トルコリラ円見通し リラ暴落一服による下げ渋り続くがドル円の反落で上値重い(23/6/21)

トルコリラ円の6月20日は概ね6.06円から5.98円の取引レンジ、21日早朝の終値は6.00円で前日終値6.01円からは0.01円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し リラ暴落一服による下げ渋り続くがドル円の反落で上値重い(23/6/21)

トルコリラ円見通し リラ暴落一服による下げ渋り続くがドル円の反落で上値重い

〇トルコリラ円、6/20午前のドル円上昇局面で6.06を付けたものの、ドル円の反落を見て失速
〇しかしドル円が141円割れを回避する中、6円割れは買われてしっかり
〇対ドル、6/20は概ね23.66から23.34の取引レンジ、最安値近辺での下げ渋り型の持ち合いという様相
〇6/22トルコ中銀MPCでの利上げ問題で、市場が失望するようだと新たな暴落へのきっかけとなる可能性
〇昨日発表のルコ中央政府債務残高、過去最高を更新中、トルコ経済への信頼感を揺るがす問題のひとつ
〇5.98を上回るうちは上昇余地ありとし、6.03超えからは6.05、6.07を順次試す上昇を想定する
〇5.98割れからは、5.95前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月20日は概ね6.06円から5.98円の取引レンジ、21日早朝の終値は6.00円で前日終値6.01円からは0.01円の円高リラ安だった。
5月28日のトルコ大統領選挙によるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落がやや落ち着き、6月13日早朝に史上最安値を5.83円まで切り下げたあとは下げ渋りに入り、ドル円の上昇を見て6月15日には高値で6円台へ戻し、その後も6円を割り込むところを買われてしっかりし、ドル円の騰落を見ながらの展開に入っている。
ドル円は6月20日午前に142.24円を付けて年初来高値を更新したが、142円到達に対する高値警戒感と中国景気減速懸念による欧米長期債利回り低下を見て141円台序盤へ下落した。20日夜の米住宅着工統計が市場予想を大きく上回る好調さを示したところで141.74円へ戻したものの早々に売られ、21日早朝には141円台前半で推移していたが、9時台には141.50円を超えて上昇再開を試している。

トルコリラ円は6月20日午前のドル円上昇局面で6.06円を付けたもののドル円の反落を見て失速した。しかしドル円が141円割れを回避する中で6円割れを買われてしっかりしている。
ドル/トルコリラにとっては6月22日のトルコ中銀が大幅利上げに踏み切るかどうかが最大の焦点だが、ドル円としては21日夜のパウエル米FRB議長による半期に一度の議会証言における金融政策姿勢の強弱が当面の焦点であり、今夜の議会証言次第では為替市場全般が大きく動く可能性もあるところとして、トルコリラ円はドル円の騰落を引き続き追いかけて22日のトルコ中銀金融政策委員会の結果待ちへと向かう流れと思われる。

【対ドルでは暴落商状一服が続く】

ドル/トルコリラの6月20日は概ね23.66リラから23.34リラの取引レンジ、21日早朝の終値は23.55リラで前日終値の23.61リラからは0.06リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選をきっかけとしてリラは暴落商状に陥り、6月7日に凡そ8%安の大幅下落で1ドル23リラ台に到達、6月8日から13日まで連日の史上最安値更新により6月13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げ、終値ベースでは15日終値23.66リラで史上最安値を更新した。
その後は新財務相とトルコ中銀の新総裁人事を見て金融・経済政策が転換するのではないかとの期待が膨らみ暴落商状が一服しており、6月22日のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)において政策金利が現行の8.5%から20%へと大胆に切り上げられるのではないかとの見方が浮上していることで新たな最安値更新を回避している。

しかし1ドル23リラ台序盤ではドル買いリラ売りが入って最安値近辺での下げ渋り型の持ち合いという様相であり、6月22日のトルコ中銀による利上げ問題で市場が失望するようだとリラの新たな暴落へのきっかけとなりかねないところと思われる。
トルコ政府は6月20日に今年2回目の最低賃金引き上げを発表した。インフレ深刻化による労働者・消費者への対策だが、賃上げがインフレを進行させることも懸念される。ウシュクハン労働相は最低賃金が今月34%引き上げられ月1万1402リラ(凡そ6万8400円)になるとした。

【トルコ中央政府債務残高は過去最高を毎月更新中】

6月20日にトルコ中銀が発表した中央政府債務残高は合計で4兆7344億リラとなり4月の4兆5904億リラから増加して史上最大を更新した。昨年12月に初めて4兆リラ台へ乗せてから毎月の拡大となっている。内訳では対外債務が2兆3863億リラで4月の2兆2975億リラから増加、国内債務も2兆3481億リラで4月の2兆2929億リラから増大していずれも過去最大となった。

貿易赤字の拡大と経常収支の悪化、財政赤字の拡大、対外債務の膨張はいずれもトルコ経済への信頼感を揺るがす問題であり、純外貨準備高がマイナス勘定に転落し、毎月の経済指標も冴えずに昨年上半期のような高成長感が後退している状況にあっては、エルドアン政権が新たな成長戦略や金融・経済政策における非伝統的手法からの脱却により市場から評価を得ないことにはリラ安の長期トレンドも変わらないのではないかと懸念される。
財務相に就任したシムシェキ氏は6月16日に国内の銀行家や起業家との会合を持ち、「好ましくない副作用を避けるため、ゆっくりと調整を進める」と述べて金融・経済政策の改善への前向き姿勢を示した。エルドアン大統領は新財務相とトルコ中銀の新総裁が行う改革については理解を示したが、自身の金融政策思想は変わらないとも釘を刺しており、果たして改革が進むのかどうかはまだ見通せない状況だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月16日早朝にかけていったん下落してから17日早朝に13日安値以降の高値を更新したため、19日午前時点では13日早朝安値から3日目となる16日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして6月20日午後から22日午後にかけての間への上昇を想定した。
6月20日午前に高値を更新してから6円割れへ反落し、その後は6円を挟んだ揉み合いで推移しているため、20日午前高値を直近のサイクルトップと仮定し、高値更新へ進めないうちは21日午前から23日朝にかけての間への下落を想定する。ただし、6.03円超えからは強気転換注意とし、20日午前高値超えからは新たな強気サイクル入りとして23日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では6月20日午前高値からの反落で遅行スパンが悪化して先行スパンへ潜り込んでいる。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まる可能性があると注意するが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月20日午前の上昇時に70ポイントを超えてから40ポイント台へ低下したが、21日午前には50ポイント台を回復しているので上昇再開に入っている可能性がある。45ポイント割れからは下落継続として30ポイント前後への低下を想定するが、60ポイント到達からは再び70ポイントを目指す上昇へ進むと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.98円を下値支持線、6.03円を上値抵抗線とする。
(2)5.98円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.03円超えからは6.05円、6.07円を順次試す上昇を想定する。6.06円以上は反落警戒とみるが、6円台を維持しての推移なら22日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.98円割れからは5.95円前後への下落を想定する。5.95円以下は反騰注意とするが、下げ足が早まる場合は5.93円前後へ下値目途を引き下げ、5.98円を割り込んでの推移なら22日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月21日
 16:00 6月 製造業信頼感指数 (4月 108.3)
 16:00 6月 設備稼働率 (4月 76.0%)
6月22日
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.5% 予想 20.0%)
 20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 グロス (6/9時点 577.9億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 ネット (6/9時点 -31.7億ドル)
6月23日
 16:00 5月 貿易収支 (4月 -87.4億ドル)
 17:00 5月 海外観光客数 前年比 (4月 29.03%)


注:ポイント要約は編集部

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