円安基調は継続、どこまで上値を伸ばせるか (週報6月第4週)

先週のドル/円相場はドルが大幅続伸。日足ベースでは連日の高値更新で、週末には一時144円に迫る展開も観測されていた。

円安基調は継続、どこまで上値を伸ばせるか (週報6月第4週)

円安基調は継続、どこまで上値を伸ばせるか

〇先週のドル円、上げ渋った後レンジを上抜けると続伸、143円台を上抜け週末には高値143.88に
〇週末NYはそのままドルの最高値圏、143円後半で推移し越週
〇ドル高・円安進行に対し市場では介入警戒感が強まる、財務・経産相が口先介入に動く
〇先週は、中国やトルコなどの政策金利発表が市場の波乱要因に
〇引き続きリスクはドル高・円安方向、今週さらにドルが高値をトライする可能性も
〇日銀による実弾介入に要注意、その場合一気に3-4円の下押しの可能性も
〇今週は6月の消費者信頼感指数、1-3月期GDP確報値、5月PCEデフレーター等の米経済指標発表予定
〇米通貨当局者を中心とした発言、6/27-29の中国・天津で実施される夏季ダボス会議にも一応注意
〇ドル高・円安については、先週高値143.88の攻防にまずは注目
〇ドル安・円高方向は、先週末のドル安値142.76が最初のサポートか
〇今週のドル円予想レンジは、141.50-145.50

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが大幅続伸。日足ベースでは連日の高値更新で、週末には一時144円に迫る展開も観測されていた。

前週末は、ブリンケン米国務長官が5年ぶりに訪中。同国外相と会談を行ったとして話題に。また、アフリカ諸国代表団がロシアとウクライナを訪れ、それぞれの首脳と会談を行ったものの停戦には至らなかったと伝えられている。
そうした状況下、ドル/円は141.75-80円で寄り付いたのち、当初ドルは冴えない。日本当局の介入警戒感などもあり142円台では上値も重く、上げ渋るなか週間安値の141.22円を示現。しかし、切り返してレンジを上抜けすると、その後のドルは右肩上がり。143円台も上抜け、週末には高値143.88円をつけている。週末NYはそのままドルの最高値圏、143円後半で推移し越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「日本の為替スタンス」と「各国金融政策」について。
前者は、前週末に米国が半期に一度の「為替報告書」において、日本を為替操作国監視対象リストから除外したことが明らかに。一連の措置について神田財務官らが歓迎する意向を表明するなか、実勢相場において大きくドル高・円安が進行し、市場では逆に介入警戒感が日に日に強まる展開となっていた。実際、ドル/円が先週推移していた142-143円台は昨年9月に政府・財務省が円買い介入を実施したレベルとされており、まずは実弾介入の前段階として鈴木財務相から「必要であれば適切に対応する」、西村経産相も「過度な変動・投機的な動きはしっかりと注視しなければならない」などとした口先介入に動いていたようだ。今週も動静には引き続き要注意。 

対して後者は、日米欧以外の国が発表した金融政策発表が市場で思惑を呼ぶ格好となった。きっかけとなったのは20日に中国が実施した「10ヵ月ぶりの利下げ」。それを受け、同国通貨の人民元は弱含みとなり、一時1ドル=7.2元台も。そののち22日には英中銀がポジティブ・サプライズとなる「0.5%の利上げ」を実施し、好感したポンド/円は年初来高値を更新し182円半ばへと上伸。また、同日トルコ中銀も政策金利の発表を実施したが、こちらは逆にネガティブ・サプライズでリラ急落のトリガーとなった。事前に日経新聞が「市場では政策金利を最大30%超へと引き上げるとの予想も出ている」と報じるなど、大幅利上げが期待されるなか、利上げ幅は6.5%にとどまり結果として政策金利はわずか15.0%と予想の半分ほど。これが失望を誘い、その後に続くリラ安の主因となっていたことは間違いない。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は連日のドル高値更新。週末には143.88円まで値を上げ、144円台さらに145円台も視界内に捉えられてきた。以前から何度もレポートしているように、テクニカルには143-144円台にそれほど強い抵抗がないうえ、ここ最近は高値示現後1円程度の下押しという踏み上げを繰り返しているだけに、それほど大きな円ショートは積み上がっていないといった声も聞かれている。改めて指摘するまでもなく、リスクはドル高・円安方向で、今週さらにドルが高値をトライする可能性も否定できない。
注目されていた日米欧の金融政策発表が先々週に出揃うなか、前述したようにやはり中国やトルコなどの政策金利発表が市場の波乱要因となっていた。そうした意味では、今週はスウェーデンが政策金利を発表予定。よほどのことがない限り、為替市場に与える影響は限られそうだが、一応注意をしておきたい。一方、それとは別にドル/円のレベルを考えると、単なる日本通貨当局者などからの「円安けん制発言」だけにとどまらない「実弾介入」も念頭に入れておくべきだろう。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は高値151.94円を起点にした大きな下げ幅のフィボナッチ61.8%戻し(142円半ば)を先週しっかりと超えており、次のターゲットは76.4%戻しの146.10円レベルになる。基本的には中期のターゲットだが、ここから先はあまり強い抵抗がないことを考えると、意外に早い到達もあり得る。
しかしその反面、政府・財務省による実弾介入が観測されれば一気に3-4円の下押しの可能性もある。ドルの急落リスクも、頭の片隅にはとどめておきたいところだ。

材料的に見た場合、中長期的にはバイデン米大統領が20日に発した「習中国主席は独裁者」コメントが依然として尾を引く「中国情勢」。露民間軍事会社ワグネルがロシアに進軍、反旗を翻したなどといった報道も見られ、この週末大いに思惑を呼んでいた「ロシア・ウクライナ情勢」、「北朝鮮情勢」−−などに注目。

そうしたなか今週も、6月の消費者信頼感指数や1-3月期GDP確報値、5月のPCEデフレーターといった米経済指標の発表が相次ぐうえ、米通貨当局者を中心とした発言機会が数多く市場の波乱要因となりかねない。また、27-29日の日程で中国・天津で実施される夏季ダボス会議にも一応注意したい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、141.50-145.50円。ドル高・円安については、先週高値143.88円の攻防にまずは注目。上抜ければ心理抵抗である145円が視界内に入ってくる。
対してドル安・円高方向は、先週末のドル安値142.76円が最初のサポートか。ただし、割り込んでも142円前後では底堅く大崩れは予想しにくいが、実弾介入が観測されれば、その限りではない。

円安基調は継続、どこまで上値を伸ばせるか

ドル円日足

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