トルコリラ円見通し ドル高リラ安の揺さぶり続く、目先は円安で底固い
〇トルコ円、9/25は概ね5.47から5.35の取引レンジ、深夜5.35へ急落するも早々に元の水準へ切り返す
〇8/25以降トルコリラ円は、リラ安と円安に挟まれて持ち合いの様相で推移
〇対ドル、9/25は取引時間中の最安値更新には至らなかったものの、終値は8/24以降の安値を更新
〇トルコ中銀、リラ保護預金の最低金利を撤廃、政策金利を下回る金利設定が可能に
〇政策金利30%到達でも実質的なマイナス金利状態解消されず、リラ売りは収まらない状況
〇5.44を上回るうちは、5.48超えから5.50を目指す上昇を想定する
〇5.44割れからは下落期入りとみて、5.42、5.40を順次試して行く下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の9月25日は概ね5.47円から5.35円の取引レンジ、26日早朝の終値は5.46円で先週末終値5.45円からは0.01円の円安リラ高だった。
ドル/トルコリラにおける一時的なドル高リラ安を反映して深夜に一時5.35円へ急落する場面がみられたものの早々に元の水準へ切り返している。8月24日のトルコ中銀による超大幅利上げ後にリラが急騰してから揺れ返しのリラ安基調へと進んでからは、一時的な異常値としての高値や安値がみられるものの早々に元の水準へ押し返されており、取引中心値は5.47円、中心的な取引レンジは5.43円から5.52円で推移している。
8月25日以降はドル/トルコリラにおいてリラ安基調、ドル円は年初来高値を徐々に切り上げる上昇基調を継続しており、トルコリラ円はリラ安と円安に挟まれて一時的な高安の飛び跳ねを除けば持ち合いの様相で推移している。円安を活かせない程度にリラ安も根強い。
9月25日はドル円が深夜に148.95円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新してトルコリラ円を下支えした。ドル円は9月21日のFOMCを通過した後の21日午前高値148.45円を超えて一段高しており、岸田首相の円安けん制を気にせずに徐々に149円に迫っている。日銀の金融緩和現状維持を受けての上昇であり、市場介入を警戒しつつ昨年10月21日高値151.94円を目指す流れと思われる。ドル/トルコリラが小動きならトルコリラ円の目先はドル円をやや消極的に追いかける展開で進みやすいが、ドル高リラ安が勢い付く場合は大きく下ブレしやすいと注意する。
【終値ベースで8月24日以降の安値更新、対ドルでのリラ安続く】
ドル/トルコリラの9月25日は概ね27.28リラから26.99リラの取引レンジ、26日早朝の終値は27.18リラで先週末終値の27.10リラからは0.08リラのドル高リラ安だった。
8月24日にトルコ中銀が市場予想の3倍となる7.5%利上げを決定したことで当日安値27.27リラから高値25.02リラへ急伸したものの、高インフレとトルコ経済のファンダメンタルズ悪化傾向は解消しないとしてリラの急伸は1日限りとなり、その後はリラ安の揺れ返しが続き、9月22日には27.37リラを付けて8月24日安値及び8月4日につけたこれまでの史上最安値27.34リラを割り込んで取引時間中の史上最安値を更新した。
9月25日は取引時間中の最安値更新には至らなかったものの終値としては8月24日以降の安値を更新、これまでの終値ベースにおける史上最安値だった8月22日終値27.19リラに迫っている。
【トルコ中銀 リラ保護預金の最低金利を撤廃】
9月25日にトルコ中銀はリラ預金の為替差損を補填する保護預金制度(KKM)における最低金利を撤廃した。これまでは政策金利が適用されていたが今回の決定により銀行は政策金利を下回る金利を設定することができるようになった。
2021年12月のリラ暴落に際して、トルコ中銀と財務省はリラ建て預金における為替差損を補填する保護預金制度(KKM)を導入して外貨預金を抑制してリラ預金への流入を促すことでリラ暴落をいったんストップさせた。しかし効果は一時的なものにとどまり、2022年の年間を通してリラ安が進行したことにより、為替差損の補填規模が膨張して財政を圧迫させてきた。
エルカン新総裁は保護預金制度の段階的縮小方針を発表して8月20日から預金規模の縮小に着手したが、今回の決定がさらに保護預金から通常預金ないし外貨預金への流出を促すものになると思われる。KKM口座は凡そ1170億ドル(3兆1000億リラ)となり銀行預金全体の凡そ4分の1を占め、中銀は為替差損の補填として今年6月と7月に凡そ3000億リラ(110億ドル)を支払ったとされる。
【政策金利30%到達でもリラ売りは収まらず】
