基本はドル高、ただ介入警戒が上値を抑制も
〇先週のドル円、週間安値示現後週末にかけて右肩上がり、145円をワンタッチし144.95-00で越週
〇先週発表の米消費者物価指数は予想以下、米生産者物価指数は逆に予想以上となり、結果相殺
〇連銀総裁ら、消極的ではあるものの追加利上げに意欲を見せる、ドルの支援要因に
〇年初来高値145.07がすでに現実的な次の上値メドとして意識される、円買い実弾介入に注意
〇基本的なリスクはドル高だが、円買い実弾介入によるドル急反落の可能性も
〇今週は、8月NY連銀製造業景況指数、7月小売売上高、7月FOMC議事録要旨公開の発表予定
〇各国金融決定会合はまだ先、来週末予定のジャクソンホール会合に注目集まる
〇ドル円予想レンジは142.50-146.50、ドル高・円安方向は年初来高値145.07円が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は、144円レベルをめぐる攻防にまずは注目、割り込むと143円前後が意識されそう
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが堅調裡。週末には一時145円をワンタッチ、年初来高値145.07円も視界内に捉えられてきた。
前週末は、テレビ出演した経済同友会の新浪代表幹事が、「今後は金利のある経済が普通になる」と述べていたようだ。一方、米国ではボウマンFRB理事が「追加利上げが必要になりそう」との認識を示したと伝えられている。
そうした状況下、ドル/円は141.70円レベルで寄り付いたのち、早い段階で週間安値の141.52円を示現。以降、週末にかけて右肩上がりの展開となり、おおむね「寄り付き安・大引け高」の値動きをたどっていた。途中ドルは3日に記録した戻り高値の143.89円を超えただけでなく、週末にかけてはさらに上値を試す展開に。6月30日以来となる145円をワンタッチし、週末NYはそのまま高値圏を維持し144.95-00円で越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米金融政策」と「日中関係」について。
前者は、注視されていた10日発表の米消費者物価指数が予想を下回る内容。市場で失望を呼んだものの、翌日発表された米生産者物価指数は逆に予想を上回ったことで結果相殺。ただ、アトランタ連銀総裁から「FRBは高すぎるインフレ率を目標の2%まで引き下げるために懸命に取り組む」、フィラデルフィア連銀総裁は「FRBはインフレ抑制に向け前進している」、サンフランシスコ連銀総裁「インフレ抑制に向けてまだやるべき仕事がある」−−などといった発言が相次いだことがドルの支援要因に。いずれも具体的な金融政策には触れなかったが、消極的ではあるものの追加利上げに意欲を見せたと捉える向きが多かったようだ。
対して後者は、米紙が「中国軍ハッカー、日本の防衛省の最高機密網に侵入していた」と報じ物議を醸す。これについて、松野官房長官は「中国ハッキングによる情報漏えいはない」と発言したものの、システム進入の有無については言及しておらず、危機管理の観点からの非難も少なくなかった。そうしたなか、自民党の麻生氏が訪台。現地で台湾海峡の平和と安定には強い抑止力を機能させる必要があり、そのために日米や台湾には「戦う覚悟」が求められていると主張したことも話題に。中国サイドから猛烈な反発も聞かれていたもよう。その一方、中国政府が3年半ぶりに日本への団体旅行解禁を発表したが、一部からは「福島産食材などで文句ばかりいうなら、わざわざ日本に来なくてもいい」などといった辛辣な意見も聞かれている。
<< 今週の見通し >>
ドル/円相場をチャートで見ると、週末まで5連続の陽線引け。そして、一連の過程のなかで143円を上限とした小レンジに続き、144円を上限とした中レンジも上抜き、さらには一時145円をワンタッチする局面も観測されていた。ポジションの偏り、ドル買われ過ぎはさすがに気になるものの、リスクは間違いなくドル高方向にバイアスか。年初来高値145.07円がすでに現実的な次の上値メドとして意識されるなか、日本の通貨当局による円買い実弾介入が気になるところだ。
市場は引き続き日米欧を中心とした金融政策に注目しているものの、それぞれ今月には中銀による金融決定会合が予定されていない。もっとも早いECB理事会で来月14日、米FOMCとなると同19-20日とまだ1ヵ月以上も先になる。したがって市場で新たに注目を集め始めているのは来週末24-26日に予定されている「ジャクソンホール会合」。短期的には同会合をにらみつつ思惑の交錯した展開か。なお、先週ムーディーズが米中堅・中小銀10行の格下げを発表しており、同様の動きなどを警戒する声も聞かれていた。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は5週続けて週間レンジが3円を超えている。荒っぽい変動はいまだ収まっておらず、今週は週の半ばにかけ日本勢の多くが「盆休み」することで、さらなる「薄商い=乱高下」をたどる危険性も取り沙汰されていた。
なお、基本的なリスクはドル高で145.07円を超えていく局面も否定できないが、問題は円買いの実弾介入があった場合だ。薄商いのなかストップロスを巻き込みつつ、ドルが急反落に転じる展開がないとも言い切れず注意を払いたい。
そうしたなか今週は、8月のNY連銀製造業景況指数や7月の小売売上高などの米経済指標が発表されるほか、7月に開催されたFOMCの議事録要旨の公開も予定されている。市場では米国はあと1回の利上げを実施するとの見方が優勢ではあるものの、先で記した指標などを参考にしてそのスタンスをしっかりと見極めたいところだ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、142.50-146.50円。ドル高・円安については、年初来高値145.07円が最初の抵抗。抜ければフィボナッチを参考にした146.10円がターゲットだが、途中で本邦からの円買い介入などが実施され、ドル高を阻む可能性も。
対してドル安・円高方向は、144円レベルをめぐる攻防にまずは注目。割り込むと143円前後などが意識されそうだ。底堅いイメージだが、当局の介入が観測されれば、その限りではない。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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