トルコリラ円見通し 予想の3倍利上げによる急騰幅の凡そ6割を削る(23/8/28)

トルコリラ円の8月25日は概ね5.66円から5.49円の取引レンジ、26日早朝の終値は5.51円で前日終値の5.65円からは0.14円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 予想の3倍利上げによる急騰幅の凡そ6割を削る(23/8/28)

予想の3倍利上げによる急騰幅の凡そ6割を削る

〇トルコ円、予想比3倍規模の大幅利上げからの暴騰商状落ち着き、8/26早朝は5.50近辺試す横ばい推移
〇8/24安値5.29から高値5.77までの上昇幅0.48に対し8/25安値5.49までの下落幅0.28で凡そ58%解消
〇対ドル、リラ急騰一巡し上昇幅の3分の2を解消、8/26早朝終値は26.55
〇トルコ中銀、インフレ抑制へ向けた追加利上げ姿勢を今回も維持
〇5.55を下回るか一時的に超えても維持できない内は一段安余地あり、5.49割れから5.45前後の下落想定
〇5.55から5.60にかけての水準は戻り売り有利、5.60超える場合は上昇再開とみて5.65前後の上昇想定

【概況】

トルコリラ円の8月25日は概ね5.66円から5.49円の取引レンジ、26日早朝の終値は5.51円で前日終値の5.65円からは0.14円の円高リラ安だった。
8月24日夜にトルコ中銀が政策金利を現行の17.5%から7.5%引き上げて25.0%とし、市場予想の2.5%引き上げに対して予想の3倍規模の超大幅利上げを決定したことで強烈なサプライズとなり、トルコリラ円は利上げ前の5.34円近辺から5.77円へ急伸した。その後に5.61円まで下げたところも買われて25日未明には5.73円へ戻したが、パニック的な買い戻しが一巡したことで暴騰商状は徐々に落ち着き、25日夕刻に5.61円を割り込んだあたりから戻り売り優勢となり5.50円へ下落、26日早朝にかけては繰り返し5.50円近辺を試す横ばい推移となった。
8月24日の安値5.29円から高値5.77円までの上昇幅0.48円に対して25日安値5.49円までの下落幅は0.28円で凡そ58%を解消している。

【対ドルでのリラ急騰一巡、上昇幅の3分の2を解消】

ドル/トルコリラの8月25日は概ね26.56リラから25.56リラの取引レンジ、26日早朝の終値は26.55リラで前日終値の25.78リラからは0.77リラのドル高リラ安だった。
8月24日にトルコ中銀が市場予想の3倍となる7.5%の追加利上げで政策金利を25%としたことをサプライズとしてリラ買いが殺到し、発表前の27リラ近辺から25.02リラへ急伸、狼狽的なドル売りリラ買いが落ち着いてからは上昇幅を削っていたが、25日もリラ買い一巡により夕刻には26.56リラへ反落し、その後も安値圏での推移となった。
8月24日は当日安値27.27リラから高値25.02リラまで2.25リラのドル安リラ高であり、6月後半からのリラ安を数時間で解消する急騰だったが、25日安値26.56リラまで1.54リラのドル高リラ安であり、24日の急騰幅に対して凡そ3分の2強(68%)を解消している。

【トルコ中銀 利上げ幅は市場予想の3倍】

【トルコ中銀 利上げ幅は市場予想の3倍】

トルコ中銀は8月24日の金融政策委員会で政策金利の週間レポレートを7.5%引き上げて25.0%とした。エルドアン大統領再選後に任命されたエルカン総裁体制に入ってから6月22日に8.5%から15.0%へ、7月20日に17.5%へ連続利上げしてきたが、6月の利上げは市場予想の20%を大幅に下回って失望を招き、エルドアン大統領再選をきっかけとした暴落が一服していたところからさらに史上最安値を更新するきっかけとなった。
7月の利上げでは市場予想の20%に届かなかったものの、インフレ抑制へ向けた追加利上げ姿勢を強く示したことで利上げ決定後にリラ安はやや落ち着いた。今回は市場予想をの3倍の利上げ幅を決定したことで市場にショックを与えたが、過去2回の利上げに対する市場の反応を踏まえてより強い姿勢を示すことを狙ったのだろうと思われる。

トルコ中銀はインフレ抑制へ向けた追加利上げ姿勢を今回も維持しており、ユルマズ副大統領は9月に「中期プログラム」を発表して向こう3年間のマクロ予測を示すとされ、シムセク財務相は9月19日にゴールドマン・サックス本社で投資家向けプレゼンをするという。財務省は7月の増税ラッシュで財政赤字縮小に着手し、トルコ中銀は為替市場の介入を止めて外貨準備高増加を進めており、リラの安定による貿易収支および経常収支の改善を実現してゆけば、海外投資家の見方もポジティブなものに変わるかもしれない。
しかし、高インフレ進行中に連続利下げを強行してリラ暴落を招いたエルドアン大統領は再選後の利上げについて圧力をかけていないものの、「高金利は悪」という根本認識は変わっていないとされるため、海外から見た経済政策の正常化が相当程度に継続してゆく保障が欲しいところだ。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月23日午前序盤に弱気転換目安とした5.34円を割り込んだために21日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして24日午前から28日午前にかけての間への下落を想定したが、トルコ中銀の超大幅利上げにより急伸したために25日午前時点では24日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は24日夜高値を含み25日の日中から29日未明にかけての間とし、暴騰後の乱高下に注意して5.55円を割り込む場合は弱気サイクル入りとした。
8月25日夕刻への反落で5.55円を割り込んだため、24日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして29日午前から31日午前にかけての間への下落を想定する。乱高下が続く可能性もあるので5.60円超えからは強気サイクル入りの可能性ありとみて5.65円前後への上昇を想定するが、5.60円以下での推移中は一段安余地ありとみる。

60分足の一目均衡表では8月25日夕刻へ急落してから横ばい推移となったために遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。遅行スパン悪化中は一段安余地ありとし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜いた状況を維持し始める場合は上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月24日夜の急騰で80ポイント台後半へ上昇したが、25日の反落で40ポイント近辺まで急低下し、その後も50ポイント以下で推移している。50ポイントを下回るか一時的に超えても維持できないうちは20ポイント台への一段安余地ありとするが、55ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移に入る場合は上昇再開とみて60ポイント台後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.49円を下値支持線、5.55円を上値抵抗線とする。
(2)5.55円を下回るか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、5.49円割れからは5.45円前後への下落を想定する。5.45円以下は反騰注意とするが、5.55円を下回っての推移なら29日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.55円から5.60円にかけての水準は戻り売り有利とみるが、5.60円を超える場合は上昇再開とみて5.65円前後への上昇を想定し、5.60円に到達した後も5.55円以上での推移なら29日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月29日
 16:00 7月 貿易収支 (6月 -51.6億ドル)
 16:00 8月 経済信頼感指数 (7月 99.3)
8月31日
 16:00 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.3%)
 16:00 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 4.0%)
9月1日
 16:00 8月 イスタンブール製造業PMI (7月 49.9)
9月4日
 16:00 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 9.49%)
 16:00 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 47.83%)
 16:00 8月 コアCPI 前月比 (7月 9.6%)
 16:00 8月 コアCPI 前年同月比 (7月 56.1%)
 16:00 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 8.23%)
 16:00 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 44.5%)


注:ポイント要約は編集部

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