『約1カ月ぶり高値圏へ急上昇。年初来高値更新が射程圏内に』
〇今週のドル円、週明け早々141.52まで下落するも週末にかけ144.99まで急伸
〇FRB関係者のタカ派発言、米7月PPIの予想比上振れ、米長期金利急上昇等が背景
〇米7月CPIの下振れ、FRB関係者のハト派発言等のドル売り材料には反応せず
〇ユーロドル、週後半にかけ週間高値1.1065まで急伸後1.0945前後まで押し返される
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合いの強さ決定づける
〇ファンダメンタルズも米年内追加利上げ観測の残存や円キャリートレード活発化期待がサポート
〇ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):143.50ー147.50、(EURUSD):1.0775−1.1075
今週のレビュー(8/7−8/11)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初141.79で寄り付いた後、(1)前週末金曜日に発表された米7月雇用統計後のドル売りの流れの継続や、(2)米金利低下に伴うドル売り圧力、(3)日経平均株価の冴えない動き(リスク回避の円買い圧力)が重石となり、週明け早々に、週間安値141.52まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)ボウマンFRB理事による「インフレ率をFRBが目標とする2%に引き下げるためには追加利上げが必要になる公算が大きい」とのタカ派的な発言や、(5)本邦6月実質賃金(結果▲1.6%、前回▲0.9%)の更なる低下、(6)上記5を背景とした日銀による金融緩和の長期化観測(実質賃金の伸び率鈍化→物価目標達成時期の後ろ倒しリスク→金融緩和の長期化観測再燃)、(7)円金利低下に伴う円売り圧力(本邦10年債利回りは8/3に記録した0.65%から0.56%へ急低下)、(8)リッチモンド連銀バーキン総裁による「依然としてインフレ率が高すぎる」とのタカ派的な発言、(9)重要イベント(米CPI)通過後のアク抜け感、(10)下値の堅さを嫌気した短期筋のショートカバー(米CPIおよび米コアCPIが市場予想を下回ったにも係わらずドル円が上昇)、
(11)サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「FRBはインフレに関してまだやるべきことがある」「FRBはコアインフレの抑制に全力で取り組んでいる」「利下げに関する議論には程遠い」とのタカ派的な発言、(12)アトランタ連銀ボスティック総裁による「高すぎるインフレを抑制するために仕事に励む」とのタカ派的な発言、(13)米7月生産者物価指数(結果0.8%、予想0.7%、※前年比)および、米7月生産者物価コア指数(結果2.4%、予想2.3%、※前年比)の市場予想を上回る結果、(14)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米2年債利回りは8/8に記録した4.71%から4.91%へ急上昇。米10年債利回りは8/10に記録した3.95%から4.19%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値144.99(6/30以来の高値圏)まで急伸しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/12午前2時45分現在)では、144.97前後で推移しております。尚、今週発表された米7月消費者物価指数(結果3.2%、予想3.3%、※前年比)および、米7月消費者物価コア指数(結果4.7%、予想4.8%、※前年比)は共に市場予想を下回る結果となりましたが、ドル売りでの反応は限定的となりました。また、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「経済データ次第で来年初めの利下げの可能性を排除しない」とのハト派的な発言や、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「おそらく来年利下げを開始することになるだろう」とのハト派的な発言も見られましたが、市場の反応は限定的となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1018で寄り付いた後、(1)ドイツ6月鉱工業生産(結果▲1.7%、予想▲0.2%、※前年比)の市場予想を下回る結果や、(2)イタリア政府による銀行に対する40%の超過利潤税の課税承認、(3)上記2を背景とした欧州株の急反落(欧州金融株急落→欧州株連れ安→市場心理悪化→リスク回避のユーロ売り再開)、(4)ECB月次調査によるユーロ圏の期待インフレ率の更なる低下(向こう12カ月間の期待インフレ率は前回の3.9%から3.4%に低下、今後3年間の期待インフレ率は前回の2.5%から2.3%へと低下)、(5)上記4を背景としたECBによる金融引き締め休止観測が重石となり、翌8/8にかけて、週間安値1.0928まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)イタリア政府が上記2で発表した銀行の超過利潤に対する課税措置の一部撤回を表明したこと(火消しを行ったこと)や、(7)上記6を背景に前日急落した欧州金融株が急反発に転じたこと(欧州金融株急反発→欧州株上昇→市場心理回復→リスク回避のユーロ売り後退→短期筋のショートカバー誘発)、(8)米7月消費者物価指数および、米7月消費者物価コア指数の市場予想を下回る結果、(9)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1065まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(11)米長期金利の反転上昇や、(12)中国経済の先行き不安(不動産企業の債務問題や、デフレリスク、社会融資総量の市場予想を下回る結果)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間8/12午前2時45分現在)では、1.0945前後まで押し返される動きとなっております。
