日銀会合(10月30-31日開催)のポイント:可能性低いが、サプライズはYCC再修正

サプライズは「YCCの再修正」となるだろう。ただ、この可能性は非常に低いと考える。

日銀会合(10月30-31日開催)のポイント:可能性低いが、サプライズはYCC再修正

日銀会合(10月30-31日開催)のポイント:可能性低いが、サプライズはYCC再修正

【今回のポイント】

〇 現状の金融政策は据え置き

〇 2024年度の消費者物価指数(CPI)の上昇率見通しを2%に引き上げ

〇 YCC再修正の可能性は低く、円は凪相場で動かないとの公算が大

【市場コンセンサスは何?】

10月から11月頭にかけての日米欧中央銀行の政策発表は、26日の欧州中央銀行(ECB)理事会、30日−31日の日本銀行の金融政策決定会合、31日から11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)というスケジュールである。

10月29日21時時点の日銀会合コンセンサスは下記の通りである。

・現状の金融政策は据え置き
・2024年度の消費者物価指数(CPI)の上昇率見通しを2%に引き上げ

市場では、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作(YCC))の修正を行う可能性があるとの指摘は根強く、株式市場でも一部の地銀株が上昇するといった動きが見られる。実際、7月に長期金利の上限をそれまでの0.5%から1.0%に引き上げたが、足元の10年国債利回りは0.8%台後半まで上昇しており、上限に近づきつつある。

今回の会合でこの上限を引き上げるのではないか、との声だが、まずは、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の2024年度の物価見通しを引き上げてから、YCCの再修正に動くと考える。つまり、YCCの再修正は早くて12月の今年最後の日銀会合で実施すると予測する。

【何がサプライズになる?】

サプライズはこの「YCCの再修正」となるだろう。ただ、この可能性は非常に低いと考える。理由は、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突に伴う世界的な不確実性である。日銀が、このコントロールできないリスクをどのように表現、織り込むのか、には注目している。

ECB理事会でもこの不確実性を考慮する発言があったことから、日銀が一足飛びにYCC再修正に動くとは考えにくい。為替市場での円安是正のために、このリスクを取りに行く可能性はあるが、仮に実施した場合は、株安、債券安(利回り上昇)、円高と大きなリアクションとなるだろう。慎重な植田日銀総裁がそのような市場の動きを引き起こすトリガーを引くとも思えない。

【では、円はどう動く?】

コンセンサス通りだった場合とサプライズだった場合の2通りのシナリオを考えておきたい。

〇コンセンサス通りだった場合
全ての市場の反応は凪で、為替市場での積極的な円の売買は当然見送られ、12月にYCC再修正実施との公算が大きくなるだろう。そして、市場の関心は、足元の日銀会合でのYCC再修正から為替介入の有無に移る。

10月3日の海外時間での乱高下の後、鈴木財務相、神田財務官はそろって「ノーコメント」を通した。恐らくこの時に為替介入は行われていないと考えるが、市場に与えたインパクトは大きく、ドルは150円より上は介入がいつ行われてもおかしくはない、という水準として強く認識されており、ドル・円の膠着相場は今しばらく続くこととなろう。

〇サプライズだった場合
YCC再修正を実施した場合、為替市場は、主要通貨に対して円が全面高となり、債券市場では、利回り上昇(債券単価は下落)、株式市場では、半導体など輸出関連銘柄が急落し、銀行株は急騰し、日経平均は3万円の大台を割り込むだろう。

そして、こうした急変動は一時的ではなく、大きなトレンドとして続くだろう。一国の金融政策の方針転換は一時的な反応で終わる訳ではなく、来年辺りと見られる「マイナス金利の解除」に向けての中期的なトレンドスタートとなる。円はドルに対して上昇(円高ドル安)し、7月28日以来の130円台突入を意識した展開も視野に入ろう。

【最近の日銀会合関係者の発言は?】

ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。為替水準に対する口先介入も多いが、円の動向という観点でこの一覧に含めている。

村井官房副長官(10月26日)
「為替相場の過度な変動は望ましくない、政府として万全の対応を行う」

鈴木財務相(10月26日)
「今まで通りしっかり緊張感を持って動き見ていく」

植田日銀総裁(10月20日)
「先行きは、価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小へ」

鈴木財務相(10月20日)
「安定的に推移することが重要、現在の為替レベルについてコメントしない」

神田財務官(10月19日)
「安全資産への逃避見られる、パニック売りがないか今後心配」

神田財務官(10月16日)
「市場が変な動きになれば適切に対応する事が必要」
「金利は為替のファクターの一つに過ぎない」

野口日銀審議員(10月12日)
「インフレ期待上昇局面にはYCC柔軟化が必要になる」

植田日銀総裁(10月4日)
「為替についての質問にコメントせず」

松野官房長官(10月4日)
「急速な変動は望ましくない、為替介入の有無についてコメント控える」

鈴木財務相(10月4日)
「為替介入の有無についてはコメントを控える」

神田財務官(10月4日)
「介入の有無はコメントを控える」
「過度な変動は企業や家計に悪影響を与える、望ましくない」

【2023年の日銀会合終了時間一覧】

日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行だ。

そして、結果発表が遅くなればなるほど、「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。

以下は、2023年の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから5分ほど経過してからだ。

1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・前回会合の方針を維持する予定?
12月19日(火)・・・?

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)

9月21日(木)ー22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持したことで、市場はやや円安
10月30日(月)ー31日(火)・・・前回会合の方針を維持する予定?
12月18日(月)ー19日(火)・・・?

米連邦公開市場委員会(FOMC)

9月19日(火)ー 20日(水)・・・利上げ見送り、ややタカ派な姿勢が確認できたことで、市場はドル買いで反応
10月31日(火)ー11月1日(水)・・・前回会合の方針を維持する予定?
12月12日(火)ー 13日(水)・・・?

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)

9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・想定通りの現状維持でユーロは凪相場
12月14日(木)・・・?

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