来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大を背景に円キャリートレードが続く見通し』(7/1朝)

ドル円は3/24に記録した直近安値129.65をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約7カ月半ぶり高値となる145.07(昨年11/10以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大を背景に円キャリートレードが続く見通し』(7/1朝)

『日米金利差拡大を背景に円キャリートレードが続く見通し』

〇今週のドル円、週明けの安値142.94から週末にかけ一時年初来高値145.07まで急伸
〇株価の堅調、米景気先行きへの楽観、米金利先高感と本邦緩和継続のコントラスト等が背景
〇ユーロドル、週初1.0977まで上昇後、米長期金利上昇とドル買いに週末にかけ一時1.0835まで反落
〇ドル円、テクニカル的に見て地合いの強さを連想させる力強いチャート形状
〇昨年のような「悪い円安」と異なり本邦当局が焦って実弾介入に踏み切る可能性は低いか
〇米金利上昇に伴うドル買い圧力と、米株上昇に伴うリスク選好の円売りが並走するシナリオ想定
〇来週の予想レンジ(USDJPY):143.00ー147.00、(EURUSD):1.0725−1.1025

『日米金利差拡大を背景に円キャリートレードが続く見通し』

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初143.57で寄り付いた後、(1)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(2)日経平均株価の冴えない動き(リスク回避の円買い圧力)、(3)神田財務官による「為替、行き過ぎた動きには適切に対処したい」「為替、足もとは急速で一方的」との円安牽制発言、(4)松野官房長官による「行き過ぎた動きに対しては適切に対応」「足もとでは急速で一方的な動きも見られる」「為替相場の動向を高い緊張感を持って注視する」との円安牽制発言が重石となり、週明け早々に、週間安値142.94まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)中国経済に対する楽観的な見通し(李強中国首相による「第2四半期の経済成長は第1四半期を上回る見通し」との楽観発言→リスク選好ムード→クロス円上昇→ドル円連れ高)や、(6)米5月耐久財受注(結果1.7%、予想▲1.0%)の市場予想を上回る結果、(7)米4月住宅価格指数(結果0.7%、予想0.4%)の市場予想を上回る結果、(8)米4月ケースシラー住宅価格(結果▲1.70%、予想▲2.55%)の市場予想を上回る結果、(9)米5月新築住宅販売件数(結果76.3万件、予想67.4万件)の市場予想を上回る結果、(10)米6月コンファレンスボード消費者信頼感指数(結果109.7、予想103.8)の市場予想を上回る結果、

(11)米6月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲7、予想▲13)の市場予想を上回る結果、(12)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(13)米主要株価指数の堅調推移、(14)バイデン米大統領による「米国経済は強固でありリセッションに陥るとは予想していない」との楽観的な発言、(15)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(16)パウエルFRB議長による「あと2回の利上げが多数派」「政策は制約的だが十分ではない」「連続利上げの可能性を選択肢から外さず」とのタカ派的な発言、(17)植田日銀総裁による「基調的なインフレは目標を下回っているため政策変更を実施していない」とのハト派的な発言、(18)米新規失業保険申請件数(結果23.9万件、予想26.6万件)の良好な結果、(19)米1ー3月期GDP統計確報値(結果2.0%、予想1.3%)の市場予想を上回る結果、

(20)パウエルFRB議長による「理事会の大半が年末までに2回かそれ以上の利上げ実施を予想している」「労働市場は非常にひっ迫」「インフレは目標を大幅に上回っている」との連日のタカ派発言、(21)アトランタ連銀ボスティック総裁による「更なる利上げの必要性を絶対に排除しない」「たとえ金利が維持されたとしてもインフレの進行は続くと見られる」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、年初来高値145.07(昨年11/10以来の高値圏)まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(22)本邦当局による介入警戒感の高まりや、(23)週末を控えたポジション調整、(24)米5月PCEコアデフレータ(結果4.6%、予想4.7%)の市場予想を下回る結果、(25)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間7/1午前4時00分現在)では、144.26前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0897で寄り付いた後、(1)米金利低下に伴うドル売り圧力や、(2)ECBフォーラムを控えたポジション調整、(3)中国経済の楽観見通し(李強中国首相による「第2四半期の経済成長は第1四半期を上回る見通し」との発言→リスク選好ムード)、(4)ラガルドECB総裁による「ターミナルレートに到達した兆候はない」「ユーロ圏のインフレは高すぎる、賃金上昇からの影響が最近増加」とのタカ派的な発言、(5)リトアニア中銀シムカス総裁による「利上げサイクルはまだ終わっていない」「インフレ目標2%を達成するため、制約的な金利水準まで引き上げる必要がある」とのタカ派的な発言、

