米CPIとPPIを通過して6月高値に迫り、再び当局の円安けん制圏に
〇先週のドル円、週初141.51へ安値を切り下げ後、週末にかけ144.99まで上昇
〇発表された7月米CPIとPPIはFRBの追加利上げを排除しない結果
〇ドル円、日銀のYCC修正を織り込んで上昇してきたことによる先高感で5連騰
〇6/30高値145.06から7/14安値137.24までの下げ幅をほぼ解消
〇8/11夜安値144.40を上回るうちは145.06超えから146円を目指す上昇を想定
〇9/22高値145.89超えから146円台中盤へ進む可能性も
〇8/11安値144.40割れからは144円前後試し、割り込む場合は8/10安値143.29を試すか
【概況】
ドル円は8月4日の米7月雇用統計での就業者増加数が冴えなかったことによるドル売りで142円を割り込み、8月7日午前には141.51円へ安値を切り下げたが、その後はドル円の上昇基調は継続との見方が優勢となり8月8日に143円台を回復、9日は143円台後半へ続伸、8月10日午後には144.10円まで高値を伸ばしていた。8月10日夜の米7月CPI上昇率が全体およびコアともに市場予想を下回ったことで発表直後に143.29円まで下げたものの、前年同月比は13か月振りに6月から伸びが加速したこともあり、発表直後のドル売り一巡後は早々に買い戻しに入り、米国債の入札低調で米長期債利回りが上昇するのを見て144円台中盤へ一段高した。8月11日午前に144.89円まで続伸した後は米PPIを控えてややジリ安の推移で144.40円まで下げたが、米7月PPI前月比等が市場予想を上回ったことによるドル高で12日未明には144.99円を付けて6月30日の年初来高値145.06円に迫った。
【米CPIとPPIはFRBの追加利上げを排除せず】
8月10日に発表された米7月CPI(消費者物価指数)は全体の前月比が0.2%となり、市場予想と一致して6月の0.2%とかわらなかったが、前年同月比では3.2%となり市場予想の3.3%を下回ったものの6月の3.0%を上回り13か月振りに加速した。食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率は前月比で0.2%となり、市場予想と一致して6月の0.2%と変わらず。前年同月比は4.7%で市場予想の4.8%および6月の4.8%を下回った。項目別ではガソリンが19.9%低下したもののエネルギー関連を除いたサービス価格が6.1%上昇となり、賃金上昇によるインフレ圧力が依然として強い印象を与えた。
8月11日に発表された7月の米PPI(生産者物価指数)の上昇率は全体の前月比が0.3%となり、市場予想の0.2%および6月の0.0%(速報の0.1%から下方修正)を上回り、前年同月比は0.8%で予想の0.7%を上回り6月の0.2%(速報の0.1%から上方修正)から大幅に加速したが、前年同月比の再加速は2022年6月以来だった。
コア指数の上昇率は前月比0.3%で予想の0.2%および6月のマイナス0.1%(速報の0.1%から下方修正)を上回った。前年同月比は2.4%で6月と同じだったが市場予想の2.3%を上回った。
米ミシガン大の8月消費者景況感指数速報値は71.2となり、7月の71.6から悪化したが市場予想の71.0を上回った。また期待インフレ率は1年先が3.3%で7月の3.4%から低下、5年先が2.9%で7月の3.0%から低下した。
【米国債入札好調、PPI再上昇で10年債利回りが上昇、ダウは続伸】
米長期債利回りは8月10日の米7月CPIおよび11日の7月米PPI発表を通過して上昇した。CPIの前年比が予想を下回ったものの前月比は6月と同様の上昇率にとどまったことで利下げ停止感を強めるものにならず、PPIが予想を上回る上昇率だったことで追加利上げの可能性が若干拡大し、30年債の320億ドル入札が低調だったことによる利回り上昇圧力が連騰の背景となった。
長期金利指標の10年債利回りは8月10日に前日比0.01%上昇、8月11日に前日比0.05%上昇となり4.16%で週を終え、8月4日の4.21%に迫った。30年債利回りは10日に前日比0.08%上昇、11日に前日比0.01%上昇となり4.26%で週を終えた。利上げに敏感な2年債利回りは10日に前日比0.04%上昇、11日に0.05%上昇して4.90%で週を終えた。
NYダウは8月10日に前日比52.79ドル高と上昇、11日も105.25ドル高と2連騰した。米長期債利回りの上昇による圧迫感があるもののリセッションには陥らずに景気拡大への期待感が優勢で、11日は原油高によるエネルギー関連株高が全体の上昇に寄与したようだ。ナスダック総合指数は8月10日に前日比15.97ポイント高と小幅上昇したものの11日は93.14ポイント安と下落しており米長期債利回り上昇を嫌っているようだ。
【ドル円は6月30日高値超えを試す】
米国のCPIとPPIを通過してFRBによる9月ないし11月のFOMCにおける追加利上げの確率は若干上昇したようだがまだかなり低く、市場の中心的な予想は利上げ見送りのようだ。しかしドル円としては米国に追加利上げ余地が残っていることと、日銀のYCC修正を織り込んで上昇してきたことによる先高感で8月7日から11日まで5連騰となり、6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円までの下げ幅をほぼ解消した。
145円台は財務相や財務官、官房長官等による円安けん制が入ってくる水準であり、昨年は9月22日に145.89円へ上昇したところで大規模な円買い介入が実施されている。市場も口先介入だけでなく実弾介入もあり得る水準に接近したことを自覚していると思われるが、昨年9月の介入により急落したところは買い拾われて10月21日高値151.94円へ一段高した経緯もあるため、介入による反落は逆張り的な買い場として狙われることも考えられるだろう。
ドル円の日足チャートでは7月14日安値からの反騰パターンが昨年8月2日安値からの反騰時に類似している。昨年は7月14日高値139.38円から8月2日安値130.41円まで8.97円の下落幅となったが、52日移動平均を大きく割り込んだところからの当初の反騰では26日移動平均が上値抵抗となりいったんダメ押しを入れたが、その後に26日移動平均を超えたところから上昇が勢い付き、9月22日の市場介入による波乱を通過して10月21日高値へと大上昇した。現状も7月21日高値への上昇時は26日移動平均が抵抗となっていったん押し目形成となったものの8月3日への上昇で26日移動平均を超え、その後の小反落では26日移動平均が下値支持線に変わって支えとなり8月11日への5連騰へつながっている。
6月30日高値を超えれば1月16日安値からの上昇は3月8日までを一段目とし、3月24日安値から6月30日高値までを二段目とし、7月14日からは三段上げの三段目に入ることになる。三段目の上昇が一段目と同規模なら上値計算値は147.94円、6月30日から7月14日への下げ幅の倍返しなら上値計算値は152.88円となる。このため145円台に入れば市場介入を警戒しつつ昨年9月22日の介入時高値145.89円を試し、9月22日高値を超えれば147円台、さらに昨年10月21日高値へ挑戦してゆく展開となる可能性がある局面と思われる。
弱気転換は下値支持線となっている26日移動平均(現在141.28円)を割り込んで続落に入るところからとし、その際は7月14日安値をもう一度試す流れへ進みやすくなると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月11日夜安値144.40円を下値支持線、145.06円を上値抵抗線とする。
(2)144.40円を上回るうちは145.06円超えから146円を目指す上昇を想定する。昨年9月22日高値145.89円前後は反落警戒とするが、米国経済指標の堅調さや米長期債利回り上昇基調が続く場合は145.89円超えから146円台中盤へ進む可能性もあるとみる。
(3)144.40円割れからは144円前後試しとする。144円前後は買われやすいとみるが、米国経済指標が予想を下回る低調さを示したり円安けん制等の動きにより144円を割り込む場合は8月10日夜安値143.29円前後を試す下落を想定するが143円台前半は買い拾われやすい水準とみる。
【当面の主な予定】
8/14(月)
休場 タイ
15:00 (独) 7月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (6月 -0.2%)
8/15(火)
休場 イタリア、ポーランド、ギリシャ、インド、韓国
08:50 (日) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 0.7%、予想 0.7%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP・速報値 年率換算 (1-3月 2.7%、予想 2.9%)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
