米経済指標強め、FOMC議事要旨はタカ派、円安けん制が緩く146円台に到達
〇ドル円、8/17早朝に146.40へ上昇、昨年9月の大規模市場介入時の高値145.89超える
〇昨日発表の米経済指標は概ね良好、米景気の底固さが意識されドル高基調継続
〇米10年債利回りは昨年10月以来の高水準、利上げ期間の長期化への懸念によりダウは続落
〇ドル円上昇は円の独歩安によるものではなく、米長期債利回り上昇によるドル全面高が背景
〇政府・日銀、ゆがんだ円安対応としての市場介入根拠に欠ける印象、市場は円安容認レベル試す
〇FOMC議事要旨、大半の参加者がインフレの大幅な上振れリスクを懸念、タカ派トーン維持
〇145.80を上回るうちは上昇余地ありとし、146.50超えからは146円後半、147円を試す上昇を想定
〇145.80割れからはいったん下げに入るとみて8/16午後安値145.28を試すとみる
【概況】
ドル円は8月17日早朝に146.40円へ上昇、1月16日安値127.22円以降の高値を更新、昨年9月22日に大規模市場介入が行われた時の高値145.89円を超えた。8月16日夜の米経済指標は概ね良好で7月の住宅着工件数が2か月連続プラスとなり、7月鉱工業生産指数が3か月振りに上昇、設備稼働率も予想を上回ったことで米景気の底固さが意識されてドル高基調が継続したが、17日3時に公開されたFOMC議事要旨がタカ派姿勢だったことで米10年債利回りが上昇、ユーロやポンド、豪ドル等が下落してドル全面高となり、ドル円は議事要旨公開前に146円に到達したところから高値を伸ばした。
ドル円の上昇は円の独歩安によるものではなく米長期債利回り上昇によるドル全面高を背景としているため、政府・日銀もゆがんだ円安として市場介入する根拠に欠ける印象もあり、今のところは財務官や財務相等による円安けん制のトーンは介入が近いと市場を警戒させるものにはなっておらず、市場は円安容認レベルを試していると思われる。
【米経済指標は良好、FOMC議事要旨はタカ派】
米商務省による7月の住宅着工件数(年換算)は前月比3.9%増の145万2000戸となり、市場予想の144万8000戸を上回って2か月連続のプラスとなった。先行指標の住宅着工許可件数も市場予想の146万3000戸を下回ったものの前月比0.1%増の144万2000戸と堅調な数字だった。
米FRBによる7月の鉱工業生産指数は前月比1.0%上昇となり、6月の0.8%低下から持ち直して3か月振りのプラス、7月の設備稼働率は79.3%で6月の78.6%から上昇して市場予想の79.1%を上回った。
FRB(米連邦準備制度理事会)は7月25-26日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨を公表したが、2名の参加者が金利据え置きを主張したものの、大半の参加者がインフレの「大幅な上振れリスクがある」とし、一段の金融引き締めが必要との姿勢だった。
FRBは6月のFOMCで政策金利を据え置いたが7月FOMCにおいては0.25%利上げを決定し、パウエルFRB議長は9月会合以降については指標次第で追加利上げも利上げ見送りもあり得るとした。追加利上げの可能性が残ったことで為替市場はドル高基調で推移しているところだが、今回の議事要旨でFOMCメンバーの大半がタカ派的な姿勢と受け止められたため、今後のインフレ指標次第では9月ないし11月に追加利上げされる可能性が意識されるとともに、利下げ再開時期も先送りされるのではないかとの印象が強まったようだ。
次回のFOMCは9月19-20日に開催されるが、それまでの間のインフレ指標を見ながら市場は一喜一憂しやすく、米経済指標が強めで推移すればドル高基調で進みやすいと思われる。当面は8月24-26日に開催予定の米ワイオミング州ジャクソンホール会合でのFRBメンバーによる発言が注目される。
【米10年債利回りは昨年10月以来の高水準、ダウは続落】
8月16日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%上昇の4.25%となったが、一時は4.28%をつけて昨年10月24日以来の高水準に達した。2007年以降のピークである昨年10月のる4.34%に迫る勢い。30年債利回りは0.03%上昇の4.35%。利上げに敏感な2年債利回りは0.01%上昇の4.97%で終了した。
一方で利上げ期間の長期化への懸念によりNYダウは前日比180.65ドル安と下落して8月15日の361.24ドル安からの続落となり、ナスダック総合指数は156.42ポイント安で15日の157.28ポイント安から続落して7月19日高値以降の下落基調が続いている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は8月7日午前安値141.51円を起点とした上昇基調を継続しているが、8月10日夜の米CPI発表直後に143.29円へ下げたところから一段高に入ったとして高値形成期を17日午後にかけて想定してきた。
8月15日夜の反落で145円を試してから146円台へ一段高したため、15日深夜安値ないし16日午後安値を起点として新たな上昇期に入っているとみて22日午後にかけての上昇を想定する。弱気転換は16日午後安値145.28円割れからとし、その際は23日午後にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月15日夜の反落時に遅行スパンが一時悪化したところから持ち直し、先行スパンを上回る状況を続けているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。高値警戒感も出やすいため、26本基準線割れを弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは先行スパンの上下限を試す下落を想定する。ただし、先行スパンからの転落を回避する場合はその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開と考える。
60分足の相対力指数は8月15日深夜に40ポイントまで低下してから70ポイント台へ切り返している。8月11日から15日にかけての高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられたものの、17日早朝への一段高により逆行ラインを突破している。このため50ポイント台を維持するうちは一段高余地ありとし、50ポイント割れからはいったん下げに入る可能性があるとみて40ポイント割れを試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.80円を下値支持線、146.50円近辺を上値抵抗線とする。
(2)145.80円を上回るうちは上昇余地ありとし、146.50円超えからは146円後半レベル、次いで147円を試す上昇を想定する。146.70円以上は反落警戒とするが、145.80円以上を維持しての推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)145.80円割れからはいったん下げに入るとみて8月16日午後安値145.28円を試すとみる。145.28円以下は反騰注意とするが、145.28円を割り込んでの推移が続く場合は18日から21日にかけては安値試しへ向かいやすくなるとみる。
【当面の主な予定】
8/17(木)
休場、インドネシア
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 3.26万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 3.5%、予想 3.6%)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 1.2%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 -9億ユーロ、予想 -40億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 -3億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 170.0万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 -13.5、予想 -10.0)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 -0.4%)
8/18(金)
日米韓首脳会談(キャンプデービッド)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -30、予想 -29)
08:30 (日) 7月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.3%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.1%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (6月 4.2%、予想 4.3%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.7%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -1.0%、予想 -2.1%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.8%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 -0.9%、予想 -2.2%)
18:00 (欧) 7月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (6月 5.3%、予想 5.3%)
18:00 (欧) 7月 コアHICP・改定値 前年同月比 (6月 5.5%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.2%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前年同月比 (5月 0.1%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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