(6)ラトビア中銀カザークス総裁による「インフレ率が高過ぎることから景気が減速してもECBは次回会合以降も利上げを継続する見通し」とのタカ派的な発言、(7)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(8)欧州株の堅調推移が支援材料となり、翌6/27にかけて、週間高値1.0977まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(9)米経済指標の良好な結果や、(10)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0835まで反落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、

(11)米5月PCEコアデフレータ(結果4.6%、予想4.7%)の市場予想を下回る結果や、(12)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/1午前4時00分現在)では、1.0913前後まで持ち直す動きとなっております。尚、今週はドイツ6月HICP速報値(結果+6.8%、予想+6.7%、前回+6.3%)の伸び率加速や、欧州当局者(ラガルドECB総裁、レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミスト、デギンドスECB副総裁、エストニア中銀ミュラー総裁など)によるタカ派発言が相次ぎましたが、ユーロ買いでの反応は限定的となりました。

来週の見通し(7/3−7/7)

<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した直近安値129.65をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約7カ月半ぶり高値となる145.07(昨年11/10以来の高値圏)まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、昨年10/21高値151.95と本年1/16安値127.22を起点としたフィボナッチ61.8%戻し142.50)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを連想させる力強いチャート形状となっております。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は今週、2日続けでタカ派的な見解を強調)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁はECBフォーラムで緩和政策の継続が正当であることを強調)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの活発化期待など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。

週末に到来した145円台は昨年9月に日銀が24年ぶりに円買い介入を実施した水準でもあるため、鈴木財務相や神田財務官、松野官房長官による口先介入も活発化しており、市場では実弾介入への警戒感・緊張感が高まりつつあります。但し、「今年の円安」は昨年のような「悪い円安」のイメージから遠ざかっているため(※日経平均株価の上昇と円安が並走していることや、日本経済に復調の兆しが見えること)、本邦当局が焦ってこの水準で実弾介入に踏み切る可能性は低いと判断できます。あくまで、昨年記録した高値151.95を突破するまでは、実弾介入には踏み切らず、口先介入を通じて円安の速度を緩めることに徹すると推察されます。

こうした中、来週は、日本側では日銀短観、米国側では米6月ISM製造業景況指数、米6月非製造業景況指数、米6月雇用統計に注目が集まります。日銀短観については、製造業・非製造業ともに改善が示される可能性が高く、日本株高→リスク選好の円売りの流れに弾みがつくと考えられます(※日銀による政策修正期待に繋がる公算は小さいため、強い日銀短観→政策修正期待浮上→円買いの波及経路は想定せず)。米6月ISM製造業・非製造業、米6月雇用統計については、これまで同様、堅調な数字が期待される他、平均時給も労働市場の逼迫を背景に底堅い動きが続くと見られるため、米金利上昇に伴うドル買い圧力(7月FOMCでの利上げ観測)と、米株上昇に伴うリスク選好の円売り(力強い米経済指標を背景とした米株上昇)が並走するシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続を来週のメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):143.00ー147.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は6/22に記録した高値1.1012をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時1.0835まで反落しました(5/31安値1.0634をボトムに6/22高値1.1012まで続いた短期上昇トレンドが終了したとの見方が浮上)。日足ローソク足が一目均衡表転換線や雲上限を下抜けしたことや、来週7/4に雲のねじれが到来すること、1.11台にそびえる強力なレジスタンスをまたしても突破できなかったこと、4時間足などの下位足でも売りシグナルに転じたこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週はドイツ6月IFO企業景況感指数が冴えない結果→IFO経済研究所による「ドイツ経済が第2四半期に再び縮小する可能性が高まっている」とのネガティブ発言)や、(2)上記1を背景としたECBによる金融引き締め打ち止め観測(ECB当局者の大半がタカ派的な発言を繰り返すも市場の感応度が著しく低下)、(3)米FRBによる金融引き締め長期化観測、(4)上記2、3を背景とした欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力など、ユーロドル相場の続落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では、ユーロドル相場の見通しをブルからベアに変更いたします。

尚、来週は、ECB当局者発言(フランス中銀ビルロワドガロー総裁、デギンドスECB副総裁、ラガルドECB総裁)以外に目立った欧州経済指標が予定されておらず、またECB当局者発言に対する市場の感応度も著しく低下していることから(タカ派的な発言が出てもユーロ買いで反応しなくなったことから)、ユーロ主導の動きは想定しづらく、結果として米ドルの動きに振らされる展開を予想いたします(当方は、米6月ISM製造業指数、米6月ISM非製造業指数、米6月雇用統計がいずれも力強い結果を示すと予想しているため、「米経済指標の良好な結果→米利上げ観測再浮上→米長期金利上昇→米ドル独歩高→ユーロドル下落」の波及経路を想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0725−1.1025

注:ポイント要約は編集部

『日米金利差拡大を背景に円キャリートレードが続く見通し』

ドル円日足

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