9月21日にトルコ中銀は市場予想通りに5.0%の追加利上げを決定して政策金利を30%とした。エルドアン大統領再選後に就任した元ウォール街銀行家のエルカン総裁体制に入ってから政策金利は8.5%から30%まで毎回合連続で引き上げられてきたが、トルコの8月消費者物価指数は全体の前年比が58.94%で7月の47.83%から上昇、コア指数の前年比は64.8%で7月の56.1%から加速しており、実質的に大幅なマイナス金利状態は解消されていない。トルコ中銀は今後もインフレ抑制のための利上げを続ける姿勢を示しているが、果たして40%や50%まで政策金利を引き上げられるのか、「高金利は悪」としてきたエルドアン大統領が耐えられるのか、市場は疑問に思っているから追加利上げとインフレ抑制を求めて催促的なリラ売りが優勢となっている。
5月後半から7月序盤にかけての暴落的なリラ安は落ち着いているものの、史上最安値更新が繰り返されれば市場のタガが外れてリラ安が再び暴落商状に陥るケースもあり得ると警戒したい。
トルコの9月消費者物価指数の発表は10月3日、次回トルコ中銀MPC(金融政策委員会)は10月26日に予定されている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、9月22日の日銀会合後にドル円が反騰したことにより25日朝時点では21日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして26日午前から28日午前にかけての間への上昇を想定した。9月25日深夜の一時的な下落を除いてややジリ高基調での推移を続けており、26日午前も5.46円を上回っているのでまだ上昇余地ありとするが、連続的に5.44円を割り込む場合は弱気サイクル入りとして26日夜から28日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では21日深夜安値からの反発により遅行スパンが好転して先行スパンへ潜り込んでいるので遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを突破する場合は上昇が勢い付く可能性があるとみる。ただし、先行スパンから連続的に転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は25日深夜の上昇時に70ポイントに到達sてから50ポイント台へ低下した。50ポイントを一時的に割り込んでも回復するうちは60ポイント超えからの上昇再開余地ありとするが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後を試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.44円を下値支持線、5.48円を上値抵抗線とする。
(2)5.44円を上回るうちは5.48円超えから5.50円を目指す上昇を想定する。5.50円前後は反落警戒とするが、5.46円を上回っての推移なら27日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)5.44円割れからは下落期入りとみて5.42円、5.40円を順次試して行く下落を想定する。5.42円以下は反騰注意とするが、5.44円以下での推移なら27日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9月28日
16:00 9月 経済信頼感指数 (8月 94.1)
20:30 週次 外貨準備高 9月22日時点 グロス (9月15日時点 800.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 9月22日時点 ネット (9月15日時点 175.9億ドル)
9月29日
16:00 8月 貿易収支 (7月 -122.2億ドル、予想 -88.8億ドル)
10月02日
16:00 9月 イスタンブール製造業PMI (8月 49)
10月03日
16:00 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 9.09%)
16:00 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 58.94%)
16:00 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 5.89%)
16:00 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 49.41%)
注:ポイント要約は編集部
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Edited by:山中 康司
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トルコリラ円レポート月曜版(23/9/25)
実際のレンジは、安値が5.34レベル、高値が5.50レベルと、予想よりもやや上値が重たい展開となりました。
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