来週の為替相場見通し:『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが継続か』(7/15朝)

ドル円は今週末にかけて、約2ヵ月ぶり安値となる137.25(5/17以来の安値圏)まで急落しました(僅か2週間で7.82円の暴落劇)。

来週の為替相場見通し:『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが継続か』(7/15朝)

『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが継続か』

〇今週のドル円、週初の143.01から急落、週末にかけて137.25をつけた後138.80付近で越週
〇米労働市場過大評価懸念、日銀の緩和修正観測、140円割れでの大規模ロスカット等が背景
〇米6月CPI、PPIはともに伸び率鈍化、それを受けての米長期金利の急低下も重石に
〇ユーロドル、週明けの安値1.0943から週末にかけて約1年4カ月ぶり高値1.1245まで急伸
〇ドル円、主要テクニカルポイント下抜け、買いシグナルも消失、テクニカルの地合い悪化
〇ファンダメンタルズも米国のインフレ鈍化期待、日銀による金融緩和の修正観測が重石
〇短期的なドル円下落をメインシナリオとして予想(※中長期のドル円上昇シナリオは継続)
〇来週の予想レンジ(USDJPY):137.00ー140.00、(EURUSD):1.1100−1.1400

今週のレビュー(7/10−7/14)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初142.20で寄り付いた後、(1)本邦5・10日要因に絡むドル買い・円売りや、(2)本邦5月貿易収支(結果1兆1867億円赤字、予想9503億円赤字)の市場予想を上回る赤字幅拡大、(3)本邦5月経常収支(結果1兆8624億円黒字、予想1兆9108億円黒字)の市場予想を下回る結果が支援材料となり、週明け早々に、週間高値143.01まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)米国の労働市場の実態が見た目の数字より弱いのではないか(ADPやNFPで出てくる数字がそもそも過大評価されているのではないか)との思惑や、(5)内田日銀副総裁による「YCCの修正について金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」との発言を切っ掛けとした日銀による金融緩和の修正観測(7/28に予定されている日銀金融政策決定会合でYCCの許容変動幅拡大に踏み切るとの思惑)、(6)心理的節目140.00を下抜けたことに伴う大規模ロスカット(円キャリートレードの巻き戻し)、(7)米6月消費者物価指数(結果+3.0%、予想+3.1%)および、米6月消費者物価コア指数(結果+4.8%、予想+5.0%)の市場予想を下回る結果、(8)米6月生産者物価指数(結果+0.1%、予想+0.4%)および、米6月生産者物価コア指数(結果+2.4%、予想+2.6%)の市場予想を下回る結果、(9)上記4、7、8を背景とした米長期金利の急低下(米国のインフレ沈静化期待→米FRBによる金融引き締め休止観測→米10年債利回りが7/7に記録した4.09%から3.75%へ急低下)、

(10)早川元日銀理事による「日銀が今月の会合でYCCの変動幅拡大に動く可能性がある」との見解発表、(11)読売新聞社による「日銀が7月展望レポートで物価見通しを引き上げる可能性がある」との観測記事が重石となり、週末にかけて、週間安値137.25(5/17以来の安値圏)まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(12)急ピッチな下落に対する反動買いや、(13)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(14)米7月ミシガン大消費者信頼感指数速報値(結果72.6、予想65.5)の市場予想を上回る結果、(15)上記14の内訳の1年先期待インフレ率(結果3.4%、予想3.1%)および5年先期待インフレ率(結果3.1%、予想3.0%)の市場予想を上回る結果、(16)米長期金利の反転上昇(米10年債利回りが3.75%から3.82%へ上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/15午前3時10分現在)では、138.79前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0971で寄り付いた後、(1)ユーロ圏7月投資家信頼感指数(結果▲22.5、予想▲17.9)の冴えない結果や、(2)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売りが重石となり、週明け早々に、週間安値1.0943まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)ECBによる金融引き締め長期化観測や、(4)米6月消費者物価指数および、米6月消費者物価コア指数の市場予想を下回る結果、(5)強力なレジスタンスとして市場参加者に意識されていた1.1100の壁(同水準は4/26高値1.1096、5/3高値1.1092、5/4高値1.1092と過去3度止められている強力な抵抗帯)の上方ブレイク、

(6)ECB理事会(6/15開催分)議事要旨における「必要に応じて7月以降の利上げを検討する可能性がある」とのタカ派的な結果、(7)米6月生産者物価指数および、米6月生産者物価コア指数の市場予想を下回る結果、(8)米長期金利の急低下、(9)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週末にかけて、昨年2/28以来、約1年4カ月ぶり高値となる1.1245まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間7/15午前3時10分現在)では、1.1233前後で推移しております。

来週の見通し(7/17−7/21)

<ドル円相場>
ドル円は6/30に記録した年初来高値145.07(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約2ヵ月ぶり安値となる137.25(5/17以来の安値圏)まで急落しました(僅か2週間で7.82円の暴落劇)。この間、日足ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線)を下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります(但し、90日移動平均線と200日移動平均線が位置する137.08の下方ブレイクには失敗)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米国におけるインフレ鈍化期待の高まり(米CPIおよび米PPIが共に市場予想を下回る結果→米FRBによる金融引き締め休止観測台頭→市場の年内2回の利上げ織り込みが年内1回の利上げ織り込みに低下→米長期金利低下→米ドル売り)や、(2)日銀による金融緩和の修正観測(内田日銀副総裁によるタカ派的な発言や、早川元日銀理事によるタカ派的な発言、読売新聞社による7月の日銀展望レポートで物価見通しが引き上げられる可能性があるとの報道→7/28に予定されている日銀金融政策決定会合でイールドカーブコントロールの許容変動幅拡大が実施されるとの思惑浮上)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの巻き戻し(約5年半ぶり高水準に積み上がっている円ショートポジションの更なるアンワインドリスク)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き短期的なドル円下落(上値の重い展開)をメインシナリオとして予想いたします(※中長期的なドル円上昇シナリオは継続)。もっとも、来週は、米6月小売売上高以外に目立った米国経済イベントが予定されておらず(ブラックアウト期間入りで米当局者発言も予定されておらず)、また、翌週に米FOMCや日銀金融政策決定会合などの重要イベントを控えていることもあり、ダウンサイドリスクを警戒しつつも、模様眺めでドル売り・円買いの速度は幾分和らぎそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):137.00ー140.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/6に記録した安値1.0833(6/15以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約1年4カ月ぶり高値となる1.1245(昨年2/28以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、1.1100近辺の強力な抵抗帯)を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECBによる金融引き締め長期化観測(ECB議事要旨のタカ派的な内容)や、(2)米FRBによる金融引き締め休止観測(米国のインフレ鈍化期待)、(3)上記1、2を背景とした欧米金利差縮小とそれに伴うユーロ買い・ドル売りトレンドの再開など、ユーロドルの更なる上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方ではユーロドル相場の続伸を来週のメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州高官発言(ラガルドECB総裁、レーンECB専務理事、スロベニア中銀バスレ総裁、エルダーソンECB専務理事、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁)や、ユーロ圏7月消費者信頼感指数に注目が集まります。

欧州高官によるタカ派的な発言(7月理事会での25bp利上げは織り込み済みであるため、その先の理事会での利上げ可能性の示唆)が出てくる場合や、ユーロ圏経済の底堅さが示される場合には、昨年2/10に記録した高値1.1496に向けて、ユーロ買いの流れに拍車がかかるシナリオも想定されることから、来週も週を通してアップサイドリスクに警戒が必要な時間帯が続きそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1100−1.1400

注:ポイント要約は編集部

『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが継続か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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