10:30 (豪) 4-6月期 賃金指数 前期比 (1-3月 0.8%、予想 0.9%)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 3.1%、予想 4.2%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 4.4%、予想 4.3%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.0%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -0.4%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 -6.3%)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 4.0%、予想 4.0%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 (7月 -14.7、予想 -15.5)
18:00 (欧) 8月 ZEW景況感 (7月 -12.2)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 1.1、予想 -0.6)
21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.2%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 56、予想 56)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.2%、予想 0.1%)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
8/16(水)
休場、インド
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 7.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 6.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前月比 (6月 0.3%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (6月 10.7%、予想 9.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.2%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.2%、予想 -4.2%)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 143.4万件、予想 145.0万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -8.0%、予想 1.1%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算 (6月 144.0万件、予想 147.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -3.7%、予想 2.0%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.5%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 78.9%、予想 79.1%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨
8/17(木)
休場、インドネシア
07:45 (NZ) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (1-3月 0.3%)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調前 (6月 430億円、予想 437億円)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調済 (6月 -5532億円、予想 -4360億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 -7.6%、予想 3.5%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 -8.7%、予想 -5.8%)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 3.26万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 3.5%、予想 3.6%)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 1.2%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 -9億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 -3億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 170.0万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 -13.5、予想 -10.0)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 -0.4%)
8/18(金)
日米韓首脳会談(キャンプデービッド)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -30、予想 -29)
08:30 (日) 7月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.3%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.1%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (6月 4.2%、予想 4.3%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.7%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -1.0%、予想 -2.1%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.8%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 -0.9%、予想 -2.2%)
18:00 (欧) 7月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (6月 5.3%、予想 5.3%)
18:00 (欧) 7月 コアHICP・改定値 前年同月比 (6月 5.5%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.2%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前年同月比 (5月 0.1%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2023.08.14
基本はドル高、ただ介入警戒が上値を抑制も(週報8月第2週)
先週のドル/円相場はドルが堅調裡。週末には一時145円をワンタッチ、年初来高値145.07円も視界内に捉えられてきた。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2023.08.12
来週の為替相場見通し:『約1カ月ぶり高値圏へ急上昇。年初来高値更新が射程圏内に』(8/12朝)
ドル円は7/14に記録した安値137.24をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約1ヵ月半ぶり高値となる144.99(6/30以来の高値圏)まで急伸しました。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。