ドル円の急伸で戻すがドル高リラ安基調は変わらず、5.27円前後に抵抗感
〇トルコ円、7/24欧米PMI悪化によるドル下落で5.22まで下落、ドル円反発で7/25早朝5.26まで持ち直す
〇対ドル、7/24は概ねリラ27.11から26.65の取引レンジ、本日午前は史上最安値更新を伺う位置に
〇対ドルでリラ安がやや勢いを鈍らせているため、当面はドル円の騰落を追いかけやすい展開か
〇7月の経済指標総じて悪く、トルコのファンダメンタルズ悪化感
〇5.27超えからは5.30前後への上昇を想定
〇5.22割れからは下落期入りとして5.19、5.17を順次試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の7月24日は概ね5.27円から5.22円の取引レンジ、25日早朝の終値は5.24円で先週末終値の5.26円からは0.02円の円高リラ安だった。
エルドアン大統領再選やトルコ中銀の利上げを不服としたトルコリラの暴落によりトルコリラ円は2021年12月20日に付けたそれまでの史上最安値6.17円を割り込み、6月20日のトルコ中銀による8.5%から15.0%への利上げを不服として6月27日に5.47円へ下落、ドル円が7月14日にかけて大幅下落やドル高リラ安が再び勢い付いたために7月18日には5.08円まで史上最安値を大幅に切り下げてきた。
7月20日にトルコ中銀が17.5%へ利上げを決定して追加利上げ姿勢を示したことで対ドルでのリラ安がやや勢いを鈍らせたことと、ドル円の反騰継続によりトルコリラ円も持ち直しており、21日夕刻に日銀の金融緩和継続見通しとの報道をきっかけにドル円が142円に迫った局面でトルコリラ円は5.27円まで高値を切り上げた。
週明けの24日は欧米のPMIが総じて悪化したことでドル円が夜に141円を割り込んだところで5.22円まで下げたが、ドル円が141円割れから戻したことで25日早朝には5.26円まで持ち直した。
今週は米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合と重要イベントが続くが、ドル/トルコリラでのリラ安がやや勢いを鈍らせているためにトルコリラ円の当面はドル円の騰落を追いかけやすい展開と思われる。
【対ドルでは最安値近辺での推移続く】
ドル/トルコリラの7月24日は概ねリラ27.11リラから26.65リラの取引レンジ、25日早朝の終値は26.92リラで先週末終値の26.97リラからは0.05リラのドル安リラ高だった。
7月20日のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)へ向けた大幅利上げ催促により7月19日に27.16リラへ史上最安値を更新したが、7月20日はトルコ中銀が市場予想の20%への利上げへは踏み込めずに現行の15.0%から17.5%への利上げにとどめたものの追加利上げを強調したことにより新たな最安値更新へは進まなかった。しかし市場の期待を裏切り20%台への利上げに時間をかけたことによりリラの先安感はぬぐえないとして21日は取引時間中の史上最安値更新には至らなかったものの終値ベースでは7月18日終値26.92リラを超えて26.97リラとして史上最安値を更新した。
週明けの24日は欧州のPMIが軒並み予想を下回ったことでユーロやポンドが下落してドル高感が優勢となり、ドル円も米PMI発表後の安値から上昇したが、トルコリラは他市場動向にはさほど左右されず、26リラ台中盤へ上昇したところは売られれて最安値近辺の水準にとどまっている。
7月25日午前は27.11リラから26.84リラのレンジで推移し、史上最安値更新を伺う位置につけている。
【トルコのファンダメンタルズ悪化感】
7月に入ってからのトルコ経済指標は総じて悪い印象のものが続いている。
7月3日発表の6月CPIは前年比ではベース効果で5月の39.59%から38.21%へ若干低下したもののコアCPIの前年比は5月の46.6%から47.3%へ伸び、全体の前月比は5月に0.04%から3.92%へ、コア指数の前月比は4.2%から3.8%へ鈍化したものの高い水準のままだった。リラ安による通貨インフレはまだ続くと思われる。
トルコ中銀が市場介入をやめたことで純外貨準備高はマイナス57億ドルまで悪化したところから直近では132.5億ドルまで回復したものの逆にリラ安への歯止めが効かなくなっている側面がある。
5月の経常赤字は4月の54億ドルから79.3億ドルへ悪化、6月の財政赤字は5月の1189億リラから2196億リラへ悪化、6月の中央政府債務残は5月の4兆7340億リラから5兆6170億リラヘ過去最大を更新している。
リラ安とインフレによる貿易赤字、経常赤字、財政赤字の悪化により増税ラッシュも発生しているが、7月5日に一般の法人税を現行の20%から25%へ、金融機関の法人税を現行の25%から30%へ引き上げ、7月7日から国外から持ち込まれる携帯電話登録料が6091リラから2万リラへ引き上げ、賭博税は従来から倍となり、パスポートや労働許可証等の政府発行手数料も50%引き上げられ、7月10日からは付加価値税(VAT)も引き上げられ、7月15日にはガソリン税の引き上げ、7月23日にはEUからの輸入薬価の大幅引き上げ等が発表されている。
エルドアン大統領は再選後に大胆な金融政策の軌道修正と財政改革を行っているところなのだろうが、国民生活の窮状は悪化しており、リラ安に歯止めがかからないことによる国内でのリラ放れ、海外からのリラ売り攻勢を受けやすい状況が続く。
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月18日夕刻へ急落してからの反騰により、19日午前時点では18日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして19日夜から24日午後にかけての間への上昇を想定した。
7月24日夜へいったん下げてから戻しているため、21日夕高値を超える場合は24日夜安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りの可能性があり、その場合は26日午後から28日夕にかけての間への上昇が予想される。
ただし、24日夜安値を割り込む場合は21日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、21日午前安値を基準として26日午前から28日午前にかけての間への下落が想定される。
60分足の一目均衡表では7月24日夜の下落で遅行スパンが悪化したがその後の下げ渋りで再び好転しやすい位置にあり、先行スパンの上限を試している。先行スパンからの転落を回避するうちは一段高余地ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は7月19日深夜高値から21日夕高値への高値切り上げに際して指数のピークがほぼフラットとなる弱気逆行がみられて24日夜には一時40ポイントまで低下している。その後は50ポイント台へ戻しているのでまだ上昇余地ありとするが、次に40ポイントを割り込むところからは下落期入りとみて20ポイント台を試しに向かうと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.22円を下値支持線、5.27円を上値抵抗線とする。
(2)5.27円超えからは5.30円前後への上昇を想定する。5.29円以上は反落警戒とするが、5.22円以上での推移なら26日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.22円割れからは下落期入りとして5.19円、5.17円を順次試す下落を想定する、5.18円以下は反発注意とするが、5.22円以下での推移なら26日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月25日
16:00 7月 製造業信頼感指数 (6月 108.2)
16:00 7月 設備稼働率 (6月 76.8%)
7月27日
20:00 トルコ中銀 金融政策委員会議事要旨
20:00 トルコ中銀 四半期ベースの年末インフレ率予想調査
7月28日
16:00 6月 貿易収支 (5月 -125.3億ドル)
16:00 7月 経済信頼感指数 (6月 101.1)
7月31日
16:00 4-6月 四半期観光収入 (1-3月 86.9億ドル)
17:00 6月 海外観光客数 前年同月比 (5月 16.2%)
8月1日
16:00 7月 イスタンブール製造業PMI (6月 51.5)
注:ポイント要約は編集部
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