ドル円見通し 26日の乱高下で目先は上昇一服、日米金融政策見極めて年末の方向を探る(週報10月第五週) 

FRBが重視するPCEデフレーターの上昇率は前月比0.7%となり、市場予想の0.4%を上回ったが、前年同月比は3.4%で市場予想と一致、3か月連続で変わらずだった。

ドル円見通し 26日の乱高下で目先は上昇一服、日米金融政策見極めて年末の方向を探る(週報10月第五週) 

26日の乱高下で目先は上昇一服、日米金融政策見極めて年末の方向を探る

〇先週のドル円、26日午後150.77へ急伸したところから売りの連鎖反応で149.88へ急落
〇その後150円台で推移するもPCEデフレーターが予想通りとなりドル安反応、149.43へ下落
〇10/31-11/1のFOMCでは利上げ見送りが確実視、12月FOMCも見送りが続くとの見方が優勢
〇日銀会合、FOMC,米雇用統計と重要イベントが続くために変動も大きくなると注意したい
〇150円以下での推移中は一段安余地ありとし、149.30割れからは149円前後への下落を想定
〇重要イベントを下落反応で通過してゆく場合、148円割れを試しに向かう可能性に注意する
〇150円台回復からは上昇再開、イベントをドル高優勢で通過する場合には150.77超えを目指す

【概況】

ドル円は10月26日午後150.77円へ急伸したところから売りの連鎖反応で149.88円へ急落する波乱となり、波乱が落ち着いた後は150円台を維持していたが、10月27日の米PCEデフレーターが予想通りとなり、ドル安反応となる中で26日乱高下時の安値を割り込み、さらにミシガン大消費者調査における期待インフレ率が上昇したもののドル高を呼び込まなかったことで28日未明には149.43円へ下落した。
米国のインフレが高止まりないしは再加速する可能性が示されたものの、これまでの利上げによる効果、米長期債利回りが国債増発による需給のゆるみで相当程度に上昇してきたこと、さらに中東情勢緊迫化による景気への悪影響も踏まえ、10月31-11月1日の米FOMCでは利上げ見送りが確実視されており、12月FOMCについても見送りが続くとの見方が優勢となっているが、10月27日の米経済指標はそうした見方を覆すものではないと市場は受け止めたようだ。

ドル円としては10月30-31日の日銀金融政策決定会合における長期金利上昇許容変動上限の再引き上げの可能性や、金融緩和終了へ向かっての出口戦略が示唆される可能性も意識されており、10月26日の急伸で当面の高値を付けたとして日米金融政策を見定めて、円高へ風向きを変えるのか判断してゆくことになるのだろうと思われる。

【米PCEデフレーター、3か月連続で変わらず】

10月27日に米商務省が発表した9月PCE(個人消費支出)は前月比0.7%増となり、8月の0.4%から伸びて市場予想の0.5%を上回り、消費の堅調さを示した。FRBがインフレ指標として重視するPCEデフレーターの上昇率は前月比0.7%となり、8月の0.4%から伸びが加速して市場予想の0.4%を上回ったが、前年同月比は3.4%で市場予想と一致、3か月連続で変わらずだった。コア指数の上昇率は前月比0.3%で8月の0.1%から加速したが市場予想と一致、前年同月比は3.7%で8月の3.8%(速報の3.9%から下方修正)から鈍化して市場予想と一致した。
全体及びコアの前月比が8月から伸びを加速させたことと、前年同月比の鈍化傾向の鈍化はインフレの高止まり状況ないしは再加速する可能性も示すものだが、追加利上げを催促するほどの内容ではなかった。

ミシガン大の10月消費者調査の確報値では、消費者信頼感指数が速報と63.0から63.8へ上方修正されたが、1年先期待インフレ率は4.2%となり、9月確報の3.2%から大幅に上昇、5年先の期待インフレ率も3.0%となり、9月確報の2.8%から上昇した。消費者におけるインフレ感は依然として上昇余地のあるものとなっているようで、米国の利上げ状態の長期化への懸念を助長する内容だったが、市場には追加利上げを催促するものにはならないと受け止められたようだ。
消費者信頼感の現況指数は9月の71.1から10月は70.6へ低下、期待指数も65.8から59.3へ低下しており、高金利状態での景気低迷感も出始めているのではないかという印象を与えた。

