トルコリラ円見通し 7日の暴落からさらに続落、史上最安値更新止まらず (23/6/12)

トルコリラ円の6月9日は概ね6.03円から5.87円の取引レンジ、10日早朝の終値は5.95円で前日終値の6.01円から0.06円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 7日の暴落からさらに続落、史上最安値更新止まらず (23/6/12)

7日の暴落からさらに続落、史上最安値更新止まらず

〇トルコリラ円、対ドルでのリラ暴落に合わせ連日最安値更新、6/12午前序盤は6/9午前安値を割り込む
〇エルドアン大統領再選が確定してからのリラ暴落により、2021年10月から12月への暴落時に近い動き
〇対ドル、史上最安値更新続き2021年末にかけての通貨危機レベルに、6/12午前序盤も最安値を更新
〇貿易収支・純外貨準備高の悪化等、リラ安を助長するファンダメンタルズの悪化続く
〇新財務相や新中銀総裁による政策転換に市場は期待しているが、エルドアン大統領の容認が必要だろう
〇6.00超えからは6.03前後への上昇を想定するが、戻り一巡後の反落警戒
〇5.85割れからは5.80前後への下落を想定

トルコリラ円の6月9日は概ね6.03円から5.87円の取引レンジ、10日早朝の終値は5.95円で前日終値の6.01円から0.06円の円高リラ安だった。
1月16日と3月24日の同値安値6.74円を割り込んで一段安に入り、6月7日には2021年12月20日安値6.17円及び6円の大台を割り込んで史上最安値を更新、8日、9日と最安値更新が続いている。
先週のドル円は139円割れを買われて140円台前半では売られる139円台を中心とした持ち合い推移にとどまった。6月13日の米CPI、15日未明のFOMC、15日夜のECB理事会、16日の日銀金融政策決定会合と重要イベントが続く中で方向感が定まらない展開だったが、トルコリラ円としてはドル円の持ち合い中の騰落を気にしつつも対ドルでのリラ暴落に合わせて大崩れしたという状況だ。
6月12日午前序盤は9日午前安値を割り込み始めている。

【2021年10月から12月への暴落時に近い動き】

【2021年10月から12月への暴落時に近い動き】

トルコリラ円は昨年7月後半から今年3月後半にかけての間においては、ドル/トルコリラの下落が緩やかだったことによりドル円の騰落に同調する動きを見せていたものの、ドル/トルコリラの下落が勢いを増したことにより、ドル円が5月2日へ上昇したところでは3月8日高値から大きく切り下がった水準への上昇にとどまり、ドル円が5月30日にかけて年初来高値を更新した上昇期の反応も鈍いままとなり、5月28日の大統領選挙決選投票でエルドアン大統領再選が確定してからのリラ暴落により、ドル円の騰落を多少気にしつつも暴落商状で安値更新を続けている。
トルコリラ円の下落幅は週間では6月2日終値の6.68円から1.20円の大幅安であり下落率は凡そ11%だが、同レベルの下落としては、2021年10月に12円を割り込んで当時の史上最安値更新から2021年12月安値へと暴落した時や、2020年2月に18円を割り込んで2019年5月以降の持ち合い相場から転落した時に匹敵するものと思われる。

【対ドルでの史上最安値更新続き、2021年末にかけての通貨危機レベルに】

ドル/トルコリラの6月9日は概ね23.54リラから23.00リラの取引レンジ、10日早朝の終値は23.37リラで前日終値の23.12リラからは0.25リラのドル高リラ安だった。
週間では6月2日終値20.96リラから2.41リラのドル高リラ安となった。
エルドアン大統領の再選によるリラの先安感から連日の史上最安値更新となり、6月7日に87%近い暴落商状で23.31リラへ史上最安値を更新し、8日は暴落商状にやや減速も見られたものの23.41リラへ安値を更新、9日も取引時間中及び終値ベースでの史上最安値更新となった。
5月末からはリラ安に歯止めが効かなくなって2021年12月にかけて発生した通貨危機レベルの暴落商状に陥ったが、5月の月間では4月末19.45リラのから5月末の20.80リラへ凡そ7%の下落だったが、6月は6月9日までの7営業日で12.4%の下落であり、2021年11月の月間40%の下落率に迫り、月間の下落幅としても7営業日経過時点で2.57リラとなり2021年11月の3.87リラを凌駕する勢いだ。
6月12日午前序盤には23.61〜23.79リラのレンジで最安値をさらに更新している。

