『新規材料に乏しい中、トルコリラ円はドル円を追いかける動きに終始』
〇今週のトルコ円、週後半にかけ一時5.41まで上昇
〇トルコ指標の好調、米インフレリスク後退によるリスク選好回復等が背景
〇トルコ円上方より一目均衡表の雲が急ピッチに垂れ下り、強い売りシグナルも成立、地合い弱い
〇トルコ経済の先行き不透明感、インフレ再上昇、大統領の政策変更リスク等も重石
〇来週はトルコ円の材料乏しく週を通してドル円を追いかける動きか
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):5.25ー5.55
今週のレビュー(8/7−8/11)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初5.25円で寄り付いたあと、翌8/8に週間安値5.21円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)トルコ6月鉱工業生産(結果▲0.6%、予想▲3.0%、※前年比)の市場予想を上回る結果や、(2)トルコ6月経常収支(結果+6.7億ドル黒字、予想+3億ドル黒字)の市場予想を上回る結果、(3)米7月消費者物価指数(結果3.2%、予想3.3%、※前年比)および、米7月消費者物価コア指数(結果4.7%、予想4.8%、※前年比)の市場予想を下回る結果、(4)上記3を背景とした次回9月FOMCでの利上げ観測後退(米国のインフレリスク後退→市場心理回復→リスクオン再開→新興国通貨上昇)、(5)対主要通貨での円売り圧力(ドル円が約1カ月ぶり高値圏へと急上昇→トルコリラ円連れ高)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値5.41円(7/11以来、約1カ月ぶり高値圏)まで上昇しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/12午前1時55分現在)では、5.35円前後で推移しております。尚、8/10に発表されたトルコ6月失業率(結果9.6%、前回9.5%)は前回比悪化する結果となりましたが、市場の反応は限定的となりました。
来週の見通し(8/14−8/18)
トルコリラの対円相場は、7/18に記録した史上最安値5.09円をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約1カ月ぶり高値となる5.41円まで上昇しました。但し、アップサイドより一目均衡表の分厚い雲が急ピッチに垂れ下がってくることや、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(上値余地は限定的)と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感(先週発表されたトルコ7月製造業PMIは7ヵ月ぶりに好不況の分岐点となる50を下回る結果)や、(2)トルコ国内のインフレ率の再上昇(実質金利低下に伴うリラ売り圧力)、(3)エルドアン大統領の政治リスク(トルコ政府・中銀は経済政策・金融政策の正常化路線への転換を志向しているが、エルドアン氏の一言で方向性が180度覆るリスクあり)、(4)リラ売り抑制策撤廃の思惑(これまでリラ売りを抑制するツールとして多用してきた資本規制や為替介入から距離を置くとの思惑)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落を中長期的なメインシナリオとして予想いたします。但し、来週はトルコ経済データの発表が予定されておらず、トルコリラに主体性を見出すことが難しいため、トルコリラ円相場は週を通してドル円を追いかける動きとなりそうです(当方はドル円相場の続伸を予想しているため、トルコリラ円相場もドル円に連れて底堅く推移する可能性大)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):5.25ー5.55
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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