【米長期債利回りは10年債が横ばい、2年債は低下、ダウは3営業日続落】

10月27日の米長期債利回りはまちまちの動きだった。インフレ継続による利上げ状態の長期化への懸念がある一方で、11月と12月の年内FOMCでの追加利上げはないだろうとの見方が優勢となったために10年債利回りが横ばい、30年債利回りが上昇、2年債利回りが低下した。
長期金利指標の10年債は前日比変わらずの4.84%で終了した。週間では10月20日終値4.91%から0.07%の低下で、10月23日に5.02%をつけてこの間の最高水準としてから24日に4.80%まで下げた後はこの高安レンジ内での推移を続けている。
30年債利回りは前日比0.03%上昇の5.02%で終了した。週間では10月20日終値5.08%から0.06%低下で、23日に5.18%をつけてこの間のピークとしたところから24日に4.93%へ下げ、その後はこの高安レンジ内での推移を続けた。

利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.03%上昇の5.01%で終了した。週間では10月20日終値5.07%から0.06%低下だが、10月19日に5.26%をつけてこの間のピークとした後は低下傾向を続けており、当面の追加利上げなしとの見方でピークアウト感がみられるようだ。
ドル円としては10年債利回りの頭打ち感と2年債利回りの低下が円高要因となっている。


一方でNYダウは前日比366.71ドル安と下落、3営業日続落で安値では32327.20ドルを付けて8月1日の年初来高値35679.13ドル以降の安値を更新した。中東情勢の影響を警戒した動きでもあり、10月6日安値を割り込んでの一段安により先安感が強まっている。ナスダック総合指数は47.40ポイント高と3日ぶりに反発したが、26日に12543.86ポイントまで下げて昨年10月以降の高値である7月18日の14446.55ポイント以降の安値を更新しており下落基調を続きやすい流れとなっている。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月3日夜に150.15円を付けてから147.41円へ急落する波乱となり、10月17日も直前の149.69円から148.81円へ一時的に急落する小波乱となり150円に対する高値警戒感の根深さを示していたが、10月26日午前に150.31円へ上昇した際の財務省・官邸による円安けん制発言が従来よりもトーンを強めなかったことで円安トライの市場心理が働いて150.77円まで急伸した。その直後に149.98円まで反落したが、10月3日と10月17日の波乱と同様に売りの連鎖反応とその後の突っ込み買いからの買い戻し連鎖によるものと思われ、市場介入は控えられている印象だ。
10月3日安値147.41円から10月17日安値148.81円、10月24日安値149.30円、10月28日未明安値149.43円と、ここまでは底上げ基調で推移して上昇トレンドを維持しているが、底上げ基調が崩れ、戻り高値が切り下がってその後に一段安となる右肩下がりの展開に入る場合には、7月14日安値を起点とした上昇が一巡して下落期入りとなることも考えられる。

日足の騰落周期は3か月から4か月程度であり、6月30日高値からすでに4か月を経過しているため、高値の周期からは下落しやすい時期にありそうだ。ただし、7月14日安値からも3か月半を経過しているため、仮に下落期に入った場合には11月前半から中旬にかけての間で底打ちして上昇再開を試す動きへと進むことも考えられる。

日足の一目均衡表では遅行スパンが好転して先行スパンを上回る状況が続いており、短期的には26日基準線が下値支持線として機能されてきた。しかし10月以降は徐々に上昇角度が鈍っているために26日基準線割れに対して余裕が乏しくなり、遅行スパンも悪化しやすい位置に来ている。26日基準線を上回るが、取引時間中の一時的な下落で26日基準線を割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、日足の終値で26日基準線を割り込み翌日も続落する場合は中勢レベルの弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは先行スパンへ潜り込んで行くレベルの下落を想定する。

日足の相対力指数は10月3日高値から10月26日高値への上昇に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるため反落注意期とし、50ポイント割れへ下落する場合は40ポイント前後を試す下落期入りと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示すが、日銀会合、FOMC,米雇用統計と重要イベントが続くために変動も大きくなると注意したい。
(1)当初、149.30円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)150円以下での推移中は一段安余地ありとし、149.30円割れからは149円前後への下落を想定する。日銀金融政策決定会合で政策修正されて円高を助長する場合には148円台中盤(148.65円から148.35円)への下落を想定する。また直前安値から1円を超える反騰へ進めないうちは、下落後の戻り一巡からさらにもう一段安へ進む可能性もあると注意する。日銀会合、FOMC、米雇用統計と下落反応で通過してゆく場合には148円割れを試しに向かう可能性も出てくると注意する。
(3)150円台回復からは上昇再開とし、日銀の現状維持や米FOMCをドル高優勢で通過する場合には10月26日高値150.77円超えを目指し、週末の米雇用統計通過後も円安継続で勢い付く場合には151円台前半へ進む可能性もあると思われる。

