トルコリラ円見通し トルコ中銀の利上げ幅を不満とした暴落商状一服(23/7/3)

トルコリラ円の6月30日は概ね5.59円から5.52円の取引レンジ、7月1日早朝の終値は5.54円で前日終値の5.56円からは0.02円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の利上げ幅を不満とした暴落商状一服(23/7/3)

トルコ中銀の利上げ幅を不満とした暴落商状一服

〇トルコ円の暴落商状、対ドル等でのリラ暴落減速で落ち着き6/27史上最安値更新後は持ち直して推移
〇対ドル、6/30は26.09から25.95の取引レンジ、7/3日朝一時的に5.65へ上昇後5.60を割り込む
〇トルコ中銀新総裁の改革姿勢評価でトルコリラ落ち着くか、様子見つつ追加上げ催促のリラ安が続きそう
〇7/5に6月のトルコCPI(消費者物価指数)発表予定
〇5.68超えからは5.70前後への上昇を想定するが、5.70以上は反落警戒
〇5.56割れからは5.50前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の6月30日は概ね5.59円から5.52円の取引レンジ、7月1日早朝の終値は5.54円で前日終値の5.56円からは0.02円の円高リラ安だった。週間では6月23日終値5.67円から0.13円の円高リラ安、月間では5月31日終値6.70円円から1.16円の円高リラ安、月間下落率は17.3%安だった。
6月28日から30日まではトルコ市場は連休となりトルコ発の材料に欠いたが、対ドル等でのリラ暴落がやや減速する中でトルコリラ円の暴落商状もやや落ち着いており、6月27日に5.47円へ史上最安値を更新した後は持ち直し気味の推移となった。
7月3日朝には対ドルでリラが反発したことを反映して一時的に5.65リラへ上昇したが早々に売られて5.60円を割り込んでおり、6月26日から27日午前にかけて安値を更新した時の高安レンジ内にとどまっている。
ベンダーによってはレート提示に開きがあり、7月1日早朝の5.65円や7月3日午前序盤の5.68円の高値提示も見られるが、その他の3日午前序盤は概ね5.55円を挟んでの小動きのようだ。

ドル円は6月30日に145.06円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新したが、昨年9月には145円到達で日銀が円買い介入を実施していることと、6月26日以降は財務相や官房長官らによる円安けん制発言も相次いでいることで高値警戒感が出やすいところだが、昨年の市場介入も9月介入では円安を止められずに10月21日高値151.94円へ一段高した経緯があるのでまだしばらくは上昇基調を継続しやすいのではないかと思われる。しかし、トルコリラの暴落商状が再開するようだとドル円の上昇では支えきれず、市場介入を警戒してドル円がいったん下げるようだと、リラ安と円高の両面からトルコリラ円が崩れるケースも考えておきたい。

【対ドルでの暴落商状にやや落ち着きも】

ドル/トルコリラの6月30日は概ね26.09リラから25.95リラの取引レンジ、7月1日早朝の終値は26.05リラで前日終値の26.02リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
週間では6月23日終値25.23リラから0.82リラのドル高リラ安、6月の月間では5月31日終値20.80リラから5.25リラのドル高リラ安、下落率は25.2%となった。
一部ベンダーでは7月1日朝に一時25.55リラ近辺へのドル安リラ高のレート提示がみられ、3日午前序盤も25.90リラから25.70リラにかけてのレンジを提示しているが、その他では26.05リラ近辺での提示となっており、暴落一服感を見せながらも最安値近辺にとどまっている。

エルドアン大統領再選によるトルコ経済及び金融政策への不安感からトルコリラは暴落商状に陥り、6月22日のトルコ中銀による大幅利上げ予想を前にいったん落ち着いていたものの、トルコ中銀による利上げが市場予想の21%には届かない15.0%への引き上げにとどまったことで失望売りとなり1ドル24リラを超え、23日に25リラ台、26日に26リラ台へと史上最安値を更新してきた。
取引時間中の史上最安値は6月28日の26.19リラ、終値ベースでは6月28日と6月30日の終値26.05リラが最安値となっている。

【トルコ中銀新総裁らへの市場の信認はまだ薄い】

大手金融機関による大統領選挙後のリラ暴落予想では1ドル24リラ台から26リラ台、最悪のシナリオで年末に30リラというシナリオも見られたが、26リラ台到達によりリラ暴落がひとまず落ち着いてもよい頃合いとしても、今後のリラ反騰への手がかりにも欠ける状況だ。
エルドアン大統領は再選後にかつて市場の信頼を得ていたシムシェク氏を財務相とし、元ウォール街銀行家だったエルカン氏をトルコ中銀総裁に起用した。シムシェク財務相は中銀の利上げ後に「市場経済、自由為替相場制度、インフレ目標モデルに基づく予測可能な経済政策が資本流入を可能にしてリラを安定させるだろう」と述べており、市場の信頼を得ようとする姿勢を示している。 

