トルコリラ円見通し 米CPIとPPIを通過しての円安で連騰したが週明けは反落開始(23/8/14)

11日は概ね5.26円から5.40円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.39円で前日終値からは0.04円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 米CPIとPPIを通過しての円安で連騰したが週明けは反落開始(23/8/14)

米CPIとPPIを通過しての円安で連騰したが週明けは反落開始

〇トルコリラ円、8/12早朝終値は5.39、週間では8/4終値5.25から0.14の円安リラ高
〇対ドル8/10は1ドル27.00リラ、2日連続で最安値更新
〇オランダINGグループ、2023/10-12月期1ドル30リラ、2024年10-12月期は36リラと見通し公表
〇8/11発表のトルコ6月経常収支6億7400万ドルの黒字、観光収入増加で20か月振りの黒字
〇5.32上回るか一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇余地あり、5.37超えから5.40前後を再び試す
〇5.32割れからは下向きとし、5.30割れからは下落期入りとみて5.27、5.25を順次試す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の8月10日は概ね5.36円から5.30円の取引レンジ、11日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.32円からは0.03円の円安リラ高だった。11日は概ね5.26円から5.40円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.39円で前日終値からは0.04円の円安リラ高だった。
週間では8月4日終値5.25円から0.14円の円安リラ高だった。
ドル/トルコリラにおけるリラ暴落ペースがやや落ち着いているためにトルコリラ円はドル円を見ながらの展開となっているが、ドル円は8月3日高値143.88円から8月4日夜の米雇用統計を挟んで7日午前安値141.51円まで下げたところを起点に上昇再開し、8月10日夜の米7月CPI発表直後に一時的に売られたところから一段高へ進み、12日未明には144.99円へ高値を伸ばした。
トルコリラ円は8月3日高値5.33円からの下落が7日午前までに一巡して上昇再開に入り、一時的なドル/トルコリラでのリラ安成立を反映して反落する場面を入れながらも12日早朝には5.40円まで高値を伸ばした。

8月14日午前序盤はドル円が小動きながらドル高リラ安により一時5.34円へ反落するなど戻り一巡感が出ている。

ドル円は145円に迫ったが、1日に1円を大きく超える円安の場合は財務省関連の円安けん制発言も出やすいこと、昨年9月22日に政府・日銀が145.89円へ上昇したところで円買い介入を実施した記憶もあり市場も慎重になるところだが、6月30日高値145.06円を超えれば1月16日安値からの上昇も三段目に入り、介入警戒感を持ちながら高値追及へ進むことも考えられる。
トルコリラ円としてはドル円の騰落を追いかけつつ、ドル/トルコリラにおけるリラ安が一時的なものではなく連続的な動きで進み始める場合にはドル円への同調が途切れてリラ安に圧されることになりかねないと注意したい。

【対ドルでは終値ベースでの最安値水準】

ドル/トルコリラの8月10日は概ね26.54リラから27.07リラの取引レンジ、11日早朝の終値は27.00リラで10日終値の26.99リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。11日は概ね26.77リラから27.24リラの取引レンジ、12日早朝の終値は26.86リラで前日終値から0.14リラのドル安リラ高だった。週間では8月4日終値26.94リラから0.08リラのドル安リラ高だった。
8月10日の米CPIと11日の米PPIの発表を通過して為替市場全般がドル高優勢の動きとなったが、トルコリラへの影響は限定的で、12日早朝にかけてリラの買い戻しが優勢となったことを反映して11日終値で26.80リラ台へ上昇した。しかし、週明けの8月14日午前序盤には27.23ドルを付けるなどドル高リラ安基調は変わらない。

5月末のエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ安基調は暴落商状が落ち着いて減速しているものの継続している。先週は8月4日に付けた取引時間中の史上最安値27.34リラを更新しなかったものの、終値ベースでは8月9日に26.99リラ、8月10日に27.00リラと2日連続で最安値を更新した。ベンダーによっては8月3日に27.49リラ、11日にも27.45リラの一時的安値を示現している。
8月11日にはオランダのINGグループがドル/トルコリラの2023年10-12月期見通しを1ドル30リラ、2024年1-3月期に31.19リラ、4-6月期に32.56リラ、7-9月期に34.16リラ、10-12月期に36リラ、2025年末には40リラへ下落するとの予想を公表している。

