ドル円の146円台到達を追いかけて2連騰
〇トルコ円、FOMC議事要旨公開後のドル円一段高を受け、5.41へ高値切り上げる
〇円安けん制が緩いままなら、ドル円とともにトルコ円もさらに高値試しを続けやすい状況か
〇対ドル、8/16は概ね27.09から26.81の取引レンジ、8/17早朝終値は27.04
〇8/10以降徐々に戻り高値切り下がる、きっかけ次第ではリラ安再加速か
〇8/24トルコ中銀金融政策委員会の追加利上げに注目
〇5.38を上回るうちは上昇余地ありとし、5.42超えからは5.44前後を試す上昇を想定
〇5.38割れからは弱気転換注意として5.36試しとし、5.36割れからは5.33前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の8月16日は概ね5.41円から5.37円の取引レンジ、17日早朝の終値は5.40円で前日終値の5.38円からは0.02円の円安リラ高だった。
ドル/トルコリラでは5月末から7月半ばにかけての暴落商状がやや落ち着いているものの終値ベースでは連日のように最安値を更新しておりリラの先安感は変わらないが、ドル円の変動率が勝るためにトルコリラ円はドル円の騰落を追いかけている。
ドル円は8月16日夜の米住宅着工統計や鉱工業生産が堅調な数字だったことと17日未明のFOMC議事要旨がタカ派的内容だったことによるドル全面高を背景に146円台を突破してFOMC議事要旨公開後に146.40円へ年初来高値を更新し、17日午前序盤にはさらに高値を切り上げている。昨年9月22日に市場介入が行われた時の高値145.89円を超えてきたが、円の独歩安という状況ではなく米長期債利回り上昇によるドル全面高のため、政府日銀としては円安是正のための市場介入を実施する正当性に欠けており、財務相等による円安けん制トーンも従来から踏み込んだものとなっておらず、政府日銀の円安容認限界を試しながら昨年10月21日高値151.94円を目指す可能性があると思われる。
トルコリラ円は7月18日の史上最安値5.08円と7月28日にドル円が乱高下した局面で付けた安値5.12円をダブル底としてドル円の上昇を追いかけており、8月12日早朝に5.40円を付けた後は高値更新へ進めずにいたものの、FOMC議事要旨公開後にドル円が一段高に入ったために5.41円へ高値を切り上げている。
当面は政府による円安けん制の動きでドル円が波乱含みとなりトルコリラ円も同調した乱高下となる可能性のあるところと注意するが、円安けん制が緩いままならドル円とともにトルコリラ円もさらに高値試しを続けやすい状況と思われる。また昨年9月22日の市場介入時には当日高値から安値まで5円を超える急落が発生したが、その翌日から切り返しているため、同様の介入による急落が発生した場合でもドル円とともにトルコリラ円もバーゲンハント買いされやすいと思われる。
【対ドルでは終値ベースで最安値近辺】
ドル/トルコリラの8月16日は概ね27.09リラから26.81リラの取引レンジ、17日早朝の終値は27.04リラで前日終値と変わらなかった。
為替市場全般は米経済指標が良好でFOMC議事要旨が追加利上げ姿勢を示すタカ派的内容だったことでドル全面高の様相であり、ドル/トルコリラにおいてもドル高圧力がかかっているが、他市場の影響はさほど受けずに7月後半からはジリ安でのリラ安を続けている。
8月4日に27.34リラへ取引時間中の史上最安値を更新した後は新たな安値更新を回避しているものの27リラ台前半の安値を繰り返し示現して最安値更新を試しており、終値ベースでは8月9日に26.99リラ、8月10日に27.00リラ、14日に27.01リラ、15日に27.04リラと最安値更新を繰り返し、16日も15日と同値水準とした。
8月17日午前は27.13リラから26.97リラのレンジで推移しているが、8月10日の26.54リラ以降は徐々に戻り高値が切り下がっており、きっかけ次第ではリラ安が再び加速しかねない状況と思われる。
【8月24日のトルコ中銀追加利上げを見定めたい】
エルドアン大統領は再選後の新内閣にかつて副首相や財務相として市場の信頼を得ていたシムシェク氏を財務相に起用し、トルコ中銀総裁にはウォール街の銀行家であるエルカン氏を任命した。シムシェク氏とエルカン氏はともに金融経済政策の正常化を打ち出しており、財務相は財政再建のための増税を行い、中銀総裁は8.5%だった政策金利を17.5%まで引き上げてインフレ抑制のための追加利上げ姿勢を示し、リラ安阻止のために前総裁時代に繰り返されてきた外貨準備高を取り崩して市場介入することを止めた。
観光収入の改善により6月の経常収支が20か月振りに黒字となり、財政収支も6月は黒字となり、経済政策の改革が効果を示しているようにも見えるが、インフレ率は再上昇しており、鉱工業生産は低調なままであり、今後は増税による景気減速も懸念されている。
トルコリラの暴落商状にはやや落ち着きがみられるのの史上最安値更新の流れは継続しており、8月24日のトルコ中銀金融政策委員会で市場を納得させるだけの追加利上げを決定できるか注目される。かつて通貨危機的な状況によるリラ暴落阻止のために連続利上げを決断したアーバル中銀総裁はリラ安が落ち着いたところで解任され、後任のカブジュオール総裁は大統領による「政策金利を一桁とする」との方針に基づいて連続利下げを行い新たなリラ暴落を招いた。エルカン総裁がどこまでできるのか、市場はまだ信用しきれずにいることでリラ安がじわじわと進行を続けているともいえる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月7日午前安値をサイクルボトムとして9日から10日午後にかけての間への上昇を想定してきたが、8月11日午前に一時反落してから12日早朝へ一段高したために14日午前時点では11日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして16日朝から18日朝にかけての間への上昇を想定した。
8月17日午前へ続伸しているので引き続きトップ形成中とし、8月16日午後安値を起点としてすでに新たな強気サイクル入りしている可能性も検討する。
ただし、ドル円の波乱に巻き込まれる可能性のあるところと注意し、5.36円割れからは弱気サイクル入りとして21日午後から23日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月17日午前への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上回る状況も維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。遅行スパンが一時的に悪化しても先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月17日早朝に75ポイントまで上昇してから反落しているので、50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、50ポイント割れからはいったん下げに入る可能性があるとみて40ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.38円を下値支持線、5.42円を上値抵抗線とする。
(2)5.38円を上回るうちは上昇余地ありとし、5.42円超えからは5.44円前後を試す上昇を想定する。5.44円以上は反落注意とするが、5.38円を上回っての推移なら18日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.38円割れからは弱気転換注意として5.36円試しとし、5.36円割れからは5.33円前後への下落を想定する。5.33円以下は反発注意とするが、5.38円を割り込んでの推移なら18日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8月17日
20:00 週次 外貨準備高 8月11日時点 グロス (8月4日時点 742.3億ドル)
20:00 週次 外貨準備高 8月11日時点 ネット (8月4日時点 157.2億ドル)
8月23日
16:00 8月 消費者信頼感指数 (7月 80.1)
8月24日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 17.5%)
注:ポイント要約は編集部
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