トルコリラ円見通し 対ドルでのリラ安が再び加速気配、円安も頭打ちでトルコリラ円は反落(23/8/4)

トルコリラ円の8月3日は概ね5.33円から5.23円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.28円で前日終値の5.31円からは0.03円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 対ドルでのリラ安が再び加速気配、円安も頭打ちでトルコリラ円は反落(23/8/4)

対ドルでのリラ安が再び加速気配、円安も頭打ちでトルコリラ円は反落

〇トルコ円、8/3午後にかけてドル円の上昇局面で5.33へ上昇し、その後ドル円急落を見て深夜5.26へ下落
〇8/4午前安値で5.19を付け失速、対ドルでのリラ安が再び勢い付きつつある状況に要注意
〇対ドル、8/3は概ね27.12から26.74の取引レンジ、最安値圏での持ち合いという印象
〇8/4午前は27.32へ最安値を更新、ファンダメンタルズ悪化とインフレ再加速によりリラ売り圧力高まる
〇トルコ7月CPI上昇率は大幅な加速、貿易赤字も倍増
〇5.28超えからは反騰入りの可能性ありとして5.30試しとするが、その後の反落注意とする
〇5.19割れからは、5.15前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の8月3日は概ね5.33円から5.23円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.28円で前日終値の5.31円からは0.03円の円高リラ安だった。
ドル/トルコリラにおけるリラ安基調を気にしつつもトルコリラ円はドル円の騰落を追いかけており、ドル/トルコリラにおける一時的な安値成立時に反応して8月3日も一時5.23円を付ける場面もあったが、概ねドル円の流れに合わせて3日午後にかけてのドル円の上昇局面で5.33円へ上昇し、その後にドル円が急落したのを見て3日深夜には5.26円へ下落した。

ドル円は7月28日の日銀金融政策決定会合を挟んだ乱高下を通過し、日銀のYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)における長期金利許容上限引き上げも織り込んで上昇基調を継続してきたが、8月2日のフィッチによる米国債格下げ、8月2日から3日にかけての日経平均大幅下落と新発10年債利回りの上昇から円高優勢となり、8月3日は午後に143.88円まで上昇してから深夜に142.06円まで反落する乱調な展開となっている。
8月4日午前のドル円はやや落ち着いているものの、ドル/トルコリラでリラ安が勢いを見せ始めたことでトルコリラ円は安値で5.19円を付けるなど失速しており、対ドルでのリラ安が再び勢い付きつつある状況に注意がいるところだ。

【対ドルでは4日午前に取引時間中の最安値更新】

ドル/トルコリラの8月3日は概ね27.12リラから26.74リラの取引レンジ、4日早朝の終値は26.97リラで前日終値の26.96リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。
8月2日には一時的な安値成立だったものの27.24リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新したが、3日は夕刻のトルコCPIや貿易収支速報、夜の外貨準備高等への市場の反応は鈍く、5月末から続くリラ安基調を継続しながら一時的なリラ売りを反映して史上最安値は更新しなかったものの最安値圏での持ち合いという印象だった。しかし8月1日、2日と最安値を繰り返し更新したことで先安感が再び強まり始めており、8月4日午前は27.32リラへ最安値を更新している。ベンダーによっては8月3日に27.49リラ、4日午前に27.43リラ等の安値提示も見られる。終値ベースでは7月21日の26.97リラが史上最安値だったが8月3日終値も同値としている。

米国債の格下げが米長期債利回りの上昇を招いていることで為替市場はドルストレートでドル高、クロス円ではリスク回避的な円高の様相となっているが、トルコリラはファンダメンタルズの悪化とインフレの再加速によるリラ売り圧力が高まっており、6月のような暴落商状に陥りかねないところと注意したい。

【トルコ7月CPIは大幅な加速に】

8月3日夕刻に発表されたトルコの7月CPI(消費者物価指数)上昇率は前月比9.49%となり6月の3.92%から大幅に加速した。市場予想は中央値が9.10%で予想レンジは6.4%から10.6%だったが中央値を上回った。前年同月比は47.83%となり6月の38.21%から大幅に加速した。市場予想は中央値が47.30%で予想レンジは43.5%から49.4%だったが中央値を上回った。
変動の激しいエネルギーや食品等を除いたコアCPI上昇率は前月比9.6%で6月の3.8%から大幅上昇、前年同月比は56.1%となり6月の47.3%から大幅に伸びた。
PPI(生産者物価指数)上昇率は前月比で8.23%となり6月の6.50%を上回り、前年同月比は44.5%で6月の40.42%を上回った。

対ドルでのリラ安が再び加速気配、円安も頭打ちでトルコリラ円は反落

エルドアン政権はインフレによる生活支援として最低賃金や年金支給および公務員給与の引き上げ等を行ってきたことで賃金インフレを招いており、リラ暴落による通貨インフレが一段と加速したことや、財政収支の悪化へ対処するために7月に入ってから増税ラッシュとなったことによるコストアップが7月のCPI上昇を招いたと思われる。
トルコ中銀は2会合連続の利上げで政策金利を17.5%まで引き上げてきたが、40%を大幅に超えてコア指数では50%を超えるインフレ率となっている状況では実質的な大幅マイナス金利状態であり、市場は大幅追加利上げを催促するリラ安基調を続けやすい状況と思われる。

トルコ貿易省による通関ベースの7月貿易速報では、貿易赤字が123.8億ドルとなり赤字は6月の51.6億ドルから倍増した。輸出は200.9億ドルで6月の209億ドルから減少する一方で輸入は324.8億ドルとなり6月の263億ドルから増加したために赤字が拡大した。
トルコ中銀による週次の外貨準備高は7月28日時点のグロスで723.5億ドルとなり7月21日時点の716.8億ドルから増加したが、ネットは108.9億ドルとなり7月21日時点の136.8億ドルから大幅に減少した。マイナス57億ドルまで悪化していたネットの準備高はエルカン新総裁体制に入ってから外貨準備を取り崩してリラ防衛の市場介入を繰り返してきたことをやめて準備高増加を目指したことでこれまでは順調な増加だったが、再び減少に入っていることで増加が頭打ちとなった印象がある。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月28日午後安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして8月3日深夜にかけての間への上昇を想定してきたが、8月2日未明へ続伸したところから反落したために2日午前時点では2日未明高値を直近のサイクルトップとして高値更新からは新たな強気サイクル入りとした。
8月3日午後に高値を更新したもののその後の下落で8月2日夕安値を連続的に割り込んだため、3日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日夕から9日夕にかけての間への下落を想定する。乱調な展開となる可能性もあるので5.28円超えからは強気転換注意として3日午後高値5.33円試しとするが、5.28円以下での推移中は一段安警戒とする。

60分足の一目均衡表では8月4日午前への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月4日午前への下落で20ポイント台へ低下しているので40ポイント以下での推移中は一段安警戒とする。40ポイントから50ポイント手前は戻り売りにつかまりやすいと注意し、強気転換は50ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.19円を下値支持線、5.28円を上値抵抗線とする。
(2)5.26円から5.28円にかけての水準は戻り売り有利とする。5.28円超えからは反騰入りの可能性ありとして5.30円試しとするがその後の反落注意とする。
(3)5.19円割れからは5.15円前後への下落を想定する。5.15円以下は反発注意とするが、5.25円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月7日
 23:30 7月 財務省現金残高増減 (6月 -2063.3億リラ)
8月11日
 16:00 6月 経常収支 (5月 -79.33億ドル)
 16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 2.1%)
 16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 28.4%)



注:ポイント要約は編集部

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