トルコリラ円見通し 予想の3倍利上げによるサプライズでリラ急伸
〇トルコリラ円、8/25トルコ中銀の予想外の超大幅利上げにより、5.34近辺から5.77へ急伸
〇一旦5.61まで下げてから5.73へ戻したものの高値更新へは進めず、狼狽買い一巡でその後は落ち着く
〇対ドル、政策金利発表直後に27.00近辺から25.02へ急伸、6月後半からの下落幅を一挙に解消
〇その後は狼狽的なドル売りリラ買いが落ち着き、8/25日午前は25.95から25.65のレンジ
〇トルコ中銀、利上げ幅は市場予想の3倍の7.5%引き上げで25.0%とする
〇5.60を上回るうちは一段高余地ありとし、5.77超えからは5.80への上昇を想定する
〇5.60を割り込む場合は、5.55から5.50にかけての水準を試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の8月24日は概ね5.77円から5.28円の取引レンジ、25日早朝の終値は5.65円で前日終値の5.32円から0.33円の円安リラ高となった。
8月24日夜にトルコ中銀が政策金利の週間レポレートを17.5%から7.5%引き上げて25.0%としたが、市場予想の2.5%引き上げによる20%を遥かに超える予想外の超大幅利上げとなったため、市場は強気サプライズによるリラ買いで暴騰商状となった。
ドル円が欧米のPMI悪化により23日によるに急落して24日未明安値144.54円まで下げてから反騰入りし、25日午前序盤には146円を超える円安となったこともトルコリラ円にはプラスだったが、ドル円の動向云々を超えるサプライズ的なリラの急伸だった。
トルコリラ円は超大幅利上げ決定後に直前の5.34円近辺から5.77円へ急伸、いったん5.61円まで下げてから5.73円へ戻したものの高値更新へは進めず、狼狽買いの一巡でその後は落ち着いているが、当面はエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落が一巡した印象であり、急騰後の揺れ返しで下落したところもまだ買われやすいのではないかと思われる。
今夜はジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長やラガルドECB総裁講演があり、会合には日銀の植田総裁も参加するためにそれらの発言内容次第ではドル円が波乱する可能性もあるため、急騰が落ち着いた後のトルコリラ円は再びドル円の動向を追いかけるのではないかと考える。
【対ドルでリラ急騰、6月後半からの下落幅を一挙に解消】
ドル/トルコリラの8月24日は概ね27.27リラから25.02リラの取引レンジ、25日早朝の終値は25.78リラで前日終値の27.18リラからは1.30リラのドル安リラ高だった。
トルコ中銀が予想された利上げ幅の3倍の利上げに踏み込んだことでサプライズとなり、発表前の27リラ近辺から25.02リラへ急伸、その後は狼狽的なドル売りリラ買いが落ち着いてやや持ち直しており、25日午前は25.95リラから25.65リラのレンジでやや戻しているが、6月後半からのリラ下落幅を一挙に解消するリラの暴騰となった。
【トルコ中銀 利上げ幅は市場予想の3倍】
トルコ中銀は8月24日の金融政策委員会で政策金利の週間レポレートを7.5%引き上げて25.0%とした。エルドアン大統領再選後に任命されたエルカン総裁体制に入ってから6月22日に8.5%から15.0%へ、7月20日に17.5%へ連続利上げして今後の利上げを継続する姿勢を示していたため、市場は会合毎に2.5%利上げを継続するとみて20.0%への利上げを予想、予想レンジは18.0%から20.5%だった。
今回の利上げ幅は市場予想の3倍であり、利上げを好まないエルドアン大統領が当面の利上げを容認しても「高金利は悪」という基本姿勢は変わっていないことから、20%への引上げをためらうか、20%利上げを決定した後は小幅な利上げにとどめてゆくことも懸念されていた。今回の超大幅利上げはそうした市場の懸念を一挙に払拭するインパクトを与えることを目的として決断されたのだろうと思われる。
トルコ中銀は声明で「物価上昇は当面続くものの金融引き締めにより2024年はインフレ抑制を期待できる」とした。しかし、7月のトルコCPI(消費者物価指数)は前年比47.83%上昇で9か月振りに伸びが加速しており、7月の増税ラッシュによる企業コストの上昇もこれから反映されるためにまだしばらくはインフレ抑制には進めないのではないかと思われる。またCPI上昇率と比較すれば今回の超大幅利上げでも実質はマイナス金利であり、インフレ抑制のためにはさらなる利上げが必要と思われる。
金融大手のJPモルガンはトルコ中銀の利上げ発表後に、年末まで政策決定会合毎に2.5%ずつの追加利上げが行われて年末には35%(従来予想は30%)へ引き上げられるとの見通しを示した。年末のインフレ率については従来の57.0%から62.0%へ引き上げ、来年5月には70%に達する可能性があるとした。
トルコ中銀のエルカン総裁がエルドアン大統領の圧力に負けずに30%を超える水準まで引き上げることができるのかどうか、24日のリラ急伸ではその可能性が反映されたわけだが、今後の中銀や財務相の動き、エルドアン大統領の金利に関する発言などにより利上げの先行きに対する思惑も交錯してゆくのだろうと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月23日午前に弱気転換目安とした5.34円を割り込んだために21日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして24日午前から28日午前にかけての間への下落を想定した。
8月24日午前時点では前回ボトムから3日を経過したので5.33円超えからは強気転換注意としたが、トルコ中銀の超大幅利上げにより暴騰的な急伸となったため、24日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は24日夜高値を含み25日の日中から29日未明にかけての間と想定するが、暴騰後の乱高下に注意して5.55円を割り込む場合は弱気サイクル入りの可能性ありとみて5.40円台後半への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月24日夜の急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化へ向かう可能性があると注意し、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落継続とみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月24日夜の急騰で80ポイント台後半へ上昇してから70ポイントを割り込んでいる。60ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は下落期入りを疑い50ポイント割れへの低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.60円を下値支持線、5.77円を上値抵抗線とする。
(2)5.60円を上回るうちは一段高余地ありとし、5.77円超えからは5.80円への上昇を想定する。5.80円前後は反落警戒とするが、5.60円を上回っての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.60円を割り込む場合は5.55円から5.50円にかけての水準を試す下落を想定する。5.50円前後は買い拾われやすいとみるが、暴騰一巡後の揺れ返しにも注意し、5.55円を割り込んだ後も5.60円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8月25日
16:00 8月 製造業信頼感指数 (7月 106.8)
16:00 8月 設備稼働率 (7月 77.1%)
17:00 7月 海外観光客数 前年同月比 (6月 11.35%)
8月29日
16:00 7月 貿易収支 (6月 -51.6億ドル)
16:00 8月 経済信頼感指数 (7月 99.3)
8月31日
16:00 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.3%)
16:00 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 4.0%)
注:ポイント要約は編集部
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