トルコリラ円見通し 対ドルでリラ暴落に一服感あるもののドル円の反落で失速(23/6/16)

トルコリラ円の6月15日は概ね6.01円から5.90円の取引レンジ、16日早朝の終値は5.93円で前日終値の5.94円からは0.01円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 対ドルでリラ暴落に一服感あるもののドル円の反落で失速(23/6/16)

トルコリラ円見通し 対ドルでリラ暴落に一服感あるもののドル円の反落で失速

〇トルコリラ円、ドル円急伸により6/15午後高値で6.01へ上昇し、6/13日安値5.83以降の高値をつける
〇その後ドル円の急落から6/16早朝5.90へ下落、6/16朝に一時的な上昇で5.99を付けるも早々に失速
〇対ドル、6/15は概ね23.70から23.38の取引レンジ、取引時間中の最安値更新を回避し暴落商状に一服感
〇終値ベースでは23.66をつけ、最安値を更新
〇純外貨準備高は若干増加するも、マイナス勘定は継続
〇5.95超えからは6.00前後への上昇を想定するが、6.00円前後は反落警戒水準とみる
〇5.90割れからは下落期入りとみて、5.87、5.85を順次試す下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月15日は概ね6.01円から5.90円の取引レンジ、16日早朝の終値は5.93円で前日終値の5.94円からは0.01円の円高リラ安だった。
エルドアン大統領再選によるリラ暴落に一服感が出ているところでドル円が15日未明の米FOMC後に急伸したためにトルコリラ円は15日午後高値で6.01円へ上昇して6月13日安値5.83円以降の高値としたが、ドル円が急伸一巡により15日深夜にかけて揺れ返しの急落となったためにトルコリラ円は16日早朝に5.90円へ下落した。16日朝に一時的な上昇で5.99円を付けたものの早々に失速している。

ドル円は6月14日夜の米PPI(生産者物価指数)上昇率が顕著に鈍化したことで14日早朝高値140.30円から14日深夜安値139.28円へ下落したものの、FOMCが市場予想を上回る年内あと2回の利上げを示唆したことで140円台を回復、15日の日中はドル買いが勢い付いたことで午後には141.50円まで急伸した。しかし当面のドル買いイベントを通過したこと、15日夜にECBが利上げを決定して7月の追加利上げ姿勢を示したことでユーロが買われ、15日夜の米経済指標もドル高反応を呼ばずにドル買い一巡感が優勢となったために15日深夜には140.14円へ急落し、16日午前に安値をさらに更新して140円台を維持できるか試している。

トルコリラ円はエルドアン大統領の再選を挟んで連日の大幅下落となり6月7日には凡そ7%安の暴落で2021年12月20日安値6.17円を割り込んで史上最安値更新に入り、13日早朝には最安値を5.83円まで切り下げたが、トルコ新内閣発足による政策転換への期待感や中銀利上げの可能性が取り沙汰される中でドル/トルコリラの暴落商状が一服したために、目先はドル円の流れを追いかける展開となっている。しかし、リラ暴落は一服したとはいえ、政策転換や利上げ等の具体的な方策が見られないうちはリラの買い戻しへ向かうのは時期尚早と市場は見ているようで、トルコリラ円もまだ最安値近辺での揉み合い範囲にとどまっている。

【対ドルでは暴落商状に一服感があるものの終値ベースでは最安値を更新】

ドル/トルコリラの6月15日は概ね23.70リラから23.38リラの取引レンジ、16日早朝の終値は23.66リラで前日終値の23.55リラからは0.11リラのドル高リラ安だった。
エルドアン大統領の再選を挟んでリラ安が勢いを増して6月7日には凡そ8%安の暴落商状で23.31リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、8日から13日まで連日の史上最安値更新で13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げた。
6月14日と15日は新たな取引時間中の最安値更新を回避しておりリラの暴落商状に一服感が見られるものの、15日終値は13日終値23.62リラを超えて終値ベースでの最安値を更新している。

