ドル円見通し 145円到達の高値警戒感でやや押すも上昇トレンドを維持(週報7月第一週)

ドル円は、6月30日午前には145.06円を付けて昨年11月10日に米CPIが大幅に鈍化したことによる「逆CPIショック」で145円を割り込んだ時以来の水準へ上昇した。

ドル円見通し 145円到達の高値警戒感でやや押すも上昇トレンドを維持(週報7月第一週)

ドル円見通し 145円到達の高値警戒感でやや押すも上昇トレンドを維持

〇ドル円、パウエルFRB議長の利上げ継続姿勢と米GDP確報の上方修正等に145.06まで上昇
〇その後発表の米PCEデフレーターは鈍化、ドル円反落するも年内あと2回の利上げ見通しは変わらず
〇米長期債利回りはまちまち、10年債利回りは一時3.89%を付け4月6日の3.25%以降の高値を更新
〇ドル円、6月は4度の3連騰で昨年9月の介入時水準に到達
〇144.60以下での推移中は一段安余地あり、144円割れからは143円台中盤を試すとみる
〇144.60超えからは145円試し、介入がなければ145.50、146.00、146.50を順次試して行く流れか

【概況】

ドル円は6月24日未明に143.87円へ上昇して144円に迫った段階で神田財務官、鈴木財務相、松野官房長官らの円安けん制発言が繰り返されたことで26日午後には142.94円までいったん下げたが、ドル高円安基調は継続するとの見方を優勢として6月27日夜に144.16円、28日夜に144.61円、29日夜に144.89円と連日の高値切り上げへ進み、6月30日午前には145.06円を付けて昨年11月10日に米CPIが大幅に鈍化したことによる「逆CPIショック」で145円を割り込んだ時以来の水準へ上昇した。
パウエルFRB議長がECB主催フォーラムで利上げ継続姿勢を繰り返し示したことや、6月29日の米GDP確定値が予想以上に上方修正されたこと等がドル円を145円到達まで押し上げてきたが、6月30日に発表された米5月PCE(個人消費支出)デフレーターが鈍化したことで30日夜にドルが一時売られたために144.20円まで反落、その後は新たな安値更新を回避したものの144円台序盤での推移にとどまって週を終えている。

【米PCEデフレーターは鈍化だが、年内あと2回の利上げ見通しは変わらず】

米商務省による5月のPCE(個人消費支出)デフレーターの上昇率は前年同月比.3.8%となり、予想と一致したが4月の4.3%から大幅に鈍化して2021年4月以来凡そ2年ぶりの低水準となった。変動の激しいエネルギー・食品を除いたコア指数の上昇率は前月比で0.3%となり予想と一致したが4月の0.4%から鈍化し、前年同月比は4.6%で4月の4.7%および市場予想の4.7%を下回った。
全体の前年同月比が大きく鈍化したのはエネルギー関連が前年同月比13.4%低下したことが反映されたものだが、サービス価格は5.3%上昇で高止まりしており、インフレ鎮静化への期待感を見せつつもまだFRBによる追加利上げが必要との印象を与えた。

米MNIインディケーターズによる6月のシカゴ購買部景況指数は41.5となり、5月の40.4から上昇したが市場予想の44.0を下回った。
米ミシガン大による6月消費者調査確報値では、信頼感指数が64.4となり、速報の63.9から上方修正されて5月確報値の59.2から大幅な改善となった。また市場の関心が高い1年先期待インフレ率は確報値で3.3%となり5月の4.2%から低下、5年先期待インフレ率は3.0%で5月の3.1%から若干低下した。

【米長期債利回りはまちまち、週間では上昇】

6月30日の米長期債利回りはまちまちの動きだった。長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずの3.84%、30年債利回りは0.04%低下の3.86%、利上げに敏感な2年債利回りは0.03%上昇の4.90%で週を終えた。10年債利回りは一時3.89%を付けて5月26日の3.86%を超えて4月6日の3.25%以降の高値を更新、5月後半からの持ち合いを上抜けつつあるものの、勢いはまだ鈍い。週間では6月23日の3.74%からは0.10%の上昇だった。

2年債利回りは一時4.94%を付けて3月24日の3.56%以降の高値を更新、週間では6月23日の4.75%から0.15%の上昇で、3月8日に付けた昨年来のピークである5.08%へ徐々に迫ってきている。ドル円にとっては2年債利回りが先導して米長期債利回り上昇基調を形成していることが大きな押し上げ要因になっている。
6月30日のNYダウは前日比285.18ドル高と上昇、29日の269.76ドル高から連騰した。ナスダック総合指数も196.59ポイント高の上昇で29日の0.42ポイント安から反騰した。米FRBによる利上げ継続と年内利下げ期待の後退は株式市場には重石だが、景気減速の程度もソフトランディングに収まるとの楽観が優勢のようだ。米国株高が日経平均の上昇に寄与すればドル円にもプラスとなりやすい。

【6月は4度の3連騰で昨年9月の介入時水準に到達】

1月16日安値を起点として3月8日までの上昇を一段目とすれば、3月24日安値から現状までが二段目の上昇といえるが、6月以降では、6月9日から13日へ3連騰、1日置いて6月15日から19日へ3連騰、6月21日から23日へ3連騰、6月27日から29日へ3連騰と、1日の反落を入れながら4回の3連騰で上昇してきた。
3月24日安値からの上昇角度は昨年8月2日安値から10月21日高値へ上昇した局面よりもやや角度は鈍いものの、昨年5月24日安値から10月21日高値までの上昇角度と比較すればほぼ同等であり、昨年の歴史的な大上昇が再現されている印象を強めている。
昨年10月21日高値から今年1月16日安値までの下落幅24.73円に対してすでに半値戻しの139.58円、3分の2戻しの143.71円をクリアしており、145円到達での抵抗感を消化してさらに高値を伸ばしてくれば上値抵抗線となるべき過去の高値は昨年10月21日の151.94円まで見当たらなくなる。

