トルコリラ円見通し ドル円は下げ一服だがドル高リラ安続き史上最安値を連日更新
〇トルコリラ円、7/14は概ね5.32から5.25の取引レンジ、7/17は概ね5.34から5.24の取引レンジ
〇7/20にトルコ中銀金融政策委員会開催、それまでは大幅利上げ催促的なリラ売りが優勢となりやすいか
〇対ドル、下落速度が再び勢い付いてきた印象、終値ベースでは7/17日終値で26.33へ最安値を更新
〇取引時間中の最安値も7/14に26.27、7/17は26.37へ、7/18午前には26.47へと連日の更新
〇昨日発表された財政収支は過去最大の赤字、大地震の影響や財政収支の悪化により増税ラッシュ発生
〇5.28超えからは5.30試しとするが、5.30前後からの反落警戒とする
〇5.24割れからは5.22、5.20等を順次試してゆくとみる
【概況】
トルコリラ円の7月14日は概ね5.32円から5.25円の取引レンジ、15日早朝の終値は5.28円で前日終値の5.29円から0.01円の円高リラ安だった。週間では7月7日終値5.45円から0.17円の円高リラ安だった。
週明けの7月17日は概ね5.34円から5.24円の取引レンジ、18日早朝の終値は5.26円で先週末終値からは0.02円の円高リラ安だった。
昨年10月21日高値8.17円から今年1月16日安値6.74円まで下落した後はドル円の上昇に支えられて7円を挟んだ持ち合い相場を続けてきたが、5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落により6円割れへ急落して2021年12月20日に付けた当時の史上最安値6.17円を割り込み、6月22日のトルコ中銀利上げを不足として6月27日午前安値5.47円まで大幅続落した。その後は当面のリラ売り材料を消化して5.50円を挟んだ揉み合いとなっていたが、リラの先安感は変わらず先週の増税ラッシュやインフレの再上昇感や貿易赤字と経常赤字および財政赤字の拡大を嫌って売り優勢の展開となり、5.50円を挟んだ持ち合いから転落して史上最安値を連日更新している。
ドル円は7月14日に137円を試したところで6月30日の145.06円からの下落一服に入り、14日夜と17日夜には139円台前半へ戻したが、6月30日以降の下落基調から抜け出す勢いには欠けており、トルコリラ円にはあまり支えとなっていない印象だ。
今週は7月20日のトルコ中銀金融政策委員会に注目が集まる。前回会合では市場予想の21%への利上げに届かない15%への利上げにとどめたことがリラ売りを誘ったが、大幅な追加利上げで市場の信頼を回復できるか試されるが、それまでは大幅利上げ催促的なリラ売りが優勢となりやすいのではないかと思われる。
【週末と週明けに取引時間中の史上最安値を更新】
ドル/トルコリラの7月14日は概ね26.27リラから25.88リラの取引レンジ、15日早朝の終値は26.10リラで前日終値の26.00リラからは0.10リラのドル高リラ安だった。週間では7月7日終値26.06リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
週明けの7月17日は概ね26.37リラから25.79リラの取引レンジ、18日早朝の終値は26.33リラで先週末終値からは0.23リラのドル高リラ安だった。7月18日午前は26.47リラから26.14リラのレンジで推移しており史上最安値を更新している。
5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落に続き、6月22日のトルコ中銀による政策金利の8.5%から15.0%への利上げを不足としてリラ暴落が一段と進んで6月26日に26リラ台に到達し、その後は暴落商状の減速がみられていたが、徐々に取引時間中および終値ベースでの史上最安値更新が続いており、終値ベースでは7月12日の26.13リラの後は安値更新を回避していたものの7月17日終値で26.33リラへ最安値を更新した。取引時間中の最安値も7月11日の26.24リラを超えて7月14日に26.27リラとし、17日は26.37リラへ、18日午前には26.47リラへと連日の更新となり、やや緩んでいた下落速度が再び勢い付いてきた印象だ。
【トルコ中銀調査による年末見通しはCPIが43.82%、1ドル28.456リラ】
トルコ中銀は国内エコノミストに対する月次サーベイを行っているが、7月14日のサーベイ報告におけるエコノミスト予想では2023年末のCPI上昇率は前年比43.82%となり6月調査時の38.55%から上昇、12か月後のCPI上昇率についても前年比33.21%となり6月調査時の30.65%から上昇した。リラ安による通貨インフレを反映したものと思われる。
2023年末のドル/トルコリラ水準についての予想は1ドル28.456リラとなり6月調査時の26.180リラから大幅に切り下げられている。
またトルコ中銀の政策金利に対する予想では3か月後に24.79%(6月時点では21.65%)、12か月後に21.48%(6月時点では19.30%)といずれも上方修正されている。現時点の15.0%から3か月後にはさらに10%近い引上げが行われるとの予想だが、予想というよりもそうした利上げが適切という見方が示されたということだろう。