トルコ中銀は6月22日の利上げ後にも追加利上げを示唆し、6月25日には2021年以降に適用されてきた数多くの取引規制を解除し、リラ防衛のために外貨準備高を取り崩して市場介入を繰り返してきたことを止め、一時マイナス勘定となった純外貨準備高はプラスに戻った。中銀高官は「為替レートは完全に自由市場によって決められる。外貨準備高を使うことはなく、外貨準備高を積み上げる期間が始まった」としている。
これらの改革姿勢を評価してトルコリラが落ち着けるのかどうか、まだしばらくは様子を見ながら追加利上げを催促するリラ安が続くのではないかと思われる。

【7月5日夕刻にトルコCPIの発表あり】

7月1日に発表された6月のイスタンブール小売価格の前月比は3.46%となり5月の1.66%から伸び、年率は64.27%となった。
前月比は2022年2月に13.8%で上昇率のピークを付けた後はジグザグの推移ながら低下傾向をつづけて今年5月がこの間の最低だったが、5月28日のエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落が収まらずにいることを踏まえれば、これから小売物価、消費者物価に通貨インフレが顕著に反映されることになると思われる。
7月5日に6月のトルコCPI(消費者物価指数)の発表がある。市場の事前予想では全体の前月比が5月の0.04%上昇から4.84%上昇へと伸びが大幅に再加速し、前年同月比は5月の39.59%から39.47%へとわずかに鈍化する程度で高止まりするとみられている。前月比の予想レンジは2.50%から5.50%、前年同月比の予想レンジは36.30%から40.30%となっている。
コア指数も注目されるが、5月の前年同月比は全体の39.59%に対してコア指数は46.6%と高く、エネルギー価格の低下で全体が下がったものの基底のインフレ率は高いままという状況だ。

トルコ中銀の利上げ幅を不満とした暴落商状一服

日足では概ね4か月から5か月前後の周期で主要な底打ちがみられる。2021年12月の乱高下後は2022年3月11日安値、5か月目の同年8月2日安値、5か月半の今年1月16日安値で底打ちしてきたが、6月27日安値まで5か月を経過しているのでいったんリラ売りが落ち着いてリバウンドに入る可能性も考えられる。その場合は7月前半から後半にかけての間への上昇を想定するが、戻りは短命の可能性もあり、史上最安値更新からは新たな下落期入りとなることにも注意したい。

日足の一目均衡表では先行スパンから大きく転落して遅行スパンが悪化した状況も続いているが、下げ渋りにより遅行スパンが実線に接近してゆくケースが考えられる。9日転換線を超えないうちは下げ渋りの横ばい程度で時間調整に終わるとみるが、9日転換線を超える場合は26日基準線を目指す上昇を想定する。

日足の相対力指数は10ポイント台へ低下したが、大統領再選後の急落とその後の一段安では指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられるので目先は戻りを試しやすいところとみる。ただし、30ポイント台では戻り売りも出やすく、長期的な下落基調は継続と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.56円を下値支持線、5.68円を上値抵抗線とする。
(2)5.68円超えからは5.70円前後への上昇を想定するが、5.70円以上は反落警戒とする。
(3)5.56円割れからは5.50円前後への下落を想定する。5.50円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、5.56円以下での推移なら7月4日も安値試しへ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

7月03日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 51.5)
 16:00 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.04%、予想 4.84% 予想レンジ 2.50〜5.50%)
 16:00 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 39.59%、予想 39.47%、予想レンジ 36.30〜40.30%)
 16:00 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 4.2%)
 16:00 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 46.6%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.65%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 40.76%)
7月06日
 NATO加盟巡るスウェーデンとトルコのハイレベル会合(ブリュッセル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/23時点 グロス (6/16時点 607.8億ドル) 
 20:30 週次 外貨準備高 6/23時点 ネット (6/16時点 4.7億ドル) 
7月07日
 23:00 6月 財務省現金残 (5月 1698.2億リラ)
7月10日
 16:00 5月 失業率 (4月 10.2%)
7月11日
 16:00 5月 経常収支 (4月 -54.04億ドル) 


注:ポイント要約は編集部

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