ドル円見通し 米長期債利回り上昇で年初来高値更新、岸田首相の円安けん制も効果なし
〇ドル円、米長期債利回りの上昇を見て、9/25深夜148.95を付けて149円に迫り、年初来高値更新
〇市場介入を警戒しつつも、昨年10/21高値151.94を試す流れで進んでいる印象
〇岸田首相の円安けん制発言は効果見られず、日銀首脳は緩和継続を改めて示唆
〇米長期債利回りは総じて上昇、10年債は2007年10月以来の高水準、米株価は反発
〇149円突破から上昇が勢い付く場合は、149円台中盤(149.35から149.65)への上昇を想定する
〇148.30割れからはいったん下げに入るとみて、148円前後試しを想定する
【概況】
ドル円は9月25日深夜に148.95円を付けて149円に迫り1月16日安値127.22円以降の高値を更新し、昨年10月21日高値151.94円直後の10月25日以来の高値水準に達した。
ドル円は9月21日未明の米FOMCと22日の日銀金融政策決定会合を通過しながら乱高下となり、FOMC直前安値147.46円からFOMC後の上昇で21日午前高値148.45円へ上昇し、21日深夜にいったん147.31円まで反動安に見舞われたものの、22日に日銀が金融緩和政策継続を決定したことで21日午前高値に迫った。
9月25日は午前に148.47円を付けて21日午前高値を超えて年初来高値更新となり、午後は上げ渋りの小動きだったものの米長期債利回りの上昇を見て午前高値を超えてからはじわじわと高値更新を繰り返し、深夜には148.95円へ一段高した。岸田首相の円安けん制発言があったものの効果は見られず、市場介入を警戒しつつも昨年10月21日高値151.94円を試す流れで進んでいる印象だ。
【岸田首相の円安けん制発言は効果見えず、日銀首脳は緩和継続を改めて示唆】
岸田首相は25日の官邸取材での円安関連質問に対し、「ファンダメンタルズを反映し安定的に推移することが重要」、「過度な変動は望ましくない」などと円安をけん制した。先週は国連出席のために米国入りしていたところで円安けん制への発言を行っており、首相による円安けん制が繰り返されている状況だが、市場はさほど気にしていないようだ。
9月25日は日銀の植田総裁が大阪での講演で「企業の賃金・価格設定行動の一部に変化は見られ始めたが不確実性は極めて大きい」、「賃金と物価の好循環が実現するか正念場」とし、2%の物価目標の実現については「持続的な達成が見通せたら金融政策を変更する可能性が出てくる。非常に大変な仕事になる」と述べたものの実現に対しては「まだ距離がある」と述べている。円安についても「為替相場の動きがどのように影響を及ぼすのか常に注意して見ていく」と言及したが、円安けん制への強いトーンは見られなかった。
日銀の内田副総裁も25日に「持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、粘り強く金融緩和を継続する必要がある」と述べており、9月22日の日銀金融政策決定会合における金融緩和政策の現状維持を踏まえて、マイナス金利解除等の政策正常化へ向けて日銀が前のめりとなっている印象は大きく後退している。
ドル円が149円に迫ったことを踏まえれば、市場は政府・日銀による円安阻止へ向けた強固な意識があるのか、円安容認の限界はどの程度なのかを慎重に試している印象だ。
【米10年債利回りは2007年10月以来の高水準へ一段高、ダウは5日ぶり小反発】
9月25日の米長期債利回りは総じて上昇した。9月21日未明のFOMCが年内あと1回の利上げ余地と利上げ状態の長期化を示唆したことに加え、米議会予算審議の先行き不透明感と政府機関一時閉鎖への懸念から債券売り・利回り上昇が進んでいる。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.10%上昇の4.533%で終了したが、一時は4.54%台をつけて2007年10月以来16年ぶり高水準とした。
30年債利回りは先週末比0.12%上昇の4.65%となり、一時は4.67%をつけて2011年4月以来の最高水準とした。
利上げに敏感な2年債利回りは9月21日に一時5.20%まで上昇してか22日へ反落していたが、週明けは上昇再開となり先週末比0.02%上昇の5.13%となった。10年債や30年債ほどの勢いは見られないが上昇基調は継続しているようだ。
一方でNYダウは先週末まで4営業日続落していたが25日は先週末比43.04ドル高と小幅ながら5日ぶりに反発、ナスダック総合指数も59.51ポイント高で4日ぶりに反発した。いずれも長期金利上昇を嫌いながらも目先の売り一服による買い戻し優勢で反発したと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は9月21日午前高値148.45円から21日深夜安値147.31円まで反落したところから一段高へ進んできた。21日午前高値を基準として目先の高値形成期は26日午前から28日午前にかけての間と想定されるので、市場介入への警戒感を持ちながらも149円台到達を試しやすい局面と思われる。ただし、149円到達後はそのまま上昇が勢い付く可能性がある一方で高値警戒感からいったん仕切り直しの下落期に入る可能性もあると注意し、148.30円を割り込む場合は26日夜から28日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況が維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。26本基準線割れを弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみるが、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は9月25日深夜に80ポイントへ迫ってから60ポイント台へ反落しているものの、50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとし、70ポイント超えからは再び80ポイントを試すとみる。ただし相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とし、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.30円を下値支持線、149.00円を上値抵抗線とする。
(2)148.30円以上での推移中は一段高余地ありとみる。149円突破から上昇が勢い付く場合は149円台中盤(149.35円から149.65円)への上昇を想定する。149.50円以上は反落警戒とするが、148.50円以上での推移か、直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは27日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)148.30円割れからはいったん下げに入るとみて148円前後試しを想定する。148円以下は反騰注意とするが、148.30円以下での推移なら27日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
9/26(火)
14:00 (日) 日銀、基調的なインフレ率を捕捉するための指標
16:00 (欧) レーンECB理事、講演
22:00 (米) 7月 FHFA住宅価格指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.4%)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -0.3%)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数・年率換算 (7月 71.4万件、予想 70.0万件)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 4.4%、予想 -2.2%)
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (8月 106.1、予想 105.5)
23:00 (米) 9月 リッチモンド連銀製造業指数 (8月 -7、予想 -7)
26:30 (米) ボウマンFRB理事、イベント挨拶
9/27(水)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:30 (豪) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 4.9%、予想 5.2%)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI・改定値 (速報 114.5)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI・改定値 (速報 107.6)
15:00 (独) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -25.5、予想 -26.0)
21:30 (米) 8月 耐久財受注 前月比 (7月 -5.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 8月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (7月 0.5%、予想 0.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年物変動利付債入札
26:00 (米) 財務省5年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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