なお、2023年のGDPについては3.7%で6月時点の3.8%から低下、経常赤字は416億ドルで6月時点の403億ドルから拡大している。
【財政悪化と増税ラッシュ】
7月17日に発表されたトルコの6月財政収支は2196億リラの赤字となり5月の1189億リラの黒字から再び赤字に転落し、今年2月の1705億リラを超えて過去最大を更新した。月次の財政収支は周期的に単月の黒字を計上してもその後に赤字を連続させており、2020年以降は赤字と黒字の振幅が大幅に拡大して繰り返し過去最大赤字記録を更新している。
トルコ政府はインフレ対策として今年すでに2回の最低賃金の引上げを行っており6月下旬に34%引き上げ、公務員給与や退職年金の引上げを行ってきたが、2月6日に発生したトルコ・シリア大地震の影響や財政収支の悪化により増税ラッシュが発生している。
7月5日には一般の法人税を現行の20%から25%へ、金融機関の法人税を現行の25%から30%へ引き上げる法案を提出した。
7月7日からは国外から持ち込まれる携帯電話登録料が6091リラから2万リラへ引き上げられ、賭博税はスポーツ賭博が5%から10%へ、競馬が7%から14%へ、その他ゲームが10%から20%へいずれも倍増した。特に携帯電話については引き上げ前に隣国グルジアへ数千人のトルコ人が殺到したと報じられている。
またパスポートや労働許可証等の政府発行手数料が50%引き上げられた。
7月10日から付加価値税(VAT)を8%のカテゴリーについて10%へ、18%のカテゴリーについて20%へ引き上げた。農産物、中古車、食品、リース品などは1%、一部の食品・飲料、繊維製品、製薬原料、宿泊料、新聞、雑誌などは10%となっている。7月15日にはガソリン税が引き上げられている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月14日午前安値から反発に入ったものの7月17日午後高値からの反落で安値を更新しているため、17日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして19日午前から21日午前にかけての間への下落を想定する。強気転換には5.30円を超えてさらに続伸する反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では7月17日午後からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンから転落しているうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は7月14日よるから17日午後にかけての上昇時に指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せてから50ポイントを割り込んでいるため30ポイント台への低下余地があるとみる、強気転換には50ポイントを超えて60ポイントに迫る上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.24円を下値支持線、5.28円を上値抵抗線とする。
(2)5.28円手前は戻り売り有利とし、5.28円超えからは5.30円試しとするが、5.30円前後からの反落警戒とする。
(3)5.24円割れからは5.22円、5.20円等を順次試してゆくとみる。5.20円以下では反騰注意とするが、5.25円以下での推移なら19日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月20日
20:00 7月 消費者信頼感指数 (6月 85.10)
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利
週間レポレート (現行 15.0%、予想 20.0%、予想レンジ 17.0%〜21.5%)
翌日物貸出金利 (現行 16.50%)
翌日物借入金利 (現行 13.50%)
後期流動性貸出金利 (現行 19.50%)
20:30 週次 外貨準備高 7/14時点 グロス (7/7時点 698.4億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/14時点 ネット (7/7時点 131.7億ドル)
23:30 6月 中央政府債務残高 (5月 4兆7344億リラ)
7月25日
16:00 7月 製造業信頼感指数 (6月 108.2)
16:00 7月 設備稼働率 (6月 76.8%)
注:ポイント要約は編集部
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トルコリラ円ショートコメント(23/7/17)
実際のレンジは安値が5.20レベル、高値が5.45レベルと、予想よりも早くテクニカルなターゲットを試す上値の重い値動きとなりました。
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