ドル円見通し ドル買いイベント通過、年初来高値更新から1円を超える反落
〇ドル円、FOMC後のドル買い円売りで6/15夕刻141.50へ急伸、5/30高値140.92を超え年初来高値更新
〇その後当面のドル買い円売り材料消化から揺れ返しの下落強まり、深夜140.14まで下げる
〇ECBは8会合連続利上げを決定、今後の追加利上げ姿勢を強調
〇本日は日銀金融政策決定会合結果公表、基本政策は現状維持と見込まれる
〇昨日発表の米経済指標の結果はまちまち、米長期債利回りは低下、NYダウは大幅上昇
〇140.65超えからは141円手前を試すとみるが、その後の反落警戒とする
〇139.70割れからは、139円台前半(139.50から139.00)への下落を想定する
【概況】
ドル円は6月14日夜に米5月PPI(生産者物価指数)上昇率の低下によるドル売りで139.28円へ下落したが、15日未明のFOMCが予想通りに利上げを停止したものの年内あと2回の利上げ見通しを示したことで140.16円へ急伸して15日朝にかけては140円を挟んだ揉み合いで推移していたが、15日の日中はFOMC後のドル買い円売りが勢いを増したために夕刻高値で141.50円へ急伸して5月30日高値140.92円を大幅に超えて年初来高値を更新した。しかし、欧州入り以降は下げに変化し上げ幅を削る展開、15日夜の米経済指標においても小売売上高が堅調で輸入物価が予想以上に低下、NY連銀の景況指数では上振れが見られた中、米長期債利回りが低下し、ECBの利上げと利上げ継続姿勢によりユーロドルが上昇したため、ドル円は当面のドル買い円売り材料は消化したとして揺れ返しの下落が強まり、深夜には140.14円まで下げた。いったん戻した後も軟調推移で16日午前序盤には15日深夜安値を割り込んでいる。
【ECBは利上げ継続姿勢】
ECB(欧州中銀)は15日の理事会で、政策金利を0.25%引き上げ、昨年7月以降8会合連続利上げとし、今後の引き締めも継続するとした。民間銀行がECBに預ける際の中銀預入金利は3.50%へ引き上げられて2001年以来22年ぶり高水準となり、主要政策金利は4.00%となった。
ラガルドECB総裁は会見で「賃金上昇が物価上昇の圧力となっている」「経済指標に大きな変更がない限り7月に利上げを継続する可能性は高い」と述べて追加利上げ姿勢を強調した。5月のユーロ圏消費者物価指数上昇率は前年同月比6.1%で上昇と4月の7.0%から鈍化し、コア指数も4月の5.6%から5.3%に鈍化したもののECBの目標である2%を大きく上回っており、ECBは今回の2023年インフレ率見通しを5.4%として前回会合から0.1%上方修正している。
【本日は日銀金融政策決定会合】
日銀は本日昼頃に金融政策決定会合の結果を示す。前回会合では黒田総裁時代からの金融緩和政策について1年から1年半をかけて検証するとしたことで当面は大きな政策修正はないとの見方が強まり円安要因となったが、植田総裁はその後に検証期間中でも政策修正はあり得るとして市場に対して若干の牽制を行っている。
今回の会合でも検証の継続として政策金利や長短金利操作等の基本政策は現状維持と見込まれており、物価見通しや長短金利操作の弊害等についての見解が注目されるが、市場を揺らすような動きにはならないのだろうと推察されている。欧米のインフレ率は依然として高水準にあるものの鈍化傾向が見られ、日本の輸入物価も前年比でマイナスに転じてきていることを踏まえれば、引き締め姿勢への転換を急ぐこともないという状況だろう。
【6月15日の米経済指標はまちまち】
米経済指標はまちまちだったが、インフレ関連指標の低下が目立ったため、FOMC後のドル買いを助長する内容とはならなかったようだ。NY連銀の6月製造業景況指数はプラス6.6となり、5月のマイナス31.8から大幅に改善して2か月振りのプラス、市場予想のマイナス15.1を大きく超えた。新規受注が5月のマイナス28.0からプラス3.1へ改善し、インフレ指標である支払価格が5月の34.9から22.0へ低下、受取価格も5月の23.6から9.0へと大幅に低下したことが注目された。
米商務省による5月小売売上高は前月比0.3%増となり、4月の0.4%増に続いて2か月連続のプラスで市場予想の0.1%減を上回った。変動の激しい自動車・同部品を除いて0.1%増、ガソリンを除いて0.6%増、自動車・同部品・ガソリンを除いて0.4%増だった。
米労働省による新規失業保険申請件数は6月10日までの週間で26万2000件となり前週と変わらず、市場予想の24万9000件を上回り、失業保険受給者総数は6月3日までの週間で177万5000人となり、前週から2万人増加して市場予想の176万5000人を上回った。
米フィラデルフィア連銀による6月製造業景況指数はマイナス13.7で5月のマイナス10.4から悪化して10か月連続のマイナスとなったが市場予想のマイナス14.0を上回った。