【当面の予定】

10/30(月)
14:00 (日) 日銀・金融政策決定会合初日
09:30 (豪) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.2%、予想 0.3%)
18:00 (独) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月 0.0%)
18:00 (独) 7-9月期 GDP・速報値 前年同期比 (4-6月 -0.2%)
18:00 (独) 7-9月期 GDP季調前・速報値 前年同期比 (4-6月 -0.6%)
19:00 (欧) 10月 消費者信頼感・確定値 (速報 -17.9)
19:00 (欧) 10月 経済信頼感 (9月 93.3)
22:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (9月 0.3%)
22:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (9月 4.5%)

10/31(火)
未定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未定 (日) 日銀展望レポート
06:45 (NZ) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 -6.7%)
08:30 (日) 9月 失業率 (8月 2.7%、予想 2.6%)
08:50 (日) 9月 小売業販売額 前年同月比 (8月 7.0%、予想 6.0%)
08:50 (日) 9月 鉱工業生産・速報値 前月比 (8月 -0.7%、予想 2.3%)
08:50 (日) 9月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (8月 -4.4%、予想 -2.7%)
09:00 (NZ) 10月 ANZ企業信頼感 (9月 1.5)
10:30 (中) 10月 国家統計局製造業PMI (9月 50.2、予想 50.2)
14:00 (日) 10月 消費者態度指数・一般世帯 (9月 35.2、予想 34.9)
14:00 (日) 9月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (8月 -9.4%、予想 -4.0%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見

19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況(9月28日-10月27日)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月 0.1%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・速報値 前年同期比 (4-6月 0.5%)
19:00 (欧) 10月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (9月 4.3%、予想 3.1%)
19:00 (欧) 10月 コアHICP・速報値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.2%)
21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 1.0%、予想 1.0%)
22:00 (米) 8月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (7月 0.8%)
22:00 (米) 8月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (7月 0.1%)
22:45 (米) 10月 シカゴ購買部協会景況指数 (9月 44.1、予想 45.0)
23:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (9月 103.0、予想 99.6)

11/1(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 就業者数 前期比 (4-6月 1.0%、予想 0.4%)
06:45 (NZ) 7-9月期 就業者数 前年同期比 (4-6月 4.0%、予想 3.2%)
06:45 (NZ) 7-9月期 失業率 (4-6月 3.6%、予想 3.9%)
09:30 (豪) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 7.0%、予想 0.6%)
10:45 (中) 10月 財新製造業PMI (9月 50.6、予想 50.8)
18:30 (英) 10月 製造業PMI・改定値 (9月 45.2)
21:15 (米) 10月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (9月 8.9万人、予想 13.5万人)
22:45 (米) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 50.0)
23:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 49.0、予想 49.0)
23:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.5%、予想 0.4%)
23:00 (米) 9月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (8月 961.0万件)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見

11/2(木)
休場、メキシコ
08:50 (日) 10月 マネタリーベース 前年同月比 (9月 5.6%)
09:30 (豪) 9月 貿易収支 (8月 103.80億豪ドル、予想 95.76億豪ドル)
17:55 (独) 10月 失業者数 前月比 (9月 1.00万人)
17:55 (独) 10月 失業率 (9月 5.7%)
17:55 (独) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 40.7)
18:00 (欧) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 43.0)
21:00 (英) BOE(英中銀) 政策金利 (現行 5.25%)
21:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (4-6月 3.5%、予想 4.0%)
21:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (4-6月 2.2%、予想 1.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.0万人)
23:00 (米) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 1.2%、予想 1.0%)

11/3(金)
休場 日本
10:45 (中) 10月 財新サービス業PMI (9月  50.2)
16:00 (独) 9月 貿易収支 (8月 166億ユーロ)
18:30 (英) 10月 サービス業PMI・改定値 (速報 49.2)
19:00 (欧) 9月 失業率 (8月 6.4%)
21:30 (米) 10月 非農業部門雇用者数 前月比 (9月 33.6万人、予想 17.3万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 4.2%)
22:45 (米) 10月 サービス業PMI・改定値 (9月 50.9)
23:00 (米) 10月 ISM非製造業景況指数 (9月 53.6、予想 53.0)

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