大規模な増税を行い、海外からの投資を呼び込もうと努力している。
しかし、まだまだリラの先安感はぬぐえず、パレスチナ・ハマスとイスラエルの戦争状態が深刻化する中で近隣としての地政学的リスクの高まりが新たなリラ安材料となっている。

トルコのエルドアン大統領がイスラエルのガザ侵攻を虐殺として激しく批判し、イスラエルとの外交関係が悪化していることは米国とトルコの関係悪化にもつながりかねない。トルコはNATO加盟国であり、トルコ国内には米軍基地もあるが、米国は31日にトルコ南部の空軍基地にB1B爆撃機を派遣した。同基地からはかつてシリア内のIS勢力への空爆を行ったことがあるが、ハマスを支持しイスラエルと交戦中のヒズボラを支援しているイランへのけん制と思われ、トルコ国内の反イスラエル・反米感情を逆なでする可能性も懸念される。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月26日午後へ上昇してから軟調推移となったために27日午前時点では26日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、ボトム形成期を27日午前から31日午前にかけての間と想定した。
10月31日午前に一時的な安値を付けてから反騰入りしたため、31日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は31日午後から11月2日午後にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるため、5.31円を上回るうちは一段高余地ありとするが、5.31円割れからは弱気サイクル入りとして11月3日午前から7日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では31日昼からの急伸で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先とし、下げ足が速まる場合は先行スパンからの転落を試す可能性もあると注意する。

60分足の相対力指数は10月31日深夜に80ポイントへ到達してから60ポイント台へ低下した。50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は弱気転換注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.31円を下値支持線、5.37円を上値抵抗線とする。
(2)5.31円を上回るうちは一段高余地ありとし、5.37円超えからは5.38円、5.39円を順次試す上昇を想定する。5.38円以上は反落注意とするが、5.33円を上回っての推移なら11月2日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)5.31円割れからは下落期入りとみて5.28円、5.25円を順次試す下落を想定する。5.25円以上は反騰警戒とするが、5.31円を下回っての推移なら2日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11月1日
 16:00 10月 イスタンブール製造業PMI (9月 49.6)
11月2日
 16:30 トルコ中銀 四半期インフレ予測報告書
 20:30 週次 外貨準備高 10月27日時点 グロス (10月20日時点 825.7億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10月27日時点 ネット (10月20日時点 225.5億ドル)
11月3日
 16:00 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 4.75%、予想 3.93% 予想レンジ 3.20〜5.00%)
 16:00 10月 CPI消費者物価指数 前年同月比 (9月 61.53%、予想 62.12%、予想レンジ 61.00〜64.10%)
 16:00 10月 コアCPI 前月比 (9月 5.3%)
 16:00 10月 コアCPI指数 前年同月比 (9月 68.9%)
 16:00 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 3.4%)
 16:00 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 47.44%)



注:ポイント要約は編集部

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