160円をターゲットに介入を試す展開
〇先週のドル円、日銀会合予想通り、さらに円安への懸念示されず158円台半ばに水準切り上げ引ける
〇1990年高値上抜けると180円前後までターゲット無く、輸入物価上昇も含め悪い円安への警戒感強まる
〇介入をしなければ、止まらない円安へと突き進んでしまうリスクは相当に高い
〇イエレン財務長官「介入は稀な出来事」 米国は介入せず、日米韓財務相会合より消極的スタンス表明か
〇12月安値起点に2月高値までの上げ、3月安値までの押しとして短期テクニカルも160円が大きな節目
〇今週は155.00レベルをサポート、160.50レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通し
先週のドル円は週初の154円台半ばから始まり週前半は155円にあるオプションと週末の日銀会合を控えて様子見の参加者が多い状況でした。しかしノックアウト系のオプションというのは磁石のように吸い寄せられるというか、最終的にはその水準を抜けることが多く、152円の時と同様に今回も上抜けることとなりました。
週後半は日銀会合と介入警戒感もある中で、買い遅れている向きのドル買いに支えられてじり高、日銀会合は予想通りではあったものの、円安に対する懸念も示されなかったことで、158円台半ばまで水準を切り上げて引けることとなりました。
こうなると、1990年につけた高値160.16レベルがテクニカルなターゲットとなってきますが、果たして介入はそれまで出ないのかという点が現在の注目点になります。150円台に乗せてきた段階では当局からの牽制発言ももう少し強かったと思いますが、4月17日の日米韓財務相会合で通貨安に対して緊密に協議という声明が出たにも関わらず静かな状況が続いてきました。
先週のイエレン財務長官のインタビューでは円安について、介入は稀な出来事で事前協議を期待と述べました。これは米国は介入をすることは無いということであると同時に、前週の3か国による会合時に比べて消極的なスタンスとも取れます。ただ、150円、155円では否定的であったとしても日本側から160円は避けたいという強い希望が示されれば、反対することも無いだろうというところでしょうか。
長期の円相場を四半期足チャートでご覧ください。
さすがに1990年高値(赤の水平線)を上抜けるとその上のターゲット(変動相場制移行時の高値と1982年高値から2011年安値に向けての下げとその戻し)は180円前後まで無く、貿易赤字国の日本としては輸入物価の上昇も含めて悪い円安への警戒感が強まることとなります。介入があっても最終的には160円をトライする流れに向かう可能性は高いのですが、逆に介入をしなければ止まらない円安へと突き進んでしまうリスクは相当に高いと言えます。
GW中も大手銀行の為替ディーラーは出勤要請が出ていると思いますし、さすがに1回目の介入は160円前後の水準で出ると見て良いのではないかと考えています。
短期のテクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
昨年12月安値を起点に2月高値までの上げ、3月安値までの押しを3点として、現在の上げをフィボナッチ・エクスパンションで求めると、既に100%エクスパンションを超え、次のターゲットは127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションですが、ぴったり160.00となっていることがわかります。短期テクニカルでも160円が大きな節目となっていることが確認できます。
今週はGWで参加者が少ないことや介入を試す動きから上値は160円、下値はそれまでのレジスタンスとなっていた155円と見ることが妥当です。今週は155.00レベルをサポートに、160.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきますが、160円レベルでは介入必至と考えています。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
4月29日(月)
**:** 東京市場休場
16:30 スペイン中銀総裁講演 ☆
18:00 ユーロ圏4月消費者信頼感
20:15 レーンECB理事講演 ☆
21:00 ドイツ4月CPI速報値 ☆
28:20 デギンドスECB副総裁講演 ☆
4月30日(火)
08:30 本邦3月失業率・有効求人倍率
10:30 中国4月製造業PMI
10:30 豪州3月小売売上高
10:45 中国4月MarkIt製造業PMI
14:30 フランス1〜3月期GDP速報値 ☆
15:00 ドイツ3月小売売上高
15:45 フランス4月CPI速報値 ☆、3月PPI
16:55 ドイツ4月雇用統計
17:00 ドイツ1〜3月期GDP速報値 ☆
18:00 ユーロ圏4月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP速報値 ☆
19:00 本邦4月介入実績公表
21:30 米国1〜3月期雇用コスト
22:00 米国2月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
22:45 米国4月シカゴ購買部協会景気指数 ☆
**:** FOMC(〜1日)
5月1日(水)
**:** 香港、中国、シンガポール、欧州市場休場
17:30 英国4月製造業PMI
21:15 米国4月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 米国4月製造業PMI
23:00 米国3月JOLTS求人件数 ☆
23:00 米国4月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国3月建設支出
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果公表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆
5月2日(木)
**:** 中国市場休場
08:50 日銀3月会合議事要旨公表
10:30 豪州3月貿易収支、住宅建設許可
16:50 フランス4月製造業PMI
16:55 ドイツ4月製造業PMI
17:00 ユーロ圏4月製造業PMI
20:30 米国4月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国1〜3月期単位労働コスト速報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国3月貿易収支
5月3日(金)
**:** 東京、中国市場休場
15:45 フランス3月鉱工業生産
17:30 英国4月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏3月失業率
21:30 米国4月雇用統計 ☆
22:45 米国4月サービス業PMI
23:00 米国4月ISM非製造業景況指数
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
4月22日(月)
週明けのドル円は終日じり高、一日の値幅は41銭と静かだったものの年初来高値をわずかに更新し154.85レベルの高値をつけ、そのまま高値引けとなりました。
4月23日(火)
ドル円は高値圏で膠着、高値をわずかに切り上げたものの終日レンジはわずか32銭に留まりました。155円手前には152円の時と同様にオプション絡みの防戦売りと介入が出れば下がるという期待売りとが並ぶいっぽうで、引き続き押し目では根強い買いが出てくることから双方の綱引きが続きました。
4月24日(水)
ドル円は介入警戒感はあるもののも米国の高いインフレ率に対しての遠慮でもあるのか、介入が出ないのではないかという見方も増え東京前場からじり高の展開。NY市場では155円にあったオプションをこなしたことで、その後も円安地合いを継続しました。
4月25日(木)
ドル円は東京前場に実需のドル買いが出た様子でやや水準を切り上げ前日高値を更新、その後もじり高の展開となっていましたがNY朝方に発表されたGDPが予想よりも弱く下押し。しかしコアPCEは予想よりも強かったことで155.75レベルの高値をつけました。その後は日銀会合を控えて高値圏でのもみあいとなりました。
4月26日(金)
東京前場は動かず、日銀会合において現状維持となったことによる円売り安心感から156円台乗せ。植田総裁会見でも円安に対する警戒感が示されなかったことで156円台後半となったところで介入を装った大口のドル売りから一時155円割れを見ました。その後はすぐに買い戻され、NY市場では強めの経済指標に反応し、158.44レベルまで上伸し高値圏での引けとなりました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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