ドル円見通し FRB議長の議会証言を挟んで年初来高値更新後に失速(23/6/22)

ドル円は22日午前序盤は141.62円へ安値を若干更新しており、当面のドル買い材料消化による修正的な動きとなっている。

ドル円見通し FRB議長の議会証言を挟んで年初来高値更新後に失速(23/6/22)

FRB議長の議会証言を挟んで年初来高値更新後に失速

〇ドル円、FRB議長の議会証言テキスト公表後142.36へ上昇、証言開始後失速し6/22未明に141.66へ下落
〇パウエル議長、年末までに0.25%のあと2回の利上げは非常に良い推測だが、一段と緩やかに行うと発言
〇アトランタ連銀総裁、利上げ効果を見極める段階と発言、上昇していた米長期債利回りの低下に寄与
〇年内あと2回の利上げ可能性を意識して米長期債利回りは一時上昇後に低下、NYダウは続落
〇142円超えからは上昇再開とし、21日夜高値142.36超えからは142円台後半を目指す上昇を想定
〇141.50割れからはダブルトップ形成による下落期入りを警戒、20日深夜安値141.20試しとする

【概況】

ドル円は6月21日夜のパウエルFRB議長の半期に一度の議会証言が注目された中、事前証言内容が公表された局面で米長期債利回り上昇・ドル高反応となったため、142.36円へ上昇して1月16日安値127.22円以降の高値を更新したが、実際に証言が始まった後は先週のFOMCと比較してタカ派的なサプライズ内容はないとの受け止め方が広がって米長期債利回り低下・ドル安へと風向きが変わり、22日未明には141.66円へ下落した。22日午前序盤は141.62円へ安値を若干更新しており、当面のドル買い材料消化による修正的な動きとなっている。

【パウエルFRB議長、年内あと2回の利上げは適切との姿勢】

FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は6月21日に米下院金融サービス委員会で半期に一度の金融政策をめぐる証言を行った。議長は根強いインフレ圧力を抑え込むために今年末までに0.25%の利上げをあと2回行うことが「非常に良い推測」と述べたが、一方では「これまで急ピッチで進めてきた利上げの効果を踏まえ、現状から「金利をより高くするのは妥当かもしれないが、一段と緩やかに行う」として昨年秋まで続いてきたハイペースでの利上げや今後の積極的な金利引き上げを追求してゆく姿勢については慎重な見方も示した。
6月13-14日(15日未明に結果公表)に開催されたFOMCでは政策金利を11か月振りに据え置いたが、FOMCメンバーによる金利予想では年内あと2回の利上げが想定されていることを示した。政策金利を据え置いたのはこれまでの結果を見極めることと、3月に発生した米銀破綻をきっかけとする信用不安問題の状況を考慮したものとされた。

議長は議会証言でも「利上げ休止という言葉は使わない」とし、FOMCメンバーの18人中16人が利上げが適切と予想し、その大多数が年2回を念頭に置いている」と述べたが、事前に証言テキストが公開された時点ではあと2回の利上げへの積極姿勢と市場は受け止めてドル高反応を見せたものの、緩やかな利上げという姿勢も強調されたためにドル高を勢い付けるサプライズ感はないという見方に落ち着いたようだ。
アトランタ連銀のボスティック総裁は6月21日に「追加利上げのハードルは2〜3カ月前よりも高くなっている」、「利上げを休止してこれまでの利上げ効果を見極める段階にある」とし、「追加利上げをただ単に追求すれば不必要に経済の勢いを削ぎ過ぎる可能性がある」との懸念を示した。この発言はハト派的と受け止められて上昇していた米長期債利回りの低下に寄与した。

