ドル円見通し 160円台到達後に5円を超える急落、2022年9月22日の介入時に近い動き
〇ドル円、4/26日銀金会合直前の155.40台から156円台序盤へ上昇、午後の総裁会見後に156.82へ急伸
〇154.99まで下げるも切り返し、4/26夜の経済指標の結果受けドル全面高、4/27早朝158.42へ大幅続伸
〇4/29午前に祝日取引で薄商いの中160.16へ急伸、その後159円台を維持
〇13時過ぎから急落、14時台終盤155.04をつけ、一旦157.22まで戻してから16時台安値154.50へ一段安
〇神田財務官は市場介入についてノーコメントだが、実弾介入の疑われる下げ幅となる
〇4/26の日銀会合、政策金利据え置き、国債買い入れペースも変わらず
〇米3月コアPCEデフレーターは高止まり、インフレ高止まりないし再燃の可能性を示唆
〇米長期債利回りは総じて低下、FOMCを控え調整的にな低下か、NYダウ・ナスダックは連騰
〇156.88以下での推移中は一段安警戒とし、155.08割れからは154.50試しとする
〇156.88超えからはいったん戻しに入るとみて、158円前後への上昇を想定する
【概況】
ドル円は4月26日の日銀金融政策決定会合で政策金利が据え置かれ国債買い入れペースも変わらなかったことで円安継続感が強まり直前の155.40円台から156円台序盤へ上昇し、午後の植田日銀総裁会見においても追加利上げへの積極性や円安への強いけん制姿勢がみられなかったとして会見後に156.82円へ急伸した。一時的な売りにより瞬間的に154.99円まで反落したところから早々に切り返すと26日夜の米3月PCEデフレーターが予想を上回ったことによるドル全面高により27日早朝には158.42円まで大幅続伸した。
4月29日午前には祝日取引のため薄商いの中で160.16円へ急伸した後に159円台を維持していたが、13時過ぎから急落に転じて14時台終盤に155.04円をつけ、いったん157.22円まで戻してから16時台安値154.50円へ一段安した。1990年4月2日に付けた160.36円以来の160円台到達であり、直後の急落は2022年9月22日の市場介入により当日高値145.89円から140.36円まで5.53円の下落幅となった時に近い印象だ。
4月29日夜には急落一服による買い戻しで156.88円まで戻したものの30日未明に155.08円まで反落し、30日朝にかけては156円を挟んだ揉み合いで推移している。
【神田財務官はノーコメント】
神田財務官は市場介入についてノーコメントとし、「投機による激しい、異常とも言える変動が国民経済にもたらす悪影響には看過し難いものがある」、「為替介入の有無について申し上げることはない」、「引き続き必要に応じて適切な対応をしていきたい」と述べた。
アルゴリズムによる売りの連鎖が原因との見方もあるものの実弾介入の疑われる下げ幅となった。市場介入の有無については5月末の外国為替平衡操作実施状況が公表されるまでわからない。
今週は4月30-5月1日に米FOMCから週末の米4月雇用統計へ重要イベントが続く。4月29日の急落が市場介入だったとして追撃的な介入があるのかどうか、2022年に9月22日の介入後に10月21日高値151.94円へ一段高した時のように高値更新へ進むのか、波乱含みでの推移により試される週となりそうだ。
【日銀会合は現状維持】
4月26日の日銀金融政策決定会合では短期金利の誘導目標を現状の「0.0〜0.1%程度」で据え置き、前回会合で国債購入額について「これまでと概ね同程度の金額(月間6兆円程度)」とした文言を削除して国債購入規模の柔軟性を示した。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」においては基調的な物価上昇が続けた「金融緩和度合いを調整していく」としたが、当面は「緩和的な金融環境が継続する」とし、生鮮食品を除く消費者物価指数の見通しについては2024年度を2.8%(1月時点では2.4%)、2025年度は1.9%(同1.8%)と上方修正したものの2026年度は1.9%とした。
日銀は前回会合(3月18-19日)でマイナス金利を解除して17年振りの利上げとしたものの、連続的な利上げ姿勢を示さずに当面は金融緩和が続くとしたため会合後に急激な円安反応を招いて2022年10月21日高値151.94円を超えた。152円を壁として持ち合いに入っていたところ、4月10日の米3月CPIが予想を上回る上昇率だったことで153円台へ急伸し、4月26日の日銀会合結果と26日夜の米PCE統計をきっかけに155円の壁を超えると堤防決壊的な急伸となった。4月29日の急落前までは投機的な円売りも当然ながら大きな要因だったもののファンダメンタルズに即したドル高円安という見方もできるため、今週の一連のイベントがドル全面高要因となる場合には介入を乗り越える円安再開となる可能性も否定できないところだ。
【米3月のコアPCEデフレーターは高止まり】
4月26日夜に米商務省が発表した3月PCE(個人消費支出)の前月比は0.8%となり2月と変わらなかったが市場予想の0.6%を上回り高止まりした。PCEデフレーターは全体の前年同月比が2.7%となり2月の2.5%から伸びが加速して市場予想の2.6%を上回った。FRBがインフレ指標として最重視しているコアPCEデフレーターは前月比0.3%で2月及び市場予想と一致し、前年同月比は2.8%で2月と変わらなかったものの市場予想の2.7%を上回った。FRBの2.0%物価安定目標を上回る状況でインフレ低下ペースが鈍りインフレ高止まりないし再燃の可能性を示唆したといえる。
FRBは4月30-5月1日にFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利等の現状維持が予想されているが、昨年12月と今年3月の会合で示した2024年3回利下げ想定が2回以下へ後退するのではないかと警戒されている。パウエルFRB議長は4月16日に「インフレ率が%目標に向かって持続的に下がることへの一段の確信が必要」とし、「最近の指標を踏まえるとこうした確信に至るには予想よりも長くかかる公算が大きい」と述べたことで3回利下げ期待度が低下し、利下げ開始時期が9月会合以降へずれ込むとの見方が広がっている。
【米10年債利回りは続落】
4月29日の米長期債利回りは総じて低下した。4月26日発表の米3月PCEが高止まりの様相だったものの市場予想に近かったことで過度のインフレ過熱警戒感が緩んだこととFOMCを控えて調整的に低下している印象だ。
長期金利指標の10年債利回りは4月25日に4.74%をつけて12月27日に付けた3.78%以降の最高を更新したが、26日に同0.04%低下の4.67%で先週を終え、29日は先週末比0.05%低下の4.62%として2営業日連続低下となった。
30年債利回りは4月25日に一時4.84%をつけて昨年12月27日に付けた3.94%以降の最高を更新した後は修正安に入り、4月26日は前日比0.03%低下、29日は0.05%低下して4.73%となった。政策金利動向に敏感な2年債利回りは4月25日に一時5.03%をつけて1月12日に付けた4.24%以降の最高を更新した後は高止まりの様相で26日は前日比変わらずの5.00%で週を終え、29日は先週末比0.02%低下の4.98%となった。
