円安の流れが続きやすい
〇先週のドル円、前週の各国金融政策の方向性の違いがそのまま為替の動きに
〇ドル円・クロス円での円安強まり、ドル円は143円台後半まで上昇
〇ユーロ円は2008年以来、スイス円は史上最高値の円独歩安の地合いが続く
〇次のターゲットは大台145円や、昨年高値と今年安値の78.6%戻し146.64
〇145円の大台手前で次の牽制発言が出てくる可能性が高いか
〇今週はECBフォーラムの主要中銀総裁発言及び主要国CPI発表を要注視
〇多少広めに、142.00レベルをサポートに144.40レベルをレジスタンスとする流れの週と見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、前週の金融政策の方向性の違いがそのまま為替の動きにつながりました。ドル円、クロス円での円安が強まりドル円は143円台後半まで上昇、ユーロ円は2008年以来、スイス円は史上最高値と円独歩安の地合いが続いています。日本の当局からは鈴木財務相によるソフトな牽制発言はあったものの、現在の水準で何か行動するといった状況でもなく、昨年11月の戻り高値をトライし、次のターゲットを模索している流れと言えます。
先週は前週に金融政策イベントが一巡したこともあり、特に大きな材料はありませんでしたが、日銀だけが大規模緩和と我が道を進んでいることから円売りの流れが継続しやすい地合いとなりました。またドル円は昨年11月の戻り高値がひとつの節目となっていて、ここを抜けると目立ったレジスタンスも無くなることから、もう少し当局から懸念を示す発言が出るかと思いましたが、そんなことも無くあっさりと上抜けしてきた感じです。
それでもドル円では警戒感が残るものの牽制発言が出ることは無いという思惑から特に対欧州通貨での円安が進み、結果としてその動きがドル円にも影響したのが先週の動きだったと思います。今週はECBフォーラムで主要中銀総裁の講演が予定されているため、その発言と主要国のCPI発表が今後の金融政策の方向性を探る点で重要なイベントとなるでしょう。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
ペナント(短期三角もちあい)の上抜け、11月戻り高値トライと目先の節目は全て上抜けてきましたので、次のターゲットとしては大台145円、昨年高値と今年安値の78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる146.64となりますが、さすがに後者まで一気に行くとそのまま昨年高値をトライする展開に繋がりますので、おそらく145円の大台手前では次の牽制発言が出てくる可能性は高いものと見られます。
ただ先週同様に市場参加者には怖いもの見たさという面もあり新高値を更新してみたいという動きは今後も出てくると考えられます。数字としてのレジスタンス・サポートになりやすい144(あるいは144の10倍、100倍、10分の1など)が近いため、今週はこの144をレジスタンスに、これまでのレジスタンスとして意識されていた142.25がサポートとなりやすい週です。
今週は上記のことを考慮して多少広げた、142.00レベルをサポートに144.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
6月26日(月)
08:50 日銀会合(6月)主な意見公表 ☆
16:15 フランス中銀総裁講演 ☆
17:00 ドイツ6月ifo企業景況感
26:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
6月27日(火)
17:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
21:30 米国5月耐久財受注
22:00 米国4月住宅価格・ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国6月リッチモンド連銀製造業景況指数 ☆
23:00 米国6月消費者信頼感 ☆
23:00 米国5月新築住宅販売
6月28日(水)
**:** トルコ市場休場(〜30日)
10:30 豪州5月CPI ☆
15:00 ドイツ7月消費者信頼感 ☆
15:45 フランス6月消費者信頼感 ☆
19:30 英中銀チーフ・エコノミスト講演 ☆
21:30 米国5月卸売在庫
22:30 パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、英中銀総裁、植田日銀総裁講演 ☆
23:30 週間原油在庫統計
25:00 フランス中銀総裁講演 ☆
6月29日(木)
**:** シンガポール市場休場
10:00 NZ6月企業信頼感
10:30 豪州5月小売売上高
17:00 南ア4〜6月期消費者信頼感
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感☆
18:30 南ア5月PPI
19:00 (アトランタ連銀総裁講演)
21:00 ドイツ6月CPI速報値 ☆
21:30 米国1〜3月期GDP確報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 米国5月住宅販売保留件数
**:** EUサミット(〜30日)☆
6月30日(金)
08:30 本邦6月東京区部CPI ☆
08:30 本邦5月失業率・有効求人倍率
10:30 中国6月製造業PMI ☆
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値 ☆・PPI
16:55 ドイツ6月失業率
18:00 ユーロ圏5月失業率
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値 ☆
21:00 南ア5月貿易収支
21:30 米国6月個人所得・消費支出 ☆
22:45 米国6月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月19日(月)
週明けもドル円は前週の金融政策ウィーク後の円安地合いを継続していましたが、米国がジューンティーンスで市場も休場となったことから動きは鈍い流れが続きました。高値は142.00レベルをつけたものの積極的な買いにはつながらず、1日のレンジも56銭にとどまり高値もみあいのままで1日を終わりました。
6月20日(火)
ドル円は東京前場に一時142.25レベルと昨年11月の戻り高値に並んだものの当局への警戒も根強く後が続きませんでした。その後多少の上下を挟んだものの海外市場に入ってからは米金利低下の動きとともにドル売りが強まり、NY後場には141.21レベルまで水準を下げ、やや戻して引けました。
6月21日(水)
ドル円は前日に調整で下げたものの下げきれなかった動きもあり、東京朝方から改めてドル買いの動きが再開する展開となりました。上下しながらも欧州市場序盤には142.17レベルまで上がったものの先週高値を抜けられず、いったん利食いの売りも出ました。NY市場では米金利が上昇し、パウエルFRB議長の議会証言でも金利はまだ上昇する必要があるとしたことから、一時142.37レベルの高値をつけたものの、142円台は警戒感も強く引けにかけては141円台後半へと押しました。1日の値幅はわずか43銭に留まりました。
6月22日(木)
ドル円は東京市場では様子見もみあい、海外市場に移ってから徐々に底堅くなっていましたが、英中銀利上げのあたりから米金利が上昇し始め、NY前場にはFRB関係者のタカ派発言も出て、前日高値を上抜ける動きとともにドル買いが加速しました。日本の当局による発言もNY市場では出ないだろうとの警戒感の薄れもあって143.23レベルまで上伸後、143円台で引けました。
6月23日(金)
ドル円は前日の流れを受けて底堅い展開が続き東京後場には143.45レベルの高値をつけました。しかし欧州市場に入り発表されたPMI速報値が軒並み予想よりも弱く、ユーロが対ドル、対円ともに大幅安となったことから、142.77レベルまで水準を下げました。その後ドル円は買い戻しが入りNY市場は143円台前半で始まりましたが、FRB関係者のハト派発言に日中安値をわずかに更新。その後逆にタカ派発言で143.87レベルと高値を更新し、そのまま高値圏での引けとなりました。
ディスクレーマー
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