ドル円、祝日の薄い市場をついて一時160.17まで急伸
週明け本邦祝日29日午前の東京市場で、ドル円は急上昇。一時160.17の高値をつけ、1990年4月の高値160.20に肉薄しました。(一部のFX業者では160.21等160.20を上回る約定を記録しているものもあり、その場合は86年12月以来37年5か月ぶりのドル高となります)
朝方157.88レベルで取引の始まったドル円は、早朝は158円を挟んでの一進一退となりました。7時台以降は158円台が定着、158.40までの水準でもみ合いました。しかし10時半過ぎに週末の米市場高値158.44を抜けると、一気にドル買いが加速。瞬間値で高値160.17をつけましたが160円台は滞空時間が短く、その後は159円台前半にレンジを移してのもみ合いとなり、東京時間正午現在は159.40レベルで取引されています。
今回の円安の背景は、週末に発表されたFRBが最も重視する経済指標の一つ、PCEコアデフレータの3月分が市場予想を上回る等、米国のインフレが年初の予想より執拗であることから年内の米国の利下げに不透明感が漂い始めていることが大きいと考えられます。一方で金曜日の日銀政策決定会合で何ら引き締め的な動きは見られず、日米金利差の縮小観測が後退しているというファンダメンタル的な「期待」の移動が根底にあります。
ただ、ごく短期的には、金曜の日銀政策決定会合後の植田日銀総裁の、あまりにも円安に無関心な態度がトリガーになっている部分は否定できません。確かに植田総裁は、「円安は短期的な輸入物価の上昇等には間違いなく影響を及ぼすが、基調的な物価目標への道筋への影響は定かではなく、今のところ大きな影響は見られない」という趣旨の正論を繰り返し述べたにすぎません。
ただ、最近「円安が物価に影響を及ぼすのであれば、金融政策を動かす理由になりうる」との趣旨の発言もされていたことから、市場には円安に対する抑制的な動きや言動を期待する向きがあったことは明らかで、そのような受け答えが失望感からの急激な円安をもたらすことは、聡明な総裁には十分理解できていたと思われます。同じ内容でも、もう少し言いようがあったはずで、自身が急激な円安を招くような言動をとったことはやはり不可解といわざるをえません。
当日の突き放した受け答えは、もしかすると、多少の円安では米国の了解が取れない事情か何かがあって、財務省が行動しやすいように、連携してわざとあのような態度をとったのかとさえ、勘繰りたくなるほどでした。しかし、本日の160円超えの水準で、財務省からの介入と思しき動きは認められず。せっかくの日銀総裁の配慮(?)のこの「急激な為替の変動」と絶対水準を放置する財務省の方針が第二の疑問です。
加えて懸念されるのが、今回の値動き。普通、市場に大量のドル買い円売りポジションが積みあがっていることが分かっていて、ドル円が節目のこの水準に接近した場合、通常の人間の心理としては、市場の薄い本邦祝日は介入とそれに伴う相場急落を警戒するはずです。それにもかかわらず、ここでドル買いを仕掛ける値動きには人間らしさが感じられません。今朝の160円台到達のトリガーとなったのが、先週末のNY高値158.44のヒットだったことからも、午前の値動きの背景には、システムトレードとかAIとか何らかの非人間的な要素があったのではないかと想像されます。だとすれば、ここから先も、放置すればするほど円安加速の可能性は高まるということでもあり、その意味でも、午後の政府・日銀の対応の有無が注視されます。
ドル円5分足
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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