トルコリラ円見通し ドル円を見ながらやや戻すも中東情勢が重石(23/10/12)

トルコリラ円の10月11日は概ね5.39円から5.32円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.38円で前日終値の5.36円からは0.02円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円を見ながらやや戻すも中東情勢が重石(23/10/12)

ドル円を見ながらやや戻すも中東情勢が重石

〇昨日のトルコ円、中東情勢とドル高リラ安基調を気にしつつ、ドル円を見ながらの小動き
〇10/12未明にかけてはドル円の上昇に合わせ5.39へ上昇
〇中東情勢に緊迫化によりトルコの地政学的リスクは急上昇、経済的な悪影響が懸念される
〇対ドル、10/11は概ね27.85から27.51の取引レンジ、最安値近辺を維持
〇今夜の米CPIの内容によってドル円が大きく変動する可能性に注意
〇9月トルコ経常収支は6.19億ドルの赤字で改善傾向だが、構造的な赤字体質からの脱却難しいか
〇5.35を上回るうちは上昇余地ありとし、5.39超えからは5.41前後への上昇を想定
〇5.34割れからは下落期入りとみて5.32、5.30を順次試す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の10月11日は概ね5.39円から5.32円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.38円で前日終値の5.36円からは0.02円の円安リラ高だった。
中東情勢とドル高リラ安基調を気にしつつ、トルコリラ円はドル円を見ながらの小動きで、11日午前にかけてはドル円の下落局面で5.34円へ下落し、昼過ぎには一時的な飛び値で5.32円まで下げる場面も見られたものの12日未明にかけてはドル円の上昇に合わせて5.39円へ上昇した。

ドル円は10月3日夜に150.15円まで年初来高値を更新した直後に147.41円まで急落する波乱となったが、乱高下が落ち着いてからは148円台序盤を買われて149円台前半で売られる持ち合いに入っている。10月10日午前安値148.15円から11日午前安値148.40円へ底上げし、10日夜高値149.09円から12日未明高値149.32円まで高値を切り上げたが、12日午前には149円を割り込むなど持ち合いから抜け出す兆候が見られない。ドル円が再び148円台序盤へ下げるようならトルコリラ円には重石となるが、今夜の米CPI内容次第ではドル円も大きく上下に振れる可能性があると注意したい。

【対ドルの史上最安値連日更新は一服だが、最安値近辺を維持】

ドル/トルコリラの10月11日は概ね27.85リラから27.51リラの取引レンジ、12日早朝の終値は27.70リラで前日終値の27.71リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
8月24日のトルコ中銀による超大幅利上げをきっかけとしたリラの急騰一巡で8月25日からドル高リラ安が再開して9月22日には8月24日の急騰幅を解消して史上最安値更新に入り、その後も史上最安値を繰り返し更新して10月6日から10日まで3営業日連続で取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでは9月28日から10月10日まで9営業日連続で史上最安値を更新してきた。
10月11日は史上最安値更新には至らずにリラ安一服感も見られたものの27リラ台後半を維持しており、8月25日以降のリラ安基調の範囲にとどまっている。
中東情勢に緊迫化は情勢の悪化及び長期化への懸念も含めてトルコにとっての地政学的リスクの急上昇であり、リラを含めて近隣諸国にとっては自国通貨安等の経済的な悪影響がしばらく続くと懸念される。

【9月のトルコ経常収支は6.19億ドルの赤字】

10月11日に発表されたトルコの9月経常収支は6.19億ドルの赤字で赤字額は8月の54.66億ドルから大幅に縮小した。
トルコは輸入が輸出を上回る構造的な貿易赤字により経常収支も慢性的な赤字が続いており、今年1月には経常赤字が98.49億ドルに達して過去最大となったが、その後は大きな変動を伴いながらも改善傾向を示している。パンデミックが落ち着く中で基幹産業の観光収入が増加しており、対ドルやユーロでトルコリラが史上最安値を更新していることで観光客の財布も緩んでいることが観光収入増加に貢献して経常収支の改善にもつながっているようだ。
しかし財政再建のための増税と高インフレ及び高金利によりトルコの経済成長が停滞しており、経常収支も一時的に黒字化しても構造的な赤字体質から脱却することは難しいと思われる。

【中東情勢、近隣への影響懸念】

トルコのエルドアン大統領はイスラエルとハマスの双方に対して戦争拡大への自制を求めて仲裁に乗り出す姿勢を示しているが、11日にはトルコ議会においてイスラエルがパレスチナ自治区ガザを封鎖して空爆していることは「行き過ぎた報復で虐殺に当たる」とイスラエルを批判した。
イスラエルがガザを封鎖して電力や水道を止めながら民間人住宅を爆撃していることは、イスラム教国としては受容できないものであり、サウジと同様にイスラエルとの関係改善を模索してきたトルコにとっても関係を再び悪化させかねない事態だ。

中東では過去に何度も周辺諸国を巻き込んだ大規模な中東戦争が繰り返されてきた。今回もレバノンの武装勢力であるヒズボラがイスラエルと交戦しており、イランはハマスのイスラエル攻撃を称賛、米英等がイスラエル支援を早々に表明して米空母が近海に派遣されており、トルコとしては外交的な対応を誤ると米英等との関係悪化にもつながりかねない。
NYダウが4連騰するなど、株式市場は比較的冷静な動きだが、事態が新たな中東戦争レベルに深刻化しないとの前提が崩れる場合には地政学的リスクの連鎖的な悪化が中東全体を巻き込んで行くことにもなりかねないと注意したい。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月6日夜に戻してから一段安したために10月10日午前時点では10月6日夜高値をサイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして11日午後から16日午後にかけての間への下落を想定した。
一時的な安値を除いて10月11日午前へ続落してから12日未明へ戻しているため、11日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたと思われる。サイクルトップ形成期は11日夜から13日夜にかけての間と想定されるのですでに反落注意期とし、5.35円を上回るうちは5.40円台への上昇余地ありとするが、5.34円割れからは弱気サイクル入りとして16日午前から18日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月12日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いているため、先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月12日未明への上昇で70ポイントに迫ってから反落したが50ポイント以上を維持しているので60ポイント超えからは70ポイント超えを目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.34円を下値支持線、5.39円を上値抵抗線とする。
(2)5.35円を上回るうちは上昇余地ありとし、5.39円超えからは5.41円前後への上昇を想定する。5.41円以上は反落注意とするが、5.36円以上での推移なら13日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.34円割れからは下落期入りとみて5.32円、5.30円を順次試す下落を想定する。

【当面の主な予定】

10月12日
 20:30 週次 外貨準備高 10月6日時点 グロス (9月29日時点 815.8億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10月6日時点 ネット (9月29日時点 206.4億ドル)
10月16日
 17:00 9月 財政収支 (8月 512.7億リラ)
10月19日
 20:30 週次 外貨準備高 10月13日時点
10月20日
 23:30 9月 中央政府債務残高 (8月 5兆8800億リラ)
10月23日
 16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 71.50)
10月25日
 16:00 10月 製造業信頼感指数 (9月 104.4)
10月26日 
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 30.0%)



注:ポイント要約は編集部

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