トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの暴落に一服感、リラ安対策での利上げ可能性を意識 (23/6/15)

トルコリラ円の6月14日は概ね5.97円から5.90円の取引レンジ、15日早朝の終値は5.94円で前日終値の5.93円からは0.01円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの暴落に一服感、リラ安対策での利上げ可能性を意識 (23/6/15)

対円、対ドルでの暴落に一服感、リラ安対策での利上げ可能性を意識

〇トルコ円、6/14はドル円の下落場面で5.90へ下げたもののFOMC後のドル円反騰を受け5.97へ切り返す
〇6/15午前序盤は5.98を付けるなどやや戻りを試す流れが優勢
〇対ドル、6/14は新たな安値更新を回避、前日の最安値からも若干戻して暴落商状に一服感
〇新内閣における正統派とみられる人材の起用や中銀の利上げ等、政策変化への様子見で下げ渋りの様相
〇エルドアン大統領の発言、新財務相と中銀総裁の進言により一時的な利上げの可能性があるとの認識か
〇5.98超えからは6.00前後への上昇を想定
〇5.92割れを弱気転換注意とし、5.90割れからは下落再開とみて5.88、5.85を順次試す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の6月14日は概ね5.97円から5.90円の取引レンジ、15日早朝の終値は5.94円で前日終値の5.93円からは0.01円の円安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選決定を挟んでトルコリラは対ドルで連日にわたる史上最安値の更新を続け、トルコリラ円も6月7日には凡そ7%安の暴落で2021年12月20日安値6.17円を割り込んで史上最安値更新に入り、12日には終値ベースで6円を割り込み、取引時間中の最安値を5.83円まで切り下げた。
しかし、トルコ新内閣発足による政策転換への期待感やリラ暴落阻止へ向けた利上げもあり得るとの見方から13日は新たな安値更新を回避して暴落商状にやや一服感がでている。
6月14日は米5月PPI(生産者物価指数)の上昇率が前月比でマイナス0.3%へ低下して前年比も4月の2.3%から1.1%へ鈍化したことにより15日未明のFOMC前にドル円は139円台前半へ下落したものの、FOMCが予想通りに利上げを見送ったものの年内の追加利上げをあと2回との予想を示したことで140円台到達へ反騰した。

トルコリラ円は対ドルでのリラ安が一服する中でドル円の下落場面で直前高値5.95円から5.90円へ下げたもののFOMC後にドル円が反騰したことで5.97円へ切り返した。6月15日午前序盤は5.98円を付けるなどやや戻りを試す流れが優勢となっているようだ。
今夜はECB理事会での利上げが予想され、米小売売上高やNY連銀景況指数等の指標発表も相次ぎ、明日は日銀の金融政策決定会合もあるため、ドル円もそれらの内容次第では大きく動く可能性があるところと注意し、対ドルでのリラ安が落ち着いている限りにおいてトルコリラ円はドル円の騰落を見ながら戻り高値の切り上げを試しやすいところと考える。

【対ドルでは暴落商状に一服感】

ドル/トルコリラの6月14日は概ね23.68リラから23.23リラの取引レンジ、15日早朝の終値は23.55リラで前日終値の23.62リラからは0.07リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選を挟んでリラ安が勢い付き、6月7日に凡そ8%安の暴落商状で23.31リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、8日から13日まで連日の史上最安値更新で13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)まで安値を切り下げた。
6月14日は新たな安値更新を回避、13日の終値ベースでの最安値からも若干戻しており、暴落商状に一服感が出ている。 

エルドアン大統領再選後の新内閣において金融・経済政策で正統派とみられる人材が起用されたことで、高インフレが進行する中で連続利下げを強行してきたエルドアン大統領の政策姿勢に変化が見られるのではないかとの思惑や、ドル/トルコリラでのリラ安がさらに進行するとの見方が相次ぐ一方でも中銀が大胆な利上げに踏み込むのではないかとの見方もでてきたことで、市場は6月13日までの政策転換催促的なリラ売り攻勢を強める流れだったところから、14日は政策変化への様子を見たいとの思惑で下げ渋りの様相となったと思われる。

【エルドアン大統領発言に思惑交錯】

6月13日にエルドアン大統領はトルコメディアが「大統領は金利政策の大幅な変更を支持するのか」との質問に対して「思い違いをしてはならならいが、財務相の考えに基づき我々は財務相が迅速に無理なく中銀とともに措置を講じることを受け入れた」と述べた。また「中銀のエルカン新総裁に自分の予想について話をした」とし、「神の思し召しがあれば財務相も中銀総裁も我々を困惑させることはないだろう。うまく行けば、我々は良い結果を得られると思う」とも述べた。

この発言は6月14日に報じられたが、文字通りに受け止めれば、エルドアン大統領の「低金利がインフレを抑制する」との非伝統的な金融政策思想は変わらないものの、当面の問題への対応としてシムシェキ新財務相とエルカン中銀総裁の進言により一時的な利上げを行う可能性があるとの認識を示したものではないかと考えられる。
2020年11月にかけてのリラ暴落に際して当時のトルコ中銀が利上げを断行してリラ安に歯止めをかけたが、早々に利下げを再開しなかったことを不満としてエルドアン大統領は中銀総裁を解任、後任のカブジュオール総裁が連続利下げを実施したことで2021年12月への暴落が発生している。

中銀総裁や財務相の交代によりリラ暴落に歯止めをかけた状況と、エルドアン大統領再選後の新閣僚によりリラ暴落に再び歯止めをかけようとしている状況は似ているかもしれない。
大手金融機関は政策金利が20%台や40%台へ大幅に引き上げられる可能性にも論評しているが、今後の利上げ姿勢やリラ安抑制のための財務省による新政策等が発表される場合はトルコリラも2020年11月からの反騰時のように持ち直す可能性が出てくるかもしれない。だが、その時の経験は利上げによるリラ安阻止は長続きしなかったということでもある。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月13日早朝安値からは下げ渋りに入ったため、14日午前時点では9日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクルの継続として5.90円割れからは下げ再開としたが、次に5.95円を超えるところからは強気サイクル入りの可能性ありとみて6円を試す上昇を想定するとした。
6月15日早朝への上昇で5.95円を超えてきているので、13日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして15日の日中から16日夜にかけての間への上昇を想定する。ただし、5.90円割れからは弱気サイクル入りとして16日朝から20日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月13日早朝からの持ち直しにより遅行スパンが好転を維持、先行スパンからも上抜けてきているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落する場合は下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月13日夜以降に50ポイント割れを買われて60ポイント台を試しているので70ポイント超えを試す上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.90円を下値支持線、5.98円を上値抵抗線とする。
(2)5.98円超えからは6.00円前後への上昇を想定する。6円以上は反落警戒とするが、5.95円を上回っての推移なら16日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.92円割れを弱気転換注意とし、5.90円割れからは下落再開とみて5.88円、5.85円を順次試す下落を想定する。5.85円以下は反騰警戒とするが、5.90円以下での推移なら16日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月15日
 17:00 5月 財政収支 (4月 -1324.7億リラ)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 グロス (6/2時点 582.4億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 ネット (6/2時点 -57.0億ドル)
6月19日
 16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 91.1)
6月20日
 23:30 5月 中央政府債務 (4月 4兆5881億リラ)  
6月21日
 16:00 6月 製造業信頼感指数 (4月 108.3)
 16:00 6月 設備稼働率 (4月 76.0%)
6月22日 トルコ中銀金融政策決定会合


注:ポイント要約は編集部

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