『リラ売りの流れに歯止めが効かず。史上最安値を一段と更新』
〇今週のトルコ円、米国との関係改善期待に週初5.51まで上昇
〇買い一巡後はトルコ経済指標の不冴え等に週末にかけ5.25まで反落、史上最安値更新
〇トルコ円、全てのテクニカルポイントの下側で推移、全テナーで売りシグナルも点灯地合い弱い
〇ファンダメンタルズもトルコ経済の先行き不透明感、リラ防衛策の資本規制撤廃観測等が重石
〇来週はトルコ中銀の金融政策決定会合に注目集まる
〇引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):5.00ー5.50
今週のレビュー(7/10−7/14)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初5.45円で寄り付いた後、(1)エルドアン大統領によるスウェーデンのNATO加盟に向けた批准手続き同意発表(トルコとEUの関係性改善期待)や、(2)上記1を背景とした米国との関係性改善期待(米政府は米国製F16戦闘機をトルコに譲渡する方向性)、(3)トルコ5月失業率(結果9.5%、前回10.2%)の大幅改善が支援材料となり、週明け早々に、週間高値5.51円まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)トルコ5月経常収支(結果79.3億ドル赤字、予想74.0億ドル赤字)の市場予想を上回る赤字幅拡大や、(5)ロシア上院国防安全保障委員会のボンダレフ委員長による「挑発的な決定を下したトルコが非友好国になりつつある」との見解発表(トルコを巡る地政学的リスク再燃)、(6)トルコ5月鉱工業生産(結果▲0.2%、予想+0.8%)の市場予想を下回る結果、(7)トルコ6月住宅販売(結果▲44.4%、前回▲7.7%)の大幅悪化、(8)対主要通貨での円買い圧力(ドル円・クロス円急落→トルコリラ円連れ安)が重石となり、週末にかけて、史上最安値5.25円まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/15午前4時00分現在)では、5.29円前後で推移しております。
来週の見通し(7/17−7/21)
トルコリラの対円相場は、週末にかけて史上最安値を更新しました。日足ローソク足が全てのテクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線など)の下側で推移していることや、下位足(4時間足)から上位足(週足)に至る全てのテナーで強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感や、(2)エルドアン大統領の手腕に対する政治的不確実性(経済政策および金融政策正常化の道筋がこれまで同様エルドアン氏の一言で覆るリスクを孕んでいること)や、
(3)リラ売り抑制策の撤廃観測(市場のリラ売り圧力を抑制する目的で導入されてきた資本規制や為替介入が段階的に撤廃されるとの思惑→トルコリラが適正水準に向けて下げ足を速めるとの警戒感)など、トルコリラ円相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています(逆張り勢によるスワップ狙いのトルコリラ円ロングの強制ロスカットも上値を重くする要因の一つ)。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はトルコ中銀の金融政策決定会合に注目が集まります。前回は市場予想の1250bp(8.50%→21.00%)の利上げ幅に届かず、650bp(8.50%→15.00%)の利上げに留まった失望感から、リラ売りに拍車がかかりました。今回は300bp(15.00%→18.00%)の利上げが見込まれていますが、前回同様、市場の期待に届かない場合は、リラ売りで反応しそうです。状況次第では心理的節目5.00円を下抜けるシナリオも想定されるため、来週もトルコリラ円相場のダウンサイドリスクに注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(TRYJPY):5.00ー5.50
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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