【リラ安を助長するファンダメンタルズの悪化続く】

6月2日に発表された5月のトルコ貿易統計(通関ベース)では貿易赤字が126.6億ドルとなり4月の88.5億ドルから拡大して今年2月の144億ドルに迫る悪化となった。リラ安と世界的なインフレの高止まりによる輸入額の急増が赤字の背景であり、観光収入等による多少の支えはあるものの貿易収支の悪化が経常収支の悪化を招く状況が続いている。
6月5日に発表されたトルコの5月CPI上昇率は前月比0.04%、前年比39.59%と名目的には鈍化しているものの、コア指数上昇率は前月比で4.2%となり4月の3.2%から加速し、前年比も46.6%で4月の45.5%を上回っており、高インフレの改善は期待が薄い。

6月8日に発表されたトルコの純外貨準備高はマイナス57億ドルとなり前週のマイナス44億ドルから悪化して過去最低を更新しており、トルコ中銀による外貨準備を取り崩しての非公式市場介入が限界に来たことを示し、リラ暴落に歯止めがかからなくなっている。先週はトルコ中銀が介入していないとの見方もある。
6月9日に発表された4月鉱工業生産は前月比1.2%減、前年比14.1%減と冴えないが、昨年後半からの成長鈍化から抜け出せずにいることを示している。

【ゴールドマンの予想ペースを超えるリラ暴落】

金融大手ゴールドマンサックスは6月4日にドル/トルコリラの見通しについて、従来予想の3か月後に1ドル19.00リラ、6カ月後に21リラ、12カ月後に22リラとしていたところから今回の修正で3か月後に23リラ、6か月後に25リラ、12か月後に28リラへ下落するとした。しかし、同社予想の3か月を待たずにドル/トルコリラはすでに23リラ台へ下落している。
大統領選挙前の4月時点でJPモルガンは「大統領選挙後に1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落する」と予想し、「最悪のシナリオでは年末に1ドル30リラ」としたが、最悪のシナリオへ進みかねない状況と思われる。

【新財務相や新中銀総裁はリラ暴落を落ち着かせられるのか】

エルドアン大統領は再選後の新内閣で財務相に副首相や財務相経験があり市場の評価も高かったシムシェク氏を登用、正統派経済政策支持者とされるユルマズ氏を副大統領とし、さらにトルコ中銀総裁に米ファーストリパブリック銀やゴールドマンサックス、ティファニーでの幹部職歴があるエルカン氏を任命した。トルコ中銀の前総裁カブジュオール氏はトルコの銀行監督機関のトップに就任している。
これら人事がエルドアン大統領が推し進めてきた非伝統的な金融・経済政策からの正常化へ向けた変化を示すものと市場は期待感を持っているものの、新中銀総裁の政策姿勢と手腕は不明で未知数であり、気に入らないトルコ中銀総裁を繰り返し解任してきたエルドアン大統領の姿勢が変わるとは安易に結論づけられないため、市場は政策転換を催促するようにリラ安を続けている。

2021年12月の暴落時にはリラ建て預金の為替差損を財務省が補填する保護預金制度を導入したことで暴落に歯止めをかけたが、基調転換にはその位のサプライズ政策が必要であり、新閣僚や新総裁による政策転換とエルドアン大統領がそれを容認することが必要だろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日午前安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとし、6月6日午前序盤へ一段安したために6日午前時点では6月3日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日午前から9日午前にかけての間への下落を想定した。
6月9日夜に一時的に6円を超えてから失速しており、12日午前序盤には9日午前安値を割り込んでいるので既に新たな弱気サイクル入り下とみて14日午前から16日午前にかけての間への下落を想定する。強気転換には6円台回復へ反騰する必要があると考える。

60分足の一目均衡表では遅行スパンが6月12日午前序盤の下落で悪化し、先行スパンの下限に上値を抑えられて失速しているので、6月9日夜高値を超えないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は9日夜高値超えからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、大きな情勢変化が無ければその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は6月7日夜から9日午前への下落時に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて50ポイント台到達まで戻したものの、12日午前序盤には30ポイント台へ失速しているので下落基調の継続とみる。40ポイント台では戻り売り有利とし、20ポイント以下を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.85円を下値支持線、6.00円を上値抵抗線とする。
(2)5.88円から6.00円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。6.00円超えからは6.03円前後への上昇を想定するが、戻り一巡後の反落警戒とする。
(3)5.85円割れからは5.80円前後への下落を想定する。5.82円以下は反騰注意とするが、5.90円以下での推移なら13日も安値試しを続けやすく、下げ足が速まる場合は5.70円台中盤(5.77円から5.73円)へ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

6月12日
 16:00 4月 失業率  (3月 10.0%)
 16:00 4月 経常収支 (3月 -44.84億ドル、予想 -45億ドル)
6月13日
 16:00 4月 小売売上高 前月比   (3月 7.3%)
 16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 28.6%)
6月15日
 17:00 5月 財政収支  (4月 -1324.7億リラ)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 グロス (6/2時点 582.4億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 ネット (6/2時点 -57.0億ドル)
6月19日
 16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 91.1)
  
6月22日 トルコ中銀金融政策決定会合 

注:ポイント要約は編集部

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