緩やかなユーロドル安とユーロ円上昇
〇先週のユーロドル、週初は米金利上昇によるドル買いと伊政府による銀行課税のニュースでユーロ売り
〇週半ば、伊銀行課税の一部撤回による買い戻しと、予想より弱い米CPIでユーロ高はピークに
〇7/27以来高値をつけるも、週末に向けての米金利上昇によりユーロ売られる
〇ユーロ円、160円まで上がっても介入警戒感ないため、ドル円よりもユーロ円で買いを増やす動き
〇ユーロ円のテクニカルターゲットは大台160.00、161.38、166.49、高値目途は161.38か
〇今週は1.0875レベルをサポートに1.1010レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは週初は米金利上昇によるドル買いとイタリア政府による銀行課税のニュースでユーロ売り、週半ばはイタリアの銀行課税の一部撤回による買い戻しが入り予想よりも弱かった米国CPIでユーロ高のピークをつけました。1.1065レベルと直近のレンジを上抜け7月27日以来の高値であったものの、週末に向けての米金利上昇によりユーロ売りとなり、一週間終わってみると1.09台前半から1.10台半ばのレンジへと押し込まれる動きでした。
米国材料はドル円の週報でかきましたので、ここではにわかに飛び出たイタリアの銀行課税について最初に触れておきます。8日にイタリア政府は突然2023年に限って銀行の超過利益に対して40%の課税を行い、それを住宅ローンの支援に充てるとしました。イタリア国内の銀行はECBの利上げを受けて収益が拡大していますが、預金金利と貸出金利の差が大きい点を問題視し、その差額に対して課税するという内容でした。
しかし、この課税で銀行は純利益が20%程度減少すると試算されたことで、銀行株が急落、株式市場全体に悪影響が出たため、イタリア政府は、課税の上限は企業の総資産の0.1%を超えることはないと表明したことで株式市場は反発し、いったんイタリア金融市場は落ち着きを取り戻しました。今回の課税案は以前から出ていた話ではあったものの、導入されることは無いとの見方が多かったため、最初はサプライズになったというイメージです。
しかし事態収拾後にもイタリア首相は、金利上昇によって銀行が手にする利益は不公平な利益で金利上昇の恩恵を享受する銀行の悪しき振る舞いの結果と、右派政権らしい発言をしたため、今後も銀行に対する厳しい目は続きやすいと言えそうです。
それ以外で目立ったのはユーロ円の上昇で、ドル円では145円台で介入警戒感が出て来てもユーロ円は160円まで上がっても介入が出ることは無いことを見越して、ドル円よりもユーロ円で買いを増やす動きが見られました。このあたりのテクニカルな分析は今週のコラムで取り扱います。
ユーロドルのテクニカルはいつもの日足チャートをご覧ください。
ユーロドルは先週一時的な高値を見た際の水準は7月高値と8月安値の38.2%戻し1.1050が最初のレジスタンスと書いたように、テクニカルにはきれいな水準で上げ止まったと言えます。サポートは引き続き8月初めの安値1.0910レベルとなりますが、既にかなり近くなりましたので、テクニカルな水準として5月末安値と7月高値の61.8%押しとなる1.0879レベルを上げておきます。
今週は1.08台後半の買いと1.10台乗せの売りと引き続きユーロドルの値幅は狭くなると予想し、1.0875レベルをサポートに1.1010レベルをレジスタンスとする流れを見ておくこととします。
今週のコラム
今週はユーロ円の月足チャートを見てみます。
年初来高値を更新し、リーマンショック前の高値圏へと上げてきましたので、ここからのテクニカルなターゲットをいくつか示しておきます。
まずは節目である大台160.00、そして2022年安値からの100%フィボナッチエクスパンション161.38、2012年安値からの100%フィボナッチエクスパンション166.49となっています。160円の大台はいかにもターゲットとされやすい水準ですから到達必至だと見ていますが、その流れでの高値目途として、上記ターゲットの161.38は良いところではないかと考えています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月14日(月)
15:00 ドイツ7月WPI
8月15日(火)
15:00 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
8月16日(水)
15:00 英国7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
8月17日(木)
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
8月18日(金)
08:01 英国8月GFK消費者信頼感
15:00 英国7月小売売上高
18:00 ユーロ圏7月CPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート
前週のユーロレンジ
先週の概況
8月7日(月)
週明けのユーロドルは欧州市場前場までは米金利上昇の動きからユーロ売りが先行していましたが、その後はドル円だけでなくユーロ円の買いも強まったことからユーロドルは行って来いでの引けとなりました。
8月8日(火)
ユーロドルは欧州市場が始まるまではユーロ売り先行後の買い戻しとなっていましたが、欧州市場に入りイタリア政府が銀行課税を承認したことをきっかけに欧州株安、ユーロ安の動きとなりました。NY市場前場に1.0929レベルまで売られ引けにかけては若干戻しました。
8月9日(水)
ユーロドルは東京時間は全般的なドル売りの動きからユーロ買いが先行していましたが、イタリア政府が火曜に発表した銀行課税を一部撤回した動きを受けて、欧州株上昇、ユーロ高の動きとなりました。ユーロは対ドルだけでなく対円でも上昇し、157.90レベルまで上昇後やや押して引けました。
8月10日(木)
ユーロドルは東京市場ではドル円の買いとともにユーロ円でも買いが広がったことでユーロドルも上昇、米国CPI直後もドル売りの動きで一時1.1064レベルの高値をつけました。しかし、その後は米金利上昇によるドル買いの動きから東京朝方の水準へと押して引ける動きとなりました。
8月11日(金)
ユーロドルはNY市場まではもみあいを続け動きが鈍い流れが続きましたが、NY市場に入り予想よりも強いPPIを受けたドル買いの動きから1.0943レベルまで下押しし、安値引けの週末クローズとなりました。
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