トルコリラ円見通し 中銀利上げ不十分としての史上最安値更新続く(23/6/26)

トルコリラ円の6月23日は概ね5.77円から5.49円の取引レンジ、24日早朝の終値は5.67円で前日終値の5.75円からは0.08円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 中銀利上げ不十分としての史上最安値更新続く(23/6/26)

中銀利上げ不十分としての史上最安値更新続く

○トルコリラ円、6/23夕刻にかけてもリラ売りが続き5.49円へ急落、終値ベースでも史上最安値更新
○対ドル、6/23も安値更新が続き、25リラ台へ到達し26リラへ迫る勢い
○トルコ中銀が政策金利を15.00%に引き上げたが、市場予想の21%を大きく下回り失望を招く
○独自の金融政策姿勢を堅持するエルドアン大統領が、20%超の高金利を容認できるかに懐疑的な見方も
○5.75超えからは5.80手前を試す上昇を想定するが、5.77から5.80手前にかけては戻り売りも要警戒
○5.60割れからは下げ再開とみて5.50前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の6月23日は概ね5.77円から5.49円の取引レンジ、24日早朝の終値は5.67円で前日終値の5.75円からは0.08円の円高リラ安だった。
6月22日にトルコ中銀が政策金利を従来の8.50%から15.00%へ大幅に引き上げたものの、市場の事前予想が21%への利上げだったために利上げ幅は不十分としてリラ売りとなり、対ドルなどで史上最安値を更新する中でトルコリラ円は6月22日付け取引で6円台から安値で5.74円へ急落して前日比は0.26円の円高リラ安だったが、23日も夕刻にかけてリラ売りが続いて安値で5.49円(ベンダーによっては5.44円等)へ急落した。
今後の追加利上げの可能性も踏まえ、失望売りが一巡した後は買い戻しも入って深夜には5.74円まで戻すなど下げ幅を削ったが、終値ベースでの史上最安値更新となった。
週間では6月16日終値6.00円から0.25円の円高リラ安となった。

【1ドル25リラ台へ突入】

ドル/トルコリラの6月23日は概ね25.74リラから24.55リラの取引レンジ、24日早朝の終値は25.23リラで前日終値の24.89リラからは0.34リラのドル高リラ安となった。
6月22日のトルコ中銀による利上げを失望として6月22日付け取引では24.90リラへ史上最安値を大幅に切り下げ、22日終値23.53リラからは前日比0.36リラのドル高リラ安となり下落率は一時5.8%安を超えた。
23日も安値更新は続いて1ドル25リラ台へ到達して26リラへ迫る勢いだったが、23日夜に25.74リラを付けた後は週末のポジション調整も入って下げ幅を削り、いったん24リラ台へ戻す場面も見られたものの24日早朝にかけては再び売られて25リラ台での終了となった。
週間では6月16日終値23.62リラからは1.61リラのドル高リラ安だった。

【トルコ中銀の利上げ幅は失望を買う】

トルコ中銀は6月22日の金融政策委員会で政策金利の週間レポレートを現行の8.5%から15.00%へ引き上げた。利上げは2021年3月以来2年3か月ぶりで数字だけ見れば超大幅利上げだが、インフレ率がピーク時の80%台から40%弱まで鈍化してきたとはいえ高インフレ状態にある中では政策金利の15%は実質マイナス金利であり、市場が期待していた21%への利上げに対して大きく下回ったことは失望を招いた。
トルコ中銀は「インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで適切なタイミングで緩やかに、金融引き締めが一段と強化される見通しだ」としており、今後も追加利上げが予想されるものの、大胆な利上げが続いてリラ暴落を阻止するようなインパクトを市場にもたらすことは難しのではないかと懸念される。6月23日のメディア報道では市場の信頼を得る絶好の機会を失ったとの報道が多かった。

