ドル円 円安地合いも警戒水域へと上昇中(週報8月第2週)

先週のドル円は、円独歩安の動きが強まった一週間だったと言えます。

ドル円 円安地合いも警戒水域へと上昇中(週報8月第2週)

円安地合いも警戒水域へと上昇中

〇先週のドル円、米金利上昇の動きから日米金利差拡大が改めて意識されてのドル買いが強まる
〇クロス円でもユーロ円が年初来高値を更新
〇景気後退リスクはかなり遠のいたという見方が多く、株式市場は強い地合いを維持
〇日米金利差と株式市場のリスクオンが円安相場を支える材料
〇市場の利上げ予想、来年1月まで金利維持、3月時点で現状維持と0.25%利下げが半々、5月時点で緩和へ
〇昨年9月は145.90レベルで最初の介入実施、145円台後半での当局の発言には要注意
〇今回はけん制発言なしの不意打ち介入も考えられ、その水準は146円台と予想
〇今週は143.60レベルをサポートに145.60レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は一週間を振り返ると、前週の雇用統計後に下げた安値で始まり、米国CPIは予想よりも弱かったものの改めて米金利上昇の動きから日米金利差拡大が意識されてのドル買いが強まり、またクロス円でもユーロ円が年初来高値を更新するなど、円独歩安の動きが強まった一週間だったと言えます。

先週のイベントとしては米国CPIがありますが、総合CPIが年率で3.0%から3.3%に上がるというコンセンサスに対して結果は3.2%、同様にコアCPIも4.8%に対して4.7%となりました。評価は発表直後と落ち着いてからでは異なりましたが、FRBのターゲットとなる2.0%よりは依然として高いことは事実です。ただ、現在の政策金利5.25〜5.5%を今後も継続していけばおそらくはターゲットまで下がるというのが市場参加者の見方です。

FF先物の取引状況から計算される利上げ織り込み度では来年1月まで現在の金利が維持され、3月時点で現状維持と0.25%利下げが半々、5月時点では緩和に転じているという時期感となっていますので、現状維持でインフレ率が収まるまであと半年程度ということになります。

以前は引き締めによるオーバーキルで景気後退というリスクが考えられていましたが、現状は景気後退リスクはかなり遠のいたという見方が多く、株式市場は強い地合いを維持しています。

まだ先のことですから現時点での市場参加者の見通しではあるものの、一年前から言われていた長短金利逆転は必ずリセッションに繋がるという経験則も今回はうまく逃げ切れるのではないかという状況です。

こうしたことを考えると、日米金利差と株式市場のリスクオンが円安相場を支える材料となり、あとは介入が出るのかどうかだけが短期的に気がかりな材料となってきます。昨年9月の最初の介入が出た水準が145.90レベルであったことを考えると、既に警戒水域に入ってきていることは間違いありませんが、今回はひょっとしたらけん制発言なしに不意打ちで介入ということもあるかもしれません。その場合の水準は146円台だと予想しますが、145円台後半での当局の発言には引き続き要注意ではあります。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

ピンクのラインで示したレジスタンスラインとサポートラインとで構成されるトライアングルを上抜けてきたことで、現状は抜けたレジスタンスがサポートとなりますので、143円台半ばがサポートとなります。また年初来高値を更新中で昨年11月以来の高値圏となりますが、直近の7月末安値からの上昇N波動を考えると、フィボナッチエクスパンションのターゲット(ピンクの各水準)は145.10、146.08、147.33となることがわかります。

ただ、最初のターゲットは既に到達済みで、次のターゲットは146円台となかなか悩ましい水準に位置しています。既に先週だけで3円50銭円安に進んでいますので、今週のところは145円台半ばがいったん止まりやすい水準であると見ています。今週は143.60レベルをサポートに145.60レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

円安地合いも警戒水域へと上昇中

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月14日(月)
15:00 ドイツ7月WPI

8月15日(火)
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値 ☆
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
11:00 中国7月鉱工業生産、小売売上高
15:00 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
21:30 米国8月NY連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国7月小売売上高、輸入物価
23:00 米国8月NAHB住宅指数 ☆
23:00 米国6月企業在庫
24:00 ミネアポリス連銀総裁講演 ☆

8月16日(水)
11:00 NZ中銀政策金利発表 ☆
15:00 英国7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
20:00 南ア6月小売売上高
21:30 米国7月住宅着工 ☆・建築許可
22:15 米国7月鉱工業生産、設備稼働率
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表 ☆

8月17日(木)
07:45 NZ4〜6月期PPI
08:50 本邦7月貿易収支(通関)
10:30 豪州7月失業率
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
21:30 米国8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 米国7月景気先行指数

8月18日(金)
08:01 英国8月GFK消費者信頼感
08:30 本邦7月CPI ☆
15:00 英国7月小売売上高
18:00 ユーロ圏7月CPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
**:** 日米韓首脳会談 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月7日(月)
週明けのドル円は東京朝方に仲値に向けてドル売りオーダーが出たこと、欧州市場昼以降にそれまで上げていた米金利が下げる動きが見られたことの2回押しが入った以外は終日じり高の展開をたどりました。前週金曜雇用統計後の下げに対して調整の買い戻しが入った動きでした。

8月8日(火)
ドル円は米金利低下の動きにも関わらず東京朝方からドル買いが先行、仲値に向けてのドル買いも出た模様で143円台乗せとなりました。その後は仕掛けのドル買いも加わって143円台前半で底堅い動きとなっていましたが、NY引け間際に143.49レベルまで上昇し、そのまま高値圏での引けとなりました。

8月9日(水)
ドル円は東京時間は前日NY市場の上昇分を利食い売りが出て下げる動きとなりましたが、143.00まで、下がったところは押し目買いというスタンスは変わりませんでした。海外市場に移ってからは改めて円売りの動きとなり、143.75レベルまで上昇後に高値引けとなりました。

8月10日(木)
前日の流れを受けて東京市場ではドル買いが先行しましたが欧州市場序盤以降は米金利低下とともにドル売り、米国CPIを前にした調整が入りました。米国CPIは予想よりも若干弱く初動はドル売りとなり143.29レベルまで押したものの、その後は一転長期金利上昇の動きとともにドル買いが強まり144.82レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

8月11日(金)
東京市場が休場となった金曜は前日NYでの上昇に対する利食いが見られ、NY市場朝方には144.42レベルへと水準を下げていましたが、動き自体は鈍く動意薄の流れがNY市場まで続きました。NY市場では前日のCPIとは逆にPPIが予想よりも強かったことから米金利が一段と上昇し、ドル円も一時145.00レベルの高値をつけ、高値圏でもみあいのまま引けました。

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