日銀の金融緩和継続で急伸、151.71つけ昨年10月21日高値151.94に迫る
〇ドル円、日銀会合を通過して急伸、10月の市場介入無しで151.71までさらに高値を伸ばす
〇11/1朝 神田財務官が市場介入等について「スタンバイ」と述べ円安をけん制、151円台序盤へ反落
〇7-9月期米雇用コスト指数は前期比1.1%上昇、労働需給のひっ迫感継続し賃金インフレ圧力続く
〇米長期債利回りは総じて上昇、ダウは先週末までの大幅下落が一服し続伸
〇FOMC現状維持との見方が確実視、パウエル議長の認識に注目集る
〇151以上での推移中は一段高余地ありとし、151.71超えからは152円台序盤目指す上昇を想定
〇150.75割れからはいったん下げに入るとみて150円台前半への下落を想定、市場介入等での急落に注意
【概況】
ドル円は日銀会合におけるYCC修正観測記事から10月30日深夜に148.80円まで下げていたが、売り一巡から買い戻され、日銀が31日昼過ぎにYCC修正を決めたもののマイナス金利等の金融緩和政策を継続し必要に応じて追加緩和するとしたことで149円台前半から150円突破へ急伸した。
日銀は金融政策決定会合で長期金利変動許容上限を1%として一定程度超えることを容認し、利回り1%での10年国債無制限購入の「指し値オペ」を取りやめた。しかしマイナス金利は維持し、必要に応じて追加緩和を行うとしたため、30日深夜に下落反応した内容を超えるものではなく政策修正に対して消極姿勢と市場は受け止めて円安反応となった。
19時発表の外国為替平衡操作実施状況においては10月中の市場介入がなかったことが確認され、10月3日夜の一時的な急落が市場介入ではなかったことがはっきりしたため、発表後は円安がさらに勢いを増した。
米国市場時間では7-9月期の雇用コスト指数が前期比で上昇したことでドル高優勢となり、米長期債利回りの上昇を見ながらドル円は11月1日早朝に151.71円まで高値を伸ばした。
11月1日朝、財務省の神田財務官は「年初来25円近く動いている」「一方的で急激な動きには大きく懸念している」「より高い緊張感の状況になっている」とし、市場介入を含めた様々な手段について「スタンバイです」と述べて円安をけん制したため、ドル円は151円台序盤へ反落している。
【日銀金融政策決定会合の結果】
日銀は10月31日に金融政策決定会合の結果を発表した。注目された長短金利操作=YCC(イールドカーブ・コントロール)については、長期金利の変動許容上限を1%目途とし、長期金利の1%超えも容認するとした。長短金利操作の運用を従来よりも柔軟化させるとし、1%の利回りで国債を無制限に買い入れることは副作用が大きいとして止めるとした。しかし、短期金利をマイナス0.1%で据え置き、長期金利を0%程度に誘導する金利操作の枠組み自体は維持するとした。物価見通しについては2023年度と24年度を2.8%とし、2025年度を1.7%としたが2%の政策目標を持続的にクリアする状況にはまだ至っていないとの認識を示した。
10月31日の本邦10年債利回りは0.950%へ上昇しており、今後は1%を超え推移する可能性が高まっている。
【米雇用コスト指数が上昇、住宅価格も予想を上回る】
10月31日に発表された7-9月期の米雇用コスト指数(ECI)は160.7となり、前期比で1.1%上昇して4-6月期の1.0%上昇を上回って2四半期ぶりに伸びが加速した。前年同期比は4.3%上昇で前期の4.5%から若干鈍化したが、賃金・賞与は前期比で1.2%(4-6月期は1.0%)、前年同期比で4.6%(4-6月期は4.6%)となり、労働需給のひっ迫感が継続して賃金インフレ圧力が続いている印象を与えた。
米MNIインディケーターズによる10月のシカゴ購買部景況指数は44.0となり、9月の44.1から低下して市場予想の45.0を下回った。
米コンファレンス・ボードによる10月消費者信頼感指数は102.6となり、9月の104.3から低下したものの市場予想の100.0を上回った。現況指数は143.1(9月146.2)、期待指数は75.6(同76.4)だった。
【11月2日未明、FOMC】
11月2日3時に米FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)の結果発表、3時半にパウエル議長の会見がある。インフレがなお高止まり状況にあるために利下げ再開は遠のいているものの、当面はこれまでの利上げ効果を見定め、米長期債利回りの大幅上昇が利上げと同様の効果を示していることから、今回の会合では利上げされずに現状維持との見方が確実視されており、12月の次回会合でも据え置きとの予想が大勢で、来年1月会合でも利上げ見送りの可能性が優勢となっている。
インフレと長期金利の状況に関し、パウエル議長の認識と今後の姿勢が従来よりもタカ派的かハト派的なのか注目されているが、サプライズ的な姿勢変更がみられなければ市場の反応も鈍いものに留まるかもしれない。
【米長期債利回りは上昇、ダウは連騰】
10月31日の米長期債利回りは総じて上昇した。雇用コスト指数の上昇や米国の四半期大量入札予定を意識して債券売り・利回り上昇の動きとなった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%上昇の4.93%で終了したが、一時4.80%まで低下してから反騰している。30年債利回りは前日比0.05%上昇の5.10%、2年債利回りは前日比0.03%上昇の5.09%だった。