1995年4月19日安値79.70円から1998年8月11日高値147.63円まで上昇幅67.93円の大上昇時には、1997年5月1日高値127.46円までの当初2年の上昇で上昇幅47.76円の後に同年6月11日安値110.52円まで16.94円の下落を入れてから一段高しており、2021年1月6日底から2年弱の上昇で昨年10月21日高値まで49.38円の上昇幅だったところから今年1月16日安値まで24.72円の反落を入れて切りかえしている現状が当時に近い印象もある。

昨年は9月と10月に政府・日銀が円買い単独介入を実施したが、9月の介入時は145円到達水準で実施されており、9月22日の介入では145.89円の高値を付けたところから安値で140.36円へ急落したが、円安継続感によりバーゲンハント買いされて10月21日の151.94円へ一段高となり、そこで大規模介入が実施されたことで天井を形成した経緯がある。
6月30日に発表された米5月PCEデフレーターは予想を下回ったことで米FRBによる利上げペースが加速する心配は後退したものの年内あと2回の利上げ見通しや年内の利下げはないだろうとの見方は変わらず、日銀が金融緩和政策を継続していることとの差によるドル買い円売りの流れは多少の調整安を入れながらも継続しやすく、昨年秋のような市場介入があるのかどうか、市場も挑発的に高値追及を続けるのではないかと思われる。

【日足一目均衡表・サイクル分析】

【日足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は3月24日安値を起点とした上昇を継続しているが、5月30日高値140.92円から140円を挟んだ小持ち合いを入れてから一段高しているため、持ち合い上放れを起点として新たな上昇期に入っているとすれば、1月16日からの上昇が三段目に入っている可能性も考えられる。
日足レベルにおける次の高値形成期としては5月30日高値を基準として7月末から8月にかけての間と想定し、直前高値から3円に満たない調整安なら消化後に高値更新を繰り返して行くのではないかと思われる。
短期的には145円到達と米PCEデフレーターの発表を通過したことでやや調整気味の推移に入りやすいところであり、144円を維持するか一時的に割り込んでも切り返す場合は上昇継続とみて7月5日から7日にかけての間への上昇を想定する。ただし、144円割れからさらに続落し、当局による円安けん制レベルがこれまでよりもきつくなる場合は143円台前半を試してから次の上昇期へ向かう展開を想定する。

日足の一目均衡表では4月末の急伸により遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持している。9日転換線が階段下がりの低下を見せないうちは同線に絡む水準で買われやすく、同線が低下傾向に入る場合は弱気転換注意として26日基準線を試す下落を想定するが、26日基準線前後は押し目買いされやすい水準と考える。昨年9月の市場介入時には26日基準線が下値支持線となり、その後に反騰している。

日足の相対力指数は70ポイント台に来ているが、5月30日高値時よりも指数のピークは切り上がっておりまだ弱気逆行の気配は見られないのでまだ一段高の余地がありとみる。相場が高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がるようだと日足レベルの調整安に入る可能性ありと注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144.00円を下値支持線、144.60円を上値抵抗線とする。
(2)目先は145円到達後の調整局面とみて144.60円以下での推移中は一段安余地ありとし、144円割れからは143円台中盤(143.70円から143.30円)を試すとみる。143.50円以下は反騰注意とし、下げ足が早まる場合は143円台序盤を試す可能性もあるとみるが、143円台序盤は買い拾われやすい水準とみる。
(3)144.60円超えからは145円試しとし、6月30日高値145.06円超えからは円安けん制発言もエスカレートする可能性や昨年9月のような市場介入もあり得ると注意するが、介入がなければ145.50円、146.00円、146.50円を順次試して行く流れとみる。市場介入の場合は急落商状に陥るとみるが、昨年9月22日の急落とその後の反騰を参考としたい。

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

7/3(月)
休場 カナダ
米国は株式・債券市場が短縮取引
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -2.6%)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (1-3月 1、予想 3 )
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行き (1-3月 3、予想 4)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (1-3月 20、予想 22)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (1-3月 15、予想 21)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (1-3月 3.2%、予想 10.0%)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -8.1%)
10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 50.9、予想 50.0)
16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 41.0)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 43.6)
17:30 (英) 6月 製造業PMI改定値 (速報 46.2)
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 46.3)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 46.9、予想 47.3)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 1.2%、予想 0.5%)

7/4(火)
休場 米国
上海協力機構首脳会議
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 -1.1%)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.10%、予想 4.35%)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 184億ユーロ)

7/5(水)
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 57.1、予想 55.6)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 54.1)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 52.4)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 53.7)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 -3.2%)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 1.0%)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 0.4%、予想 -0.1%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

7/6(木)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 111.58億豪ドル)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -0.4%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -9.9%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.0%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -2.6%)
21:15 (米) 6月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (5月 27.8万人、予想 25.0万人)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -746億ドル、予想 -702億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 174.2万人)
21:45 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論会
22:45 (米) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 54.1)
23:00 (米) 6月 ISM非製造業景況指数 (5月 50.3、予想 51.2)
23:00 (米) 5月 雇用動態調査(JOLTS)求人件数 (4月 1010.3万件)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計

7/7(金)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 -4.4%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数(CI)速報値 (4月 96.8)
14:00 (日) 5月 景気一致指数(CI)速報値 (4月 97.3)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.3%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 1.6%)
18:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 6月 非農業部門就業者数 前月比 (5月 33.9万人、予想 21.3万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 3.7%、予想 3.6%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 4.3%)
23:30 (英) マン英中銀委員、講演
25:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、パネル討論会

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