トルコリラ円見通し リラ暴落一服、円安で6円割れを買われてしっかり
〇トルコリラ円、6/19午後にドル円が下落した局面で5.98まで下げるも、押し目買いされ6円台回復
〇その後6/20早朝には6.03へ戻す、6/16早朝からの反騰を継続した展開
〇対ドル、6/19は概ね23.68から23.32の取引レンジ、暴落商状一服だが最安値近辺での小持ち合いの様相
〇6/22のトルコ中銀MPCで大幅利上げ観測あるも、結果次第ではリラの急騰も暴落もあり得るか
〇5.95を上回るうちは上昇余地ありとし、6.03超えからは6.05、6.07を順次試す上昇を想定する
〇5.98割れからは、5.95前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の6月19日は概ね6.28円から5.98円の取引レンジ、20日早朝の終値は6.01円で先週末終値の6.00円からは0.01円の円安リラ高だった。
5月28日のトルコ大統領選挙決選投票におけるエルドアン大統領再選からリラは暴落商状に陥り6月7日には凡そ7%安の暴落で2021年12月20日安値6.17円を割り込み史上最安値更新に入り、13日早朝には最安値を5.83円まで切り下げたが、トルコ新内閣発足による政策転換への期待感やトルコ中銀が利上げに踏み切るとの見方が浮上したことで対ドル等におけるリラ暴落が一服し、トルコリラ円も13日早朝安値の後は暴落一服による下げ渋りからやや持ち直しを見せている。
先週は米インフレ指標やFOMCおよび日銀金融政策決定会合などを通過しながらドル円は乱高下を繰り返したものの、FOMCが利上げを見送った上で年内あと2回の利上げ見通しを示す一方で、16日に日銀が黒田総裁時代からの異次元金融緩和政策の現状維持を決定したことにより、日米金利差を意識したドル高円安で141円台後半へ急伸し、週明けの19日は142.00円ちょうどまで高値を伸ばした。6月20日午前序盤には先高期待が勢いついて142.10円を超えて一段高に入っている。
トルコリラ円はリラ暴落が一服する中でドル円が年初来高値更新へと急伸し始めたことにより16日早朝から反騰を継続して17日早朝には6.04円まで戻り高値を切り上げていたが、19日午後にドル円が141.50円を一時割り込んだ局面で5.98円まで下げたものの押し目買いされて6円台を回復し、20日早朝には6.03円へ戻している。
6月22日のトルコ中銀金融政策委員会でどの程度の利上げとなるのかが最大の焦点であり、結果次第ではリラの急伸も急落もあり得るところと注意するが、目先はドル円の上昇を追いかける展開でトルコリラ円は戻り高値を試す流れと考える。
【対ドルでは暴落商状一服中だが最安値圏での小持ち合いの様相】
ドル/トルコリラの6月19日は概ね23.68リラから23.32リラの取引レンジ、20日早朝の終値は23.61リラで先週末終値の23.62リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選をきっかけとしてリラは対ドルで暴落商状に陥り、6月7日には凡そ8%安の大幅下落で23.31リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、6月8日から13日まで連日の史上最安値更新により6月13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げた。
その後は暴落商状が落ち着き、取引時間中の最安値更新は回避されているものの、終値ベースでは15日終値23.66リラで史上最安値を更新し、16日、19日も取引時間中および終値ベースで最安値近辺での小持ち合いの様相にとどまっている。
6月19日に発表されたトルコの6月消費者信頼感指数は85.1となり5月の91.1から悪化した。市場の反応は限定的だったが、前月からの下落幅としては直近において最大であり、エルドアン大統領続投とリラ安が消費者心理を悪化させている印象だ。
【6月22日のトルコ中銀MPCでの大幅利上げを見定めるまでは最安値近辺での揉み合いか】
6月16日にロイター通信社は6月22日のトルコ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利の週間レポレートが現行の8.5%から20%へ利上げされるとの予想を発表した。15人のエコノミストに対する調査であり、予想中央値が20%となったものの、予想レンジは12.50%から30.00%まで幅広く、リラ暴落を一挙に抑え込むための強烈な利上げが断行されるとの見方がある一方で、リラ暴落にブレーキをかける程度の利上げにとどまるのではないかとの見方もあるようで、結果次第ではリラの急騰も暴落もあり得るところとなっている。
エルドアン大統領は再選後の新内閣において副首相や財務相を歴任して市場の評価も高かったメフメト・シムセク氏を財務相とし、ウォール街の銀行家だったハフィゼ・ゲイ・エルカン氏を中銀総裁に任命した。選挙前には大統領の属する与党AKPにおいても政策変更の必要性が議論されており、新内閣の布陣を見て利上げを含めた政策転換への期待が強まっている。
トルコ中銀は2020年10月に10.25%だった政策金利を順次引き上げて2021年3月には19.00%としたが、利上げをした中銀総裁は解任され、2021年9月から12月にかけて14.0%まで利下げが断行され、その結果でトルコリラは2021年12月へ暴落している。
10.25%から19.00%まで利上げされたことがエルドアン大統領にとっての忍耐の限界だった可能性もあり、今回のトルコ中銀MPCにおいて19%の壁を超えることが可能なのかについては疑問も残るが、暴落を阻止するためにはその程度の劇的な利上げは必要であり、アリバイ的な利上げにとどまるようだと足元を見透かされてリラ売りがかえって勢いを増すことも考えられる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月13日早朝安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして15日の日中から16日夜にかけての間への上昇を想定してきたが、6月16日早朝にかけていったん下落してから切り返しに入って17日早朝に13日安値以降の高値を更新したため、19日午前時点では13日早朝安値から3日目となる16日早朝安値で直近のサイクルボトムをつけて新たな強気サイクル入りしたとし、サイクルトップ形成期を6月20日午後から22日午後にかけての間と想定した。
6月19日早朝高値の後も6円割れを買われてしっかりしているのでまだ上昇余地ありとみるが、19日午後安値5.98円割れからは弱気サイクル入りとして21日朝から23日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月17日早朝への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けてその後も両スパンそろっての好転を維持しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが一時的に悪化しても先行スパンを上回るかうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込むところからは下げ再開注意とし、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月15日午後の50ポイント割れを買われて60ポイント台へ上昇しているのでまだ上昇余地ありとするが、次に50ポイントを割り込むところからは下げ再開とみて30ポイント台の低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.98円を下値支持線、6.03円を上値抵抗線とする。
(2)5.95円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.03円超えからは6.05円、6.07円を順次試す上昇を想定する。6.07円以上は反落警戒とみるが、6円台を維持しての推移なら21日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.98円割れからは5.95円前後への下落を想定する。5.95円以下は反騰注意とするが、下げ足が早まる場合は5.93円前後へ下値目途を引き下げ、5.98円を割り込んでの推移なら21日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月20日
23:30 5月 中央政府債務 (4月 4兆5881億リラ)
6月21日
16:00 6月 製造業信頼感指数 (4月 108.3)
16:00 6月 設備稼働率 (4月 76.0%)
6月22日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.5% 予想 20.0%)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 グロス (6/9時点 577.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 ネット (6/9時点 -31.7億ドル)
6月23日
16:00 5月 貿易収支 (4月 -87.4億ドル)
17:00 5月 海外観光客数 前年比 (4月 29.03%)
注:ポイント要約は編集部
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トルコリラ円ショートコメント(23/6/19)
実際のレンジは安値が5.80レベル、高値が5.98レベルと、大きく動いた後でほとんど取引参加者がいなかった故のもみあいになったと見られます。
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