一方でNYダウは前日比123.91ドル高と上昇、30日の前日比511.37ドル高からの続伸となった。先週末までの大幅下落が一服し、FOMCを控えて買い戻されている印象だ。ナスダック総合指数も61.76ポイント高と上昇して10月27日から3連騰となった。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は10月26日午後高値150.77円を目先のピークとして下落したが、10月24日夕安値から4日半となる30日深夜安値148.80円で底打ちし、日銀会合を通過して急伸した。目先の高値形成期は10月26日午後高値を基準として31日午後から11月2日午後にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるが、151円台を維持するうちは1日夜から2日にかけての上昇余地ありと思われる。151円割れを弱気転換注意とし、150.75円割れからはいったん下げに入るとみて11月6日深夜にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月31日昼からの急伸で遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは反落期に入るとみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月31日深夜には90ポイントに迫る急伸となり、11月1日午前の反落で70ポイントを割り込んでいる。60ポイント台までにとどまるうちは一段高余地ありとし75ポイント超えからは80ポイント台を再び試す可能性があるとみるが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は下落注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとして40ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、150.75円を下値支持線、151.71円を上値抵抗線とする。
(2)151円以上での推移中は一段高余地ありとし、151.71円超えからは152円台序盤を目指す上昇を想定する。152円以上は反落警戒とするが、151円を上回っての推移なら2日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)150.75円割れからはいったん下げに入るとみて150円台前半への下落を想定する。150.20円以下は反騰注意とするが、市場介入等で急落商状となるケースもあり得ると注意する。150.75円を割り込んでの推移なら2日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の予定】
11/1(水)
10:45 (中) 10月 財新製造業PMI (9月 50.6、予想 50.8)
18:30 (英) 10月 製造業PMI・改定値 (9月 45.2、予想 45.2)
21:15 (米) 10月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (9月 8.9万人、予想 15.0万人)
22:45 (米) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 50.0、予想 50.0)
23:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 49.0、予想 49.0)
23:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.5%、予想 0.4%)
23:00 (米) 9月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (8月 961.0万件、予想 925.0万件)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
11/2(木)
休場、メキシコ
08:50 (日) 10月 マネタリーベース 前年同月比 (9月 5.6%)
09:30 (豪) 9月 貿易収支 (8月 103.80億豪ドル、予想 95.76億豪ドル)
17:55 (独) 10月 失業者数 前月比 (9月 1.00万人、予想 1.50万人)
17:55 (独) 10月 失業率 (9月 5.7%、予想 5.8%)
17:55 (独) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 40.7、予想 40.7)
18:00 (欧) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 43.0、予想 43.0)
21:00 (英) BOE(英中銀) 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
21:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (4-6月 3.5%、予想 4.2%)
21:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (4-6月 2.2%、予想 0.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.0万人)
23:00 (米) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 1.2%、予想 1.9%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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