リラ暴落一服続きドル円の騰落を追いかける。今夜のトルコ中銀利上げに注目
〇トルコ円、6/21夜のドル円上昇局面で6.06まで高値を切り上げたが、ドル円の反落とともに6.01へ下落
〇6/22午前序盤は6.01から6.02にかけての水準で推移
〇対ドル、本日のトルコ中銀の利上げ見通しを控え、エルドアン大統領の再選後の暴落商状一服が続く
〇トルコ政策金利、現行の8.5%から大幅に(予想中央値で21.0%)引き上げられる可能性が高い
〇利上げの手法や今後のエルドアン大統領の姿勢により、いったんリラ高へ向かうか暴落加速かが試される
〇今夜はトルコ中銀のほか英中銀などの主要中銀の利上げも集中、動きやすい為替市場に
〇5.98を上回るうちは上昇余地ありとし、6.06超えからは6.08、6.10を順次試す上昇を想定
〇5.98割れからは5.95前後への下落を想定、5.95以下は反騰注意
【概況】
トルコリラ円の6月21日は概ね6.06円から5.99円の取引レンジ、22日早朝の終値は6.01円で前日終値の6.00円からは0.01円の円安リラ高だった。
5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落がやや落ち着く中でトルコリラ円はドル/トルコリラの動静を警戒しつつも目先はドル円の騰落を追いかける展開で推移している。
ドル円は6月21日夜のパウエル米FRB議長の議会証言を挟んで証言テキスト公開後の米長期債利回り上昇・ドル高局面で142.36円へ上昇して年初来高値を更新したが、証言が始まると先週のFOMC内容と比較してサプライズ感はないとして米長期債利回り低下・ドル安へ風向きが変わったために141.60円台へ失速した。22日午前序盤にやや安値を切り下げたもののその後は141円台後半でしっかりしている。
トルコリラ円は21日夜のドル円上昇局面で6.04円へ上昇して22日未明には6.06円まで高値を切り上げたが、その後はドル円の反落に合わせて6.01円へ下落した。22日午前序盤は6.01円から6.02円にかけての水準で推移している。
米国の利上げについては年内あと2回の利上げ余地があるという状況に変わりはないが、緩やかなものにするとして利上げを急がない姿勢も示された。ドル円にとっては米国に利上げ余地がある一方で日銀がマイナス金利を継続するために円安基調を継続しやすいと思われるが、142円台到達に対する高値警戒感も出やすいところだ。今夜はトルコ中銀のほか英中銀などの主要中銀の利上げも集中するために為替市場も動きやすく、パウエルFRB議長の上院での議会証言もある。
【トルコ中銀の利上げ見通しを控えて対ドルでは暴落商状一服が続く】
ドル/トルコリラの6月21日は概ね23.63リラから23.33リラの取引レンジ、22日早朝の終値は23.53リラで前日終値の23.55リラからは0.02リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選をきっかけとして対ドルでリラは暴落商状に陥り、6月7日に1ドル23リラ台に到達した後も6月8日から13日まで連日の史上最安値更新により6月13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げ、終値ベースでは15日終値23.66リラで史上最安値を更新した。
しかしその後は新財務相とトルコ中銀の新総裁人事を見て金融・経済政策が転換するのではないかとの期待が膨らんだことと、6月22日のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)において政策金利が現行の8.5%から20%へと大胆に切り上げられるのではないかとの見方が浮上したことで利上げの結果を見定めたいとの思惑で暴落商状が落ち着き1ドル23リラ台中盤を中心とした持ち合いに入っている。
6月21日に発表されたトルコの6月製造業信頼感指数は108.2となり5月の108.3からわずかに低下し、設備稼働率は76.8%で5月の76.0%から上昇した。これらに対する市場の反応は限定的だった。
【今夜、トルコ中銀MPCでの利上げを見定める】
6月22日夜のトルコ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利の週間レポレートが現行の8.5%から大幅に引き上げられる可能性が高いとの見方が強まっている。
ロイター通信社は6月16日に15人のエコノミストに対する調査で予想中央値としては20.0%への大幅利上げとなる見通しだと報じた。その時点での予想レンジは12.5%から30.0%まで幅広く、リラ暴落を一挙に抑え込むための強烈な利上げが断行されるとの見方がある一方で、エルドアン大統領の「低金利がインフレを抑制する」との持論が変わらないためにリラ暴落にブレーキをかける程度の利上げにとどまるのではないかとの見方もあった。
ロイター通信社は6月21日時点での予想として18人のエコノミスト調査での予想中央値を21.0%に引き上げたが、予想レンジは12.5%から30.0%のままだった。わずかな上方修正だが、20%を超える利上げの可能性が高まっているとの認識と思われる。
トルコ中銀は2020年10月に10.25%だった政策金利を2021年3月に19.00%へ引き上げたが、利上げを繰り返した中銀総裁は解任され、2021年9月から12月にかけて14.0%まで政策金利の引き下げが断行され、トルコリラは2021年12月へ暴落した。
10.25%から19.00%まで利上げされたことがエルドアン大統領にとっての忍耐の限界だった可能性もあるため、果たして今回の利上げで20%を超えられるのかどうかは疑問符が外せないところだが、一回の大胆な利上げで市場にショックを与えるのか、小規模利上げを繰り返すことで段階的な利上げ姿勢を示すのか、手法も分かれるところだ。政策金利と今後の姿勢によりリラ高へといったん風向きを変えるのか、さらに暴落が加速するのか試される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月13日早朝安値から3日目となる16日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして6月20日午後から22日午後にかけての間への上昇を想定していたが、6月20日午前に高値を更新してから6円割れへ反落したために21日午前時点では20日午前高値を直近のサイクルトップと仮定し、高値更新からは新たな強気サイクル入りとした。
6月22日未明への上昇で6月20日午前高値と同値まで戻したため、20日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は23日午前から27日午前にかけての間と想定するが、ダブルトップ形成に終わる可能性もあるので20日夕安値割れからは弱気サイクル入りとして23日午後から27日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月21日夜の上昇で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けたが、その後の反落で先行スパンから転落しつつある。6円台を維持するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、6円割れから続落に入る場合は先行スパンからの転落が顕著になるので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月21日夜に70ポイントへ迫ってから50ポイント割れへ反落しているため、55ポイント超えからは上昇再開とするが、45ポイント割れからは下落期入りの可能性を優先して30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.98円を下値支持線、6.06円を上値抵抗線とする。
(2)5.98円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.06円超えからは6.08円、6.10円を順次試す上昇を想定する。6.08円以上は反落警戒とみるが、中銀の利上げ内容次第では6.10円超えへの急伸もあり得ると注意する。
(3)5.98円割れからは5.95円前後への下落を想定する。5.95円以下は反騰注意とするが、中銀の政策金利発表から急落反応の場合は5.90円台序盤(5.92円から5.90円)へ下値目途を引き下げ、5.98円を割り込んでの推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月22日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.5% 予想 21.0% 予想レンジ 12.5〜30.0)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 グロス (6/9時点 577.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 ネット (6/9時点 -31.7億ドル)
6月23日
16:00 5月 貿易収支 (4月 -87.4億ドル)
17:00 5月 海外観光客数 前年比 (4月 29.03%)
注:ポイント要約は編集部
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