一方、NYダウの4月29日は前日比146.43ドル高と上昇して26日の153.86ドルから連騰した。3月21日に39889.05ドルまで史上最高値を伸ばしてから4月17日安値37611.56ドルまで大幅下落した後は下げ渋りに入っている。ナスダック総合指数は4月29日を前日比55.18ポイント高として26日の前日比316.14ポイント高から連騰した。ダウ、ナスダックともに企業決算好調で買われ、米長期債利回りが上昇一服で低下したことを好感している。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は4月29日午前高値160.16円から夕刻安値154.50円まで5.66円の急落幅となり、29日夜に156.88円へ戻して戻り幅を2.38円としたが、急落に対する半値戻しには届かずにいる。波乱含みの様相だが、4月29日夕安値を目先の底とし、29日夜高値超えからは上昇期入りとして5月2日午前から6日午前にかけての間への上昇を想定し、29日夕安値割れからは新たな下落期入りとして5月2日夕から6日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月29日夕刻への急落遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。乱調な展開のため、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4月29日午前の急伸時に95ポイントを付けてから30ポイント台へ急落し、その後も50ポイント以下での推移が続いているのでまだ下落余地ありとみる。50ポイント台は戻り売り有利とし、60ポイント超えからは上昇再開として70ポイント台へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月30日未明安値155.08円を下値支持線、29日夜高値156.88円を上値抵抗線とする。
(2)156.88円以下での推移中は一段安警戒とし、30日未明安値割れからは29日夕安値154.50円試しとし、29日夕安値割れからは153円台後半への下落を想定する。153円台後半は買われやすいとみるが、29日夜高値を超えないうちは5月1日の日中も一段安余地が残るとみる。
(3)156.88円超えからはいったん戻しに入るとみて158円前後への上昇を想定する。158円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、156.88円を超えた後も156円台を維持しての推移なら1日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
4/30(火)
休場 ロシア(銀行休業)、べトナム、米FOMC(連邦公開市場委員会)初日
10:30 (中) 4月 国家統計局製造業PMI (3月 50.8、予想 50.3)
10:30 (豪) 3月 小売売上高 前月比 (2月 0.3%、予想 0.2%)
10:45 (中) 4月 財新製造業PMI (3月 51.1、予想 51.0)
14:00 (日) 3月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (2月 -8.2%、予想 -7.4%)
15:00 (独) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -1.9%、予想 1.4%)
15:00 (独) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 1.7%、予想 -0.7%)
16:55 (独) 4月 失業率 (3月 5.9%、予想 5.9%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 -0.3%、予想 0.1%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調済 前年同期比 (10-12月 -0.2%、予想 -0.2%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (10-12月 -0.4%、予想 -0.8%)
18:00 (欧) 4月 HICP(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.4%)
18:00 (欧) 4月 コアHICP速報値 前年同月比 (3月 2.9%、予想 2.6%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10−12月 0.0%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 0.1%、予想 0.2%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)
21:30 (米) 1-3月期 雇用コスト指数 前期比 (10-12月 0.9%、予想 1.0%)
22:00 (米) 2月 FHFA住宅価格指数 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.2%)
22:00 (米) 2月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (1月 6.6%、予想 6.7%)
22:45 (米) 4月 シカゴ購買部協会景況指数 (3月 41.4、予想 45.0)
23:00 (米) 4月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (3月 104.7、予想 104.0)
5/1(水)
休場 香港、中国、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム
ドイツ、フランス、スイス、ノルウェー、オランダ、イタリア、ベルギー、スペイン、ロシア
インド、パキスタン、トルコ、南ア、メキシコ、ブラジル
07:45 (NZ) 1-3月期 就業者数 前期比 (10-12月 0.4%、予想 0.3%)
07:45 (NZ) 1-3月期 就業者数 前年同期比 (10-12月 2.4%、予想 1.6%)
07:45 (NZ) 1-3月期 失業率 (10-12月 4.0%、予想 4.3%)
17:30 (英) 4月 S&Pグローバル 製造業PMI改定値 (速報 48.7、予想 48.7)
21:15 (米) 4月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (3月 18.4万人、予想 18.0万人)
22:45 (米) 4月 S&Pグローバル 製造業PMI改定値 (速報 49.9、予想 49.9)
23:00 (米) 4月 ISM製造業景況指数 (3月 50.3、予想 50.1)
23:00 (米) 3月 建設支出 前月比 (2月 -0.3%、予想 0.3%)
23:00 (米) 3月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (2月 875.6万件、予想 869.0万件)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会)政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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