ドル円見通し 米国債格下げ余波、国内長期金利上昇、株安で円高に
〇ドル円、日経平均大幅続落と新発10年債利回り上昇を見て円安優勢となり、7/3午後143.88を付ける
〇しかし円高心理が優勢となり再び143円を割り込み、夜の米経済指標がさえない中142.06へ下落
〇本邦新発10年債利回りは一時0.655%へ上昇、2014年1月以来の水準に
〇昨日発表の米経済指標は冴えない結果だが、雇用統計待ちで反応は鈍い
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウ・ナスダックは続落
〇143.20以下での推移中は一段安余地ありとし、142.06割れからは141円前後を目指す下落を想定する
〇143.20超えからは8/3午後高値143.88試しとし、高値更新からは145円を目指す上昇を想定する
【概況】
ドル円は8月2日未明に143.54円へ上昇したところから2日早朝のフィッチによる米国債格下げ報道を受けて143円を割り込み、新発10年債利回り上昇と日経平均の大幅下落を見て2日夕安値142.21円へ一段安した。
米長期債利回り上昇で買い戻され、3日昼過ぎにかけては日経平均の大幅続落と新発10年債利回り上昇を見てトリプル安の様相で円安優勢となり午後には143.88円を付けてこの間の最高値を更新した。しかし米国債格下げや株安・債券安によるリスク回避的な円高心理が優勢となって再び143円を割り込み、3日夜の米経済指標がさえない中で142.06円へ下落して2日夕安値を割り込んだ。
米長期債利回りの連騰によりその後は142円台を維持しているものの、8月1日以降は高値を切り上げつつ安値も切り下げるレンジ拡張型の逆三角持ち合いの様相だが、142円割れから下げ足が速まるようだと7月28日からの円安一巡による下落感が強まりかねないところだ。今夜の米雇用統計をきっかけに円安再開ヘ進むか、円高継続で安値試しがしばらく続くのか、明暗が分かれそうだ。
【新発10年債利回り、一時0.655%へ上昇】
8月3日の本邦新発10年債(371回債)利回りは前日比0.025%上昇の0.650%となったが、一時は0.655%を付けて2014年1月以来およそ9年7か月振りの高水準に達した。7月28日の日銀金融政策決定会合でYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)における長期金利上昇許容限度が0.5%から事実上1.0%へ引き上げられたことから本邦長期金利が上昇しているが、米国債格下げによる米国債売り・利回り上昇の影響もある。
日銀は7月31日の長期金利上昇場面で臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)を行ったが、8月3日も買いオペを実施して利回り上昇を抑制した。
本邦10年債利回りが上昇し、米10年債利回りも上昇しているところだが、為替市場は通常なら米長期債利回り上昇によりドル高反応となりやすいのだが、8月3日夜にかけての展開を見ると、ユーロやポンドおよび豪ドル等は米長期債利回り上昇に圧迫されているものの、ドル円においてはドル買いの積極的な要因にはならず、リスク回避の円買い優勢へと風向きを変えている可能性がある。
【米経済指標は冴えないが雇用統計待ちで反応は鈍い】
米労働省による新規失業保険申請件数は7月29日までの週間で前週比6000件増の22.7万件となり4週ぶりに悪化した。失業保険受給者総数は7月22日までの週間で170万人となり前週から2.1万人増加した。発表直後にドル売り反応がみられたものの一時的なものにとどまった。
ISM=米サプライ管理協会による7月サービス業景況指数は52.7となり6月から1.2ポイント低下して市場予想の53.0を下回ったが、強弱分岐点の50を上回った。内訳では事業活動が前月比2.1ポイント低下、新規受注が0.5ポイント、雇用が2.4ポイント低下したが、価格は6月の47.6から48.1へ上昇した。市場はややドル安で反応したが限定的だった。
S&Pグローバルによる7月米サービス業PMI確報値は52.3となり速報値の52.4からわずかに下方修正されて6月確報値の54.4から悪化した。製造業を含めた7月総合PMI確報値は速報と変わらずの52.0で6月確報の53.2から悪化した。
米商務省による6月製造業受注は前月比2.3%増で4カ月連続プラスとなり5月の0.4%増を上回った。変動の激しい輸送関連を除いて0.2%増、国防関連除いて3.0%増だった。
【米10年債利回りは急伸続く、ダウは4営業日ぶり反落からの続落】
8月3日の米長期債利回りは総じて上昇した。米FRBによる追加利上げ余地に加えて8月2日早朝の米国債格下げの影響で債券売り。利回り上昇が続いており、長期金利指標の10年債利回りは前日比0.10%上昇の4.18%となったが、一時は4.199%へ上昇して4月の3.25%以降の最高水準を連日更新して4連騰となった。
30年債利回りは4連騰、前日比0.21%の大幅上昇で4.30%となり昨年11月以来の高水準に達している。
利上げに敏感な2年債利回りは0.01%上昇と小幅な動きで4.89%となり、7月27日に4.95%まで上昇した後は高止まりの横ばい推移を続けている。
一方でNYダウは前日比66.63ドル安と下落し、2日の348.16ドル安からの続落となり、ナスダック総合指数は13.73ポイント安で2日の310.46ポイント安から続落した。米経済指標がさえなかったことと長期金利上昇が圧迫要因となっているが、米国債格下げの影響が重石となっているようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は8月2日夕からの反騰で8月2日未明高値を超えて一段高となったが、3日夜に2日夕安値を割り込んだ。高値を切り上げつつ安値を切り下げるレンジ拡張型の往来持ち合いの可能性があるが、8月2日未明と3日午後の両高値をダブルトップとした下落期入りの可能性もある。今夜の米雇用統計を通過して高値更新へ進めば上昇基調の継続として8月8日から10日にかけての間への上昇を想定するが、高値更新へ進めないうちは下向きとし、3日午後高値以降の安値更新からは7日午後から9日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表で8月3日午後高値からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月3日深夜への下落で30ポイントに迫ってから下げ渋っているため、50ポイント超えへ進めないうちは20ポイント前後への一段安余地ありとし、50ポイント超えからは60ポイント台前半を試す上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、142.06円を下値支持線、143.20円を上値抵抗線とする。
(2)143.20円以下での推移中は一段安余地ありとし、142.06円割れからは141円前後を目指す下落を想定する。141円以下は反騰注意とするが、143円以下での推移か、直前安値から1円を超える反騰がみられないうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.20円超えからは8月3日午後高値143.88円試しとし、高値更新からは145円を目指す上昇を想定する。144.70円以上は反落警戒とするが、143.88円を超えた後も143.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/4(金)
10:30 (豪) 豪中銀(RBA) 四半期金融政策報告
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 6.4%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -4.3%、予想 -5.3%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.0%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -2.9%、予想 -1.7%)
20:15 (英) ピル英中銀理事、英中銀金利決定についてブリーフィング
21:30 (米) 7月 非農業部門就業者数 前月比 (6月 20.9万人、予想 20.0万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年同月比 (6月 4.4%、予想 4.2%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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