ユーロ 1.10の大台を見てもみあいに(週報6月第4週)

先週のユーロドルは、週前半は全く動かず、木曜には英中銀が予想よりも大きく0.5%の利上げに踏み切った直後に週間高値となる1.1011レベルをつけました。

ユーロ 1.10の大台を見てもみあいに(週報6月第4週)

1.10の大台を見てもみあいに

〇先週のユーロドル、6/22英中銀予想以上の利上げ直後に1.1011レベルに上昇後、材料出尽くしで下落
〇弱い欧州の経済指標をきっかけにユーロが対ドル対円とも売られ、ユーロドルは1.08台半ばまで下げる
〇各国の金融政策の方向性の違いから、ユーロ円や対欧州通貨でのクロス円での円売りが目立つ
〇6/26, 27のECB総裁講演、主要国中銀総裁の発言によりドルストレートでユーロが売られる可能性も
〇今週も1.0850レベルをサポートに、大台1.1000レベルをレジスタンスとするレンジを見る

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、週前半は全く動かず水曜のNY市場でユーロ円の買いがリードする形でユーロドルにも買いが入り、木曜には英中銀が予想よりも大きく0.5%の利上げに踏み切った直後に週間高値となる1.1011レベルをつけました。しかし、1.10の大台超えでは利食い売りが控えていたこと、ポンドが利上げ後から材料出尽くして売りに転じたことも重なり、ユーロドルも下げ始める動きとなりました。金曜は弱い欧州の経済指標をきっかけにユーロが対ドル、対円とも売られ、ユーロドルは1.08台半ばまで下げましたが、同水準では押し目買いも見られ引き続きユーロドルは値幅を伴わない一週間となりました。

先週はユーロドルよりもユーロ円や対欧州通貨でのクロス円での円売りが目立ち、ポンド円がブレグジット前の2015年以来、ユーロ円はリーマンショック前の2008年以来、スイス円に至っては史上最高値と軒並み円大幅安の動きが目立ちました。ユーロドルが1.10の大台を回復した原動力もユーロ円の買いが大きく影響したと見られます。各国の金融政策の方向性の違いから円一人負けの状態が続いていますが、クロス円では直接日本の当局が円安懸念を示さないとみられることから、ドル円よりも対欧州通貨で円を売る動きが強まっています。

この円安の流れは当面続きやすいことを考えると欧州通貨クロスが欧州通貨の対ドルの動きも支えることとなり、下がったところでは買い直す動きが今週も入りやすいと言えます。ただ、先週のPMI速報値を見ていると欧州での景気減速懸念が高まりそうですし、今週はECBフォーラムでラガルドECB総裁をはじめ主要国の中銀総裁の講演もあるため、その場で欧州の景気に言及したり、ECBの利上げ継続に水を差したりといったことがある場合には、ドルストレートでユーロが売られる可能性もあり、その点には注意しておきたいところです。 

また今週は主要国のCPIも出てきますので、その数字が予想に対して上振れ、下振れがある場合にはどちらの方向にも注意が必要ですが、基本は先週のレンジ内での値動きを継続しやすいと見ていてよいでしょう。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

1.10の大台を見てもみあいに

3月安値と4月高値との78.6%(61.8%の平方根)押しで下げ止まったのと同じく、4月高値と5月安値の78.6%(61.8%の平方根)戻しもまた上値を抑えられる結果となりました。大きくは1.10の大台より上にはまだユーロ売りオーダーが残っていたという流れです。また下値に関しても1.08台前半では買い直しのオーダーが入っている様子で、ユーロドルは今週も上下ともに限界的な値動きになってきそうです。

発言や指標といったイベント直後の動きに注意しつつも、今週も1.0850レベルをサポートに、大台1.1000レベルをレジスタンスとするレンジを見ておくこととします。

今週のコラム

今週はスイス円の四半期足チャートをご覧ください。1972年4月以降の動きが全て示されています。

1.10の大台を見てもみあいに 2枚目の画像

1979年高値と2015年高値(スイスフランショック)はほぼ同水準ですが、2015年高値はかなりばらつきがあるため、1979年高値を抜けたら史上最高値というチャートだったと言えます。そして今回のクロス円での円安の流れの中でスイス円は史上最高値を更新してきました。

数字的には160円というのはいったん止まりやすい水準ですが、今後もみあいを経て再上昇という際には未知の領域ですから、165円、170円といった節目程度しかレジスタンスとなる水準は無いことになります。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

6月26日(月)
16:15 フランス中銀総裁講演 ☆
17:00 ドイツ6月ifo企業景況感
26:30 ラガルドECB総裁講演 ☆

6月27日(火)
17:00 ラガルドECB総裁講演 ☆

6月28日(水)
15:00 ドイツ7月消費者信頼感 ☆
15:45 フランス6月消費者信頼感 ☆
19:30 英中銀チーフ・エコノミスト講演 ☆
22:30 パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、英中銀総裁、植田日銀総裁講演 ☆
25:00 フランス中銀総裁講演 ☆

6月29日(木)
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感☆
21:00 ドイツ6月CPI速報値 ☆
**:** EUサミット(〜30日)☆ 

6月30日(金)
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値 ☆・PPI
16:55 ドイツ6月失業率
18:00 ユーロ圏5月失業率
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月19日(月)
週明けは米国がジューンティーンスで市場も休場となったことから動きは鈍く、ユーロドルもほとんど動きが見られず、終日のレンジはわずか39pipsに留まりました。

6月20日(火)
ユーロドルは連日動きが鈍い流れが続きますが、欧州市場序盤に米金利低下によるユーロ買いが見られ1.0946レベルをつけました。しかし、ドル円とともにユーロ円でも売りが広がったため、ユーロドルは1.0892レベルの安値をつけた後に1.09台に戻して引けました。

6月21日(水)
ユーロドルはNY市場まではほとんど動かず、NY市場ではドル円の買いがユーロ円にも波及し、ユーロ円が先週高値を更新する動きとともに1.0991レベルまで上昇、そのまま高値圏での引けとなりました。ユーロ円は高値155.91レベルと2008年以来の高値をつけました。

6月22日(木)

ユーロドルは東京市場ではほとんど動かず、欧州市場に入りドル円とともにユーロ円が上昇する動きからユーロドルはじり高の動きとなりました。その後英中銀が0.5%の利上げをした直後こそユーロ買いとなり1.1012レベルの高値をつけましたが、ポンドが材料出尽くしで利食い売りに押される動きとともにユーロドルも下げ、1.0948レベルまで押して安値圏で引けました。

6月23日(金)
ユーロドルは前日NY市場でのドル高(ユーロ安)の動きを受け東京市場ではじり安の展開を続けました。欧州市場に入り発表されたPMI速報値が、フランス、ドイツ、ユーロ圏と全て予想よりも悪い数字となったことでユーロ売りが加速、ユーロドルが1.0844レベル、ユーロ円も155.05レベルまで水準を切り下げました。しかし、下がったところでの押し目買いも根強くNY市場では買い戻しが目立ち、ユーロドルは1.09台を回復後若干押しての引け。ユーロ円もほぼ下げる前の水準を回復して引けました。

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