【先週後半の主な結果】

外貨準備高はトルコ中銀がエルカン新総裁体制に入ってから外貨準備を取り崩してリラ防衛のための市場介入を行うことをやめて外貨増を目指す姿勢へ転換したことにより、一時57億ドルのマイナスまで落ち込んだところから回復基調を続けているが、中銀によるリラ買いがなくなった分、市場原理によりトルコのファンダメンタルズが悪化するうちはリラ安が続きやすくなっている。
鉱工業生産は6月にやや改善したものの低調な伸びの範囲にとどまった。

8月10日
 16:00 6月 失業率 (5月 9.5%、結果 9.6%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.9% → 1.4%、結果 1.6%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -0.2% → 0.2%、結果 0.6%)
 20:30 週次 外貨準備高 8月4日時点 グロス (7月28日時点 723.5億ドル、結果 742.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 8月4日時点 ネット (7月28日時点 108.9億ドル、結果 157.2億ドル)
8月11日
 16:00 6月 経常収支 (5月 -79.33億ドル、結果 6.74億ドル)
 16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 2.1% → 3.0%、結果 -0.1%)
 16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 28.4% → 30.2%、結果 28.5%)

【観光収入増加で20か月振りの経常黒字】

【観光収入増加で20か月振りの経常黒字】

8月11日に発表されたトルコの6月経常収支は6億7400万ドルの黒字となった。
トルコは構造的な経常赤字国であり、貿易赤字を海外からの観光収入で埋め合わせることで6月から10月にかけての観光最盛期には経常黒字となることがあり、パンデミック発生前の2019年は5月から11月まで経常黒字を計上し、2021年7月から10月までの間も経常黒字となったが、それ以外は赤字であり、特に新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ戦争による世情悪化に加えて貿易赤字の拡大により2021年11月から今年5月までは19か月連続赤字だった。しかし観光客がパンデミック前の状況を回復したこと、リラ安が観光客の懐を緩めたこと、6月の貿易収支では石油等のエネルギー輸入価格の低下による輸入の減少で貿易赤字が減ったことが6月の経常黒字に貢献したようだ。トルコ中銀によれば6月の観光収入は42億ドルの純流入だった。

今年1-6月期の経常収支累計は368億ドルの赤字であり、2022年同期の287億ドル、2021年同期の113億ドルから大幅に増加しており上半期としては過去最大の赤字額となっている。7月の貿易収支速報は貿易赤字が6月の51.6億ドルから123.9億ドルへ倍以上に拡大しているため、構造的な経常黒字への期待感には乏しい。しかし、リラ暴落によるトルコの輸入力低下が貿易赤字の改善につながり観光収入の増加ペースが継続できれば経常赤字が現状よりも縮小基調へ進む可能性はあるだろう。
大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは先週に6月からのトルコ中銀総裁と財務相の人事により経済政策が軌道に乗ればトルコの信用格付けを引き上げる可能性があるとしたが、仮に1段階引き上げられても投資適格以下にとどまると思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月3日午後高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、8月7日午前安値からの反騰で8月4日夜高値を超えたため、8日午前時点では7日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし9日から10日午後にかけての間への上昇を想定した。
8月11日午前に一時反落してから12日早朝へ一段高となり、14日午前に反落しているため、11日午前安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと思われるが、14日午前の反落ですでにサイクルトップを付けた可能性もあると注意する。
5.30円を上回るうちは16日朝から18日朝にかけての間への上昇を想定するが、5.30円割れからは弱気サイクル入りとして16日朝から18日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月14日午前の反落で遅行スパンが悪化しつつあるものの先行スパンを上回る状況を維持しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。ただし、一時的な安値成立で先行スパンを割り込んでも即時に先行スパンを上抜き返す場合は上昇継続の可能性ありとする。

60分足の相対力指数は8月11日朝から12日早朝への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生して40ポイント台へ低下しているため、55ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.32円を下値支持線、5.37円を上値抵抗線とする。
(2)5.32円を上回るか一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、5.37円超えからは5.40円前後を再び試す上昇を想定する。5.40円以上は反落注意とするが、5.35円を上回っての推移なら15日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.32円割れからは下向きとし、5.30円割れからは下落期入りとみて5.27円、5.25円を順次試す下落を想定する。5.57円以下は反発注意とするが、5.30を割り込んでの推移なら15日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月15日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -2196億リラ)
8月17日
 20:30 週次 外貨準備高 8月11日時点 グロス (8月4日時点 742.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 8月11日時点 ネット (8月4日時点 157.2億ドル)
8月23日
 16:00 8月 消費者信頼感指数 (7月 80.1)
8月24日
 20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 17.5%)


注:ポイント要約は編集部

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