トルコ中銀はかつてのリラ暴落状況の中で2020年10月の10.25%から2021年3月に19.00%へ連続利上げをしたことがあるが、19%まで引き上げられた後にはトルコ中銀総裁が解任されている。6月13日にエルドアン大統領は「新財務省と新総裁の政策を支持する」としたものの自身の金融政策姿勢は変わらないと述べて、メディアに対しては勘違いしないようにと釘を刺しているが、15%へ引き上げられた政策金利があと数回の利上げで20%手前へ上昇したとしてもそれ以上の高金利にはエルドアン大統領が耐えられないのではないかと思われる。

【大手金融機関の予想を超えるリラ暴落商状】

金融大手ゴールドマンサックスは6月4日、エルドアン大統領の組閣を踏まえて向う12か月以内のリラ安水準について従来の1ドル22リラから1ドル28リラへ下方修正し、3か月後に23リラ、6か月後に25リラ、12か月後に28リラへ下落する可能性があるとした。しかし、すでに25リラ台に突入しており、予想をはるかに超えたリラ安の勢いとなっている。
4月14日にはJPモルガンが大統領選挙後の見通しとしてメインシナリオで1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとし、より厳しいシナリオでは選挙後に1ドル=30リラへ向かう可能性もあるとしたが、より厳しいシナリオで進んでいる印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円は2021年12月20日に付けたこれまでの史上最安値6.17円を割り込んでからまだ3週に過ぎないが、過去のリラ暴落では史上最安値更新から3週程度で落ち着いた事例は見られない。
利上げへ踏み切ったことによるトルコリラ円の上昇としては2011年11月安値12.03円から2021年2月高値15.26円まで上昇した経緯があるが、今回は利上げ直後に失望として一段安しているために追加利上げ期待による上昇期には簡単に進めず、より大幅な追加利上げを催促するような下落が続きやすいのではないかと思われる。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月20日夕安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、6月20日午前と22日未明の両高値によるダブルトップ形成に終わる可能性もあるとして20日夕安値割れからは弱気サイクル入りとしたが、6月22日の暴落により23日午前時点ではダブルトップ形成からの弱気サイクル入りとして23日午後から27日夕にかけての間への下落を想定した。
6月23日夕刻へ大幅下落してからいったん戻したため、23日夕安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。高値形成期は26日深夜から29日未明にかけての間と想定されるが、暴落交じりの乱調推移のため、5.60円割れからは新たな弱気サイクル入りと仮定して28日午後から30日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落が続いている。先行スパンの下限が戻りを抑える抵抗となりやすいとみて、先行スパンからの転落中は遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とする。

60分足の相対力指数は6月23日夕安値時に20ポイントを割り込んでから50ポイントに迫っているので60ポイント台後半への上昇余地があるとみるが、40ポイント以下での推移に入る場合は下げ再開を警戒し、30ポイント割れからは10ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.65円を下値支持線、5.75円を上値抵抗線とする。
(2)5.65円以上での推移中は戻りを試す可能性があるところとし、5.75円超えからは5.80円手前を試す上昇を想定するが、5.77円から5.80円手前にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)5.65円割れを下げ再開注意とし、5.60円割れからは下げ再開とみて5.50円前後への下落を想定する。5.50円以下は反騰注意とするが、5.60円を割り込んでの推移が続く場合は27日も安値試しへ向かいやすいとみる。暴落商状で最安値を更新する場合に5.00円割れを試して行く可能性もあると考える。

【当面の主な予定】

6月28日から30日までは犠牲祭でトルコ市場は休場
7月03日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 51.5)
 16:00 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.04%)
 16:00 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 39.59%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.65%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 40.76%)
7月06日
 20:30 週次 外貨準備高 6/23時点 グロス (6/16時点 607.8億ドル) 
 20:30 週次 外貨準備高 6/23時点 ネット (6/16時点 4.7億ドル) 
7月07日
 23:00 6月 財務省現金残 (5月 1698.2億リラ)
7月10日
 16:00 5月 失業率 (4月 10.2%)
7月11日
 16:00 5月 経常収支 (4月 -54.04億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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