エルドアン大統領は再選後に新内閣を立ち上げ、金融・経済政策で正統派とみられる人材を財務相と中銀総裁に起用しており、今週は副大統領が3か年計画を策定中とし、14日にはエルドアン大統領がトルコメディアの「大統領は金利政策の大幅な変更を支持するのか」との質問に対して「財務相の考えに基づき我々は財務相が迅速に無理なく中銀とともに措置を講じることを受け入れた」と述べたため、中銀の利上げ等によるリラ安阻止へ向かう可能性も意識されて暴落商状がやや落ち着いている印象もある。しかし大統領は「思い違いをしてもらっては困る」とも述べて自身の金融経済政策思想は変わらないと強調しており、利上げがあったとしても一時的なものに留まるのではないかと思われる。

【純外貨準備高は若干増加するも依然としてマイナス勘定】

6月15日に発表されたトルコ中銀による週次の外貨準備高は6月9日時点のグロスで577.9億ドルとなり6月2日時点の582.4億ドルから減少したが、純外貨準備高(ネット)ではマイナス31.7億ドルとなり6月2日時点のマイナス57億ドルから改善した。
純外貨準備高は5月19日時点でマイナス1.5億ドルとなり2002年以来21年ぶりのマイナス勘定となり、5月26日時点ではマイナス40.05億ドルへ大幅に悪化、6月2日時点ではさらにマイナス57億ドルと公式記録のある2002年以降の過去最低を更新してきた。6月9日時点へ若干の改善が見られたものの、マイナス勘定からの劇的な改善は難しそうだ。

リラ暴落阻止のためには利上げが一番効果的だが、外貨準備高を取り崩し、あるいは借金をして市場介入を続けることや、企業の外貨保有規制の強化、FX市場での取引規制、リラ預金保護政策の拡大等が考えられる。このうちリラ預金保護制度についてユルマズ副大統領は15日に「トルコはリラ預金を為替下落から保護する政府の制度を直ちに放棄することはできない」と述べており、年末まで延長されているこの制度については段階的に終了してゆく姿勢が見られる。
6月22日のトルコ中銀金融政策委員会では劇的な利上げが行われるのではないかとの見方も出ているが、一時的な利上げにとどまるなら市場の反応も一時的なものに終わり、リラへの信頼感回復にはつながらないのではないかとみられているようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月13日早朝安値からは下げ渋りに入ったため、14日午前時点では5.95円を超えるところからは強気サイクル入りとし、6月15日早朝への上昇で5.95円を超えたために15日午前時点では13日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして15日の日中から16日夜にかけての間への上昇を想定した。
6月15日午後に6円台へ到達してから反落しているため、既に新たな弱気サイクル入りしている可能性があるとみて、5.95円超えからは上昇再開とするが、5.90円割れからは弱気サイクル入りとして16日の日中から20日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月15日午後からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月15日午後に70ポイントへ到達してから40ポイント割れへ反落しているのですでに下落期入りしているとみる、55ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとするが、50ポイント以下での推移中は下向きとして20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.90円を下値支持線、5.95円を上値抵抗線とする。
(2)5.95円超えからは6.00円前後への上昇を想定するが6.00円前後は反落警戒水準とみる。
(3)5.93円以下での推移中は下向きとし、5.90円割れからは下落期入りとみて5.87円、5.85円を順次試す下落を想定する。5.85円以下は反騰警戒とするが、5.90円以下での推移なら週明け安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月19日
 16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 91.1)
6月20日
 23:30 5月 中央政府債務 (4月 4兆5881億リラ)  
6月21日
 16:00 6月 製造業信頼感指数 (4月 108.3)
 16:00 6月 設備稼働率 (4月 76.0%)
6月22日 トルコ中銀金融政策決定会合



注:ポイント要約は編集部

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