米労働省による5月の輸入物価指数は前月比0.6%低下となり、4月の0.3%上昇から大きく鈍化して市場予想の0.5%低下を下回って3年ぶりの低水準となった。5月の輸出物価は前月比1.9%低下で市場予想と一致したが4月の0.1%低下からさらに鈍化した。
米FRBによる5月の鉱工業生産指数は前月比0.2%低下となり、4月の0.5%上昇を下回って5か月振りの悪化となったが製造業は0.1%上昇で2か月連続のプラスだった。
【米長期債利回りは低下、NYダウは反騰】
6月15日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%低下の3.72%となった。14日はPPIの鈍化により3.77%へ低下してからFOMC後に3.85%へ急伸し、その後に再び低下して前日比0.03%低下の3.79%となったが、15日も続落したことによりFOMC通過による上昇には一巡感が出ている。
30年債利回りは14日の前日比0.04%低下から15日も0.04%低下の続落で3.84%となった。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.04%低下の4.65%となった。14日はFOMC前に4.59%へ低下したところから4.83%へ急伸して終盤に上昇幅を削り前日比0.02%上昇だったが、15日は上昇一巡感が見られる。
一方でNYダウは前日比428.73ドル高と大幅上昇、終値ベースで年初来高値を更新した。FOMCの追加利上げ姿勢を嫌って14日は一時400ドル安を超える下落となり前日比232.79ドル安だったが、利上げ状態が続いたとしても年内あと2回の追加利上げは難しいのではないかとの楽観的な受け止め方が優勢となっているようだ。ナスダック総合指数は156.34ポイント高となり14日から続伸している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月14日深夜へ下落したところからFOMCを通過して急伸したが、15日夕高値から反落に転じている。FOMCを通過しての上昇一巡による下落であり、既に1円を大幅に超える下落のため、本日の日銀金融政策決定会合での強気サプライズがなければ21日深夜にかけての安値試しを続けやすい状況に入ったのではないかと思われるが、6月に入ってからは1円を超える規模の騰落を繰り返してきたので乱調な展開に注意する。
60分足の一目均衡表では6月15日夕高値からの急落で遅行スパンが悪化しつつあり、先行スパンに対する余裕も乏しい。先行スパンから転落する場合は下げ足が速まるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。26本基準線が戻りの抵抗になりやすいと思われるが、26本基準線超えから続伸に入る場合は上昇再開を警戒する。
60分足の相対力指数は6月15日夕に70ポイント台後半へ上昇してから16日午前に40ポイント割れへ急低下しているので、50ポイント前後を抵抗として20ポイント台への低下を想定する。強気転換には55ポイントを超えてその後も50ポイント台を維持して指数の高値を切り上げてゆくような反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.70円を下値支持線、140.65円を上値抵抗線とする。
(2)140.35円から140.65円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。140.65円超えからは141円手前を試すとみるがその後の反落警戒とする。
(3)139.70円割れからは139円台前半(139.50円から139.00円)への下落を想定する。139.25円以下は反発注意とするが、140円以下での推移が続く場合や、直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/16(金)
休場 南ア
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
18:00 (欧) 5月 HICP(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (4月 6.1%、予想 6.1%)
18:00 (欧) 5月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (4月 5.3%、予想 5.3%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (5月 59.2、予想 60.0)
6月19日(月)は米国市場休場
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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