ドル高リスク継続も、介入警戒が上値を抑制(週報7月第1週)

先週のドル/円相場はドルが続伸。週末6月30日には昨年11月10日以来となる一時145円台を付ける局面も。

ドル高リスク継続も、介入警戒が上値を抑制(週報7月第1週)

ドル高リスク継続も、介入警戒が上値を抑制

〇ドル円、6/30に11/10以来となる一時145円台つけるも維持できず軟落、144.30レベルで越週
〇6/28ECBフォーラム主要国中銀トップの講演で金利差拡大観測が話題となり、145円台乗せを後押し
〇145円台は本邦当局が昨年9月円買い介入し最大5円超える下押しをしたレベルのため、ドルの上げ渋りも
〇今週は6月ISM製造業景況指数や同雇用統計等の米経済指標の発表、6月米FOMC議事録要旨公開に注目
〇ドル高円安方向は先週高値145.07の攻防に注目、上抜ければ146円台も視界内
〇ドル安円高方向は144円レベルが最初のサポート、割り込んでも142円後半から143円は底堅いイメージ
〇今週のドル/円予想レンジは、142.00-146.00

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが続伸。週末6月30日には昨年11月10日以来となる一時145円台を付ける局面も。

前週末は、ロシアで「ワグネルの乱」とでも言うべき動きが観測され、関連ニュース一色だった。一方、別途ロイターが「バイデン米大統領は6月28日にシカゴで主要な経済政策『バイデノミクス』に関して演説する予定」と報じ話題を呼んでいたもよう。
そうした状況下、ドル/円は143.60円レベルで寄り付いたのち、143円を割り込み週間安値の142.94円を示現した。しかし、以降はドル買い・円売りが目に付く格好で、実際27日から週末30日までドルは連日年初来高値を更新している。途中、鈴木財務相など本邦要人からの円安けん制発言が折について伝えられたものの、それをこなしつつ、ついには145円台。昨年9月の円買い介入観測レベルまで一時ドル高・円安が進行していた。ただ、週末NYでは145円台を維持できず軟落、144.30円レベルで推移し越週している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米欧の金融政策」と「ワグネルの乱」について。
前者は、6月28日のECB年次フォーラムに、ラガルドECB総裁のほかパウエルFRB議長や植田日銀総裁、ベイリー英中銀総裁など主要国の中銀トップが登場。それぞれ実施した講演が金融市場で話題となった。各氏とも自国の金融政策等について発言したわけだが、たとえばパウエル氏は「FOMCが7月と9月の会合で政策金利を引き上げる可能性がある」ことを排除しなかった。一方、ラガルド氏は「基本シナリオが続くなら7月に利上げする」と発言。また植田氏は、政策転換に含みを残しつつも「インフレ率の2%回帰を持続的に達成するにはまだ幾分の距離がある」と慎重なスタンスを維持していたようだ。改めて日米などの金利差拡大観測が取り沙汰され、ドル/円の145円台乗せを強く後押ししていた。

対して後者は、前週末にロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が反乱と思しき行動に出ると、「モスクワまであと200キロ」のところへと進軍。情勢は一時かなり緊迫したムードとなるも、ベラルーシ大統領の仲介もあり、結局ワグネル側が提案を受け入れ軍を引くという決断で矛を収め、わずか一日での終戦となった。しかし、のちにプリゴジン氏の消息が不明になるなど、「ワグネルの乱」をめぐる混乱はその後も予想以上に長く尾を引く格好に。なお、英外相から「ワグネル蜂起でプーチン氏支持に亀裂が入った」といったロシアの国家基盤の脆弱さを取り沙汰する発言が聞かれていたが、予想通りだといった指摘も少なくない。今週も関連報道などには引き続き要注意だ。

<< 今週の見通し >>

ドル/円の日足を見ると、過去10営業日で9回の高値更新。前日高値を、翌日に超えられなかったのは先週初め6月26日のみだ。ドルの基調の強さを示すひとつの指標と言えるかもしれない。いずれにしても、今週も基本的にはドル高傾向が続く見込みで、146円あるいは147円に向けたドル高進行が続きそう。ただ、改めて指摘するまでもなく先週末に一度示現した145円台は日本の通貨当局が昨年9月に円買い介入出動したレベル。ドルの上値を強く抑制する可能性も否定できず、ドルは上げ渋りもあるか。

引き続き日米欧の金融政策に関心を寄せる向きが多いなか、前述した先週のECB年次フォーラムにおけるスピーチでも示されたように、単純な金利差ということでいえば円がもっとも売られやすい通貨であることに間違いはない。対ドル以外、ユーロやポンドなどでも円安が進む可能性もある。しかし、日銀の金融政策スタンスはそう簡単に変わらないものの、米国については発表される指標次第で市場の見方が一変しかねないリスクを孕んでいる。つまり、週末発表予定の米雇用統計などの内容如何では一転ドル売りに拍車のかかる展開もありそうだ。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は先週一時145円台を示現するなど、基本的なリスクは引き続きドル高方向にバイアス。高値151.94円を起点にした大きな下げ幅のフィボナッチでは、61.8%戻しをすでに超えてきており、次のターゲットは76.4%戻しの146.10円レベルか。なお、同レベルを超えるとしばらく強い抵抗がない状態になることもあり、さらなるドル高進行も否定できない。

しかしその反面、政府・財務省による実弾介入が観測されれば、なかなか大きな下押しも。昨年9月の介入時には、最大で5円を超える下押しだった。

そうしたなか今週も、6月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった米経済指標の発表が相次ぐうえ、6月に実施された米FOMCの議事録要旨公開、3日に発表される日本の「日銀短観」を警戒する声もあるようだ。

そんな今週のドル/円予想レンジは、142.00-146.00円。ドル高・円安については、先週高値145.07円の攻防にまずは注目。上抜ければ146円台も視界内に。
対してドル安・円高方向は、連日ドルの下値が切り上がっていることもあり、パターンの崩れがあるのか否かを最初に見極めたい。そうした意味では144円レベルが最初のサポートで、割り込んでも142円後半から143円では底堅いイメージだ。

ドル高リスク継続も、介入警戒が上値を抑制

ドル円日足

注:ポイント要約は編集部

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