トルコリラ円見通し 7日の暴落からさらに続落、史上最安値更新止まらず
〇トルコリラ円、6/8はリラ安と円高の両面から押され5.87まで史上最安値を切り下げる
〇当面、リラ暴落が落ち着くのを見極めるまでは安値試しが続きやすい局面か
〇対ドル、6/8は概ね23.41から22.98の取引レンジ、取引時間中の史上最安値を更新
〇純外貨準備高のマイナス勘定が拡大、市場介入への軍資金が枯渇している状況
〇6.03超えからは6.06前後への上昇を想定するが、その後の反落警戒とする
〇5.85割れからは5.80、5.70台前半を順次試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の6月8日は概ね6.03円から5.87円の取引レンジ、9日早朝の終値は6.01円で前日終値の6.03円から0.02円の円高リラ安だった。
6月7日には高値6.47円から安値5.96円へと史上最安値を更新して1日の下落率は8%に迫ったが、8日はドル/トルコリラでの最安値更新が続く中でドル円が米新規失業保険申請件数の悪化と米長期債利回り低下を見て8日未明の140円台序盤から139円割れへ下落したため、リラ安と円高の両面から押されて5.87円まで史上最安値を切り下げた。
ベンダーによってレート提示に開きがあるが9日早朝には5.74円の安値提示も見られる。
ドル/トルコリラも9日午前序盤には史上最安値をさらに更新しており、当面はリラ暴落が落ち着くのを見極めるまでは安値試しが続きやすい局面と思われる。
来週は米CPI、FOMC、ECB理事会、週末の日銀金融政策決定会合と重要イベントが続くが、米国のインフレ鈍化傾向が顕著になればFOMCでの利上げ停止から7月以降の追加利上げが見送られる可能性が高まって円高傾向が強まる可能性もあり、トルコリラ円としては円高とリラ安による弱気のスパイラルに陥る可能性もあるところと注意する。
【対ドルでは7日の暴落からさらに最安値を更新】
ドル/トルコリラの6月8日は概ね23.41リラから22.98リラの取引レンジ、9日早朝の終値は23.12リラで前日終値の23.25リラからは0.13リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選によるリラの先安感から連日の史上最安値更新となり、6月7日は23.31リラへ史上最安値を更新し、当日高値から安値まで凡そ8%の暴落商状に見舞われた。8日は終値ベースでは7日終値23.25リラで史上最安値を更新していたところから若干のドル安リラ高となったものの、取引時間中の史上最安値を23.41リラへ更新した。ベンダーによっては6月8日安値で23.64リラの安値提示もあり、6月7日終値を23.30リラとして8日終値を23.50リラとして終値ベースでの最安値更新としているところもある。
6月9日午前序盤は23.43リラから23.58リラの水準で推移しており、リラ安に歯止めはかかっていない。
【純外貨準備高のマイナス勘定が拡大】
6月8日夜に発表されたトルコ中銀による週次の外貨準備高統計において、6月2日時点のグロス(ゴールドを除く総外貨準備高)は582.4億ドルとなり5月26日時点の565.2億ドルから増加したが、ネット(短期負債を除く純外貨準備高)ではマイナス57億ドルとなり5月26日時点のマイナス40.05億ドルからさらにマイナス勘定が拡大した。
トルコ中銀は外貨準備高を取り崩して非公式な市場介入を繰り返してきたが、リラ安に歯止めがかからない中で純外貨準備高を取り崩しきってしまい市場介入への軍資金が枯渇している状況にある。借入を拡大して市場介入を続ける可能性もあるが、大統領選挙終了後の市場介入が見送られてリラ安が放置状態との指摘もある。純外貨準備高のマイナス勘定は2002年以来であり現状は公式統計における過去最低水準となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日午前安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとし、6月6日午前序盤へ一段安したために6日午前時点では6月3日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日午前から9日午前にかけての間への下落を想定した。
6月9日未明へ続落したが、6円超えへ一時戻してから失速しているため、9日未明安値を直近のサイクルボトムとして既に新たな弱気サイクル入りしている可能性がある。
6月9日早朝高値6.03円を超えないうちは新たな弱気サイクル入りと仮定して14日未明から16日未明にかけての間への下落を想定する。9日早朝高値超えからは直前安値をボトムとした強気サイクル入りとして9日の日中から12日午前にかけての間への上昇を想定するが、リラの反騰材料に欠けている場合は戻り一巡後に新たな下落期へ向かうとみる。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状況が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンからの転落が解消されないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。反騰入りには連騰による上昇で先行スパンに潜り込んでその上限へ進むような上昇が必要と思われる。
60分足の相対力指数は6月9日早朝への反発時に50ポイントをいったん超えてから30ポイントまで反落しているのですでに戻り一巡により新たな下落期に入っていると思われる。40ポイント台では戻り売り有利とし、30ポイント割れからは下落継続として10ポイント前後を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.85円を下値支持線、6.03円を上値抵抗線とする。
(2)5.95円から6.00円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。6.03円超えからは6.06円前後への上昇を想定するが、その後の反落警戒とする。
(3)5.85円割れからは5.80円、5.70円台前半を順次試す下落を想定する。5.70円以下は反騰注意とするが、5.90円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月09日
16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 5.5%)
16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.1%、予想 1.2%)
6月12日
16:00 4月 失業率 (3月 10.0%)
16:00 4月 経常収支 (3月 -44.84億ドル、予想 -45億ドル)
6月13日
16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 7.3%)
16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 28.6%)
6月15日
17:00 5月 財政収支 (4月 -1324.7億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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