【米長期債利回りは一時上昇後に低下、NYダウは続落】

6月21日の米長期債利回りは概ね横ばいだった。長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずの3.72%で終了したが、パウエルFRB議長の議会証言テキスト公表後に3.80%へ上昇したものの証言が始まってから低下に転じ、アトランタ連銀総裁のハト派発言もあり、元の水準まで押し戻された。
30年債利回りは前日比変わらずの3.81%。利上げに敏感な2年債利回りは4.76%まで上昇してから4.68%へ行ったん低下し、再び上昇してわずかにプラス圏としている。年内あと2回の利上げ可能性を意識して上昇した印象だ。
一方でNYダウはあと2回の追加利上げの可能性を嫌って前日比102.35ドル安と下落し、6月16日から19日の休場を挟んで3営業日続落した。ナスダック総合指数も165.09ドル安で16日から3営業日続落した。上海総合株価指数が6月16日に5月25日安値以降の高値を付けたところから下落に転じており、19日から21日へ3営業日続落となり21日は前日比1.31%安と大幅下落したことも響いている印象だ。株安は日経平均動向にも反映されるためにドル円にとっては上昇へのブレーキとなりやすい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は6月20日高値142.24円から20日深夜安値141.20円へ反落し、その後の反騰で21日夜に高値を更新して142.36円まで年初来高値を切り上げている。このため現状は6月20日深夜安値を起点とした上昇期にあり、20日午前高値を超えたことにより27日午前にかけての高値試しを続けやすい局面と思われるが、20日午前と21日夜のダブルトップに終わる可能性もあるため、141.50円割れからは弱気転換注意として20日深夜安値141.20円試しとし、141.20円割れからはダブルトップ完成による下落期入りとみて27日深夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月21日夜高値からの反落で遅行スパンは好転を維持しているものの悪化しやすい位置にあり、先行スパンからも転落しやすいところに来ている。先行スパンから転落する場合は下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、20日深夜安値割れを回避して142円台を回復するところからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月20日午前から21日夜への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるため、60ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、141.50円を下値支持線、142.00円を上値抵抗線とする。
(2)142円超えからは上昇再開とし、21日夜高値142.36円超えからは142円台後半(142.60円から143円手前)を目指す上昇を想定する。142.80円以上は反落注意とするが、141.50円以上での推移か直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは23日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)141.50円割れからはダブルトップ形成による下落期入りを警戒して20日深夜安値141.20円試しとし、底割れからは140円台後半(140.95円から140.60円台)への下落を想定する。140.70円以下は反発注意とするが、141.20円を割り込んでの推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】 

6/22(木)
休場 中国、香港、台湾
16:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.50%、予想 1.75%)
17:00 (ノ) ノルウェー中銀 政策金利 (現行 3.25%、予想 3.50%)
17:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 8.50%、予想 21.00%)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.75%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.2万件、予想 26.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 177.5万人、予想 178.2万人)
21:30 (米) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -2068億ドル、予想 -2175億ドル)
22:55 (米) ボウマンFRB理事、講演 

23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数・年率換算 (4月 428万件、予想 425万件)
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数 前月比 (4月 -3.4%、予想 -0.7%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 -0.6%、予想 -0.7%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感・速報値 (5月 -17.4、予想 -17.0)
23:00 (米) パウエル米FRB議長、上院銀行委員会証言
23:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 11.25%、予想 11.25%)
29:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演 

6/23(金)
休場 中国、台湾
08:01 (英) 6月 GFK消費者信頼感 (5月 -27、予想 -26)
08:30 (日) 5月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 3.5%、予想 3.2%)
08:30 (日) 5月 全国CPI・生鮮食品除く 前年同月比 (4月 3.4%、予想 3.1%)
08:30 (日) 5月 全国CPI・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (4月 4.1%、予想 4.2%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.5%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -3.0%、予想 -2.6%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 0.8%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 -2.6%、予想 -2.0%)
16:30 (独) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 43.2、予想 43.5)
16:30 (独) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 57.2、予想 56.2) 

17:00 (欧) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 44.8、予想 44.8)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 55.1、予想 54.4)
17:30 (英) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 47.1、予想 46.8)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 55.2、予想 54.9)
18:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、会議プレゼン
21:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
22:45 (米) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 48.4、予想 48.5)
22:45 (米) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 54.9、予想 54.0)
26:40 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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