来週の見通し(8/14−8/18)
<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した安値137.24をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約1ヵ月半ぶり高値となる144.99(6/30以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを決定づけるチャート形状となっています。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利上げ観測の残存(米CPIは市場予想を下回るも、米PPIは市場予想を上回る結果。米当局者からも依然としてタカ派的な発言が多数→米金利上昇→米ドル買い)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(日銀は指値オペを通じて円金利の上昇を抑え込む姿勢を明確化→金融緩和の長期化観測再燃→円金利低下→対主要通貨での円売り再開)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの活発化期待など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(6/30に記録した年初来高値145.08を上抜け、昨年10/31高値148.86や、昨年10/21高値151.95に向けて上値を伸ばすシナリオを想定)。
尚、来週は本邦の主要経済指標(本邦4ー6月期GDP速報値、本邦7月貿易収支、本邦6月機械受注、本邦7月全国消費者物価指数)や、米国の主要経済指標(米7月小売売上高、米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米8月NAHB住宅市場指数、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁講演、米7月住宅着工件数、米7月建設許可件数、米7月鉱工業生産、米FOMC議事要旨、米新規失業保険申請件数、米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米7月景気先行指数)が目白押しとなるため、ボラティリティの急拡大(夏枯れ相場で且つジャクソンホール前なのであまり動かないだろうと油断している相場に強い刺激を与えられる展開)に警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):143.50ー147.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、8/3に約1カ月ぶり安値となる1.0912(7/7以来の安値圏)まで急落しました。今週は一時1.10台半ばへ回復する場面も見られましたが、週末にかけて再び1.09台半ばへ反落するなど、上値の重い展開が続いております。
日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線やボリンジャーミッドバンド、一目均衡表基準線や転換線)を下抜けしたこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いの悪化が警戒されます。1.09台前半に位置する90日移動平均線や、1.08台後半に位置する一目均衡表の雲を明確に下抜けできれば、5/31に記録した安値1.0634に向けて下げ足を速めるリスクも出てくるため、来週は続落リスクに警戒が必要な時間帯が続くと考えられます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECBによる金融引き締め休止観測(7/27に開催されたECB理事会で追加利上げの予告を行わず。その後もECBメンバーからハト派的な発言が増加)や、(2)米FRBによる年内利上げ観測の残存、(3)上記1、2を背景とした欧米金利差拡大とそれに伴うユーロ売り・ドル買い圧力、(4)中国経済の先行き不透明感(欧州株の下押しリスク)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
ユーロLongを切れていない市場参加者(ユーロLongに未練が残っている市場参加者)は相応に多いと見られることから、上述で述べた通り、1.09台前半や1.08台後半の支持帯を下抜けた際のロスカット・インパクトは想像以上に大きいと考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は夏季休暇シーズン本格化で市場参加者の減少(動意薄の展開)が見込まれるものの、中国の主要経済指標(中国7月小売売上高、中国7月鉱工業資産、中国7月固定資産投資)や、欧州の主要経済指標(ユーロ圏8月ZEW景況感指数、ユーロ圏第2四半期GDP改定値、ユーロ圏6月鉱工業生産、ユーロ圏7月消費者物価指数改定値、ユーロ圏6月建設支出)が目白押しとなるため、流動性欠如の隙をついたフラッシュクラッシュ的な動き(ボラティリティの急拡